年次有給休暇(有給休暇)は、労働基準法第39条が定める労働者の権利です。使用者(会社)の裁量で与えるものではなく、要件を満たした労働者は法律上当然に権利を取得します。平成30年(2018年)「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(、通称「働き方改革関連法」)により、平成31年(2019年)4月1日から年5日の取得義務(労基法第39条第7項)が新設されました。この記事では、有給休暇の付与要件・付与日数・取得のルール・時季変更権の範囲を条文とともに解説します。
カテゴリ:労働・雇用 / 種別:要件系
関連条文:(本法)労働基準法第12条・第39条第1項~第10項・第115条・第119条第1号・第120条第1号・第136条/(本法)労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第24条の3・第24条の5・第24条の7
こんな方へ
- 有給休暇をいつから・何日取得できるか確認したい
- パートタイム・アルバイトにも有給休暇があるか確認したい
- 会社に有給休暇の取得を拒否された場合の対処を知りたい
- 時季変更権(会社が取得日を変更できる場合)の範囲を確認したい
- 有給休暇の取得を理由とした不利益取扱いが禁止されることを確認したい
- 時間単位有給休暇・計画的付与の仕組みを確認したい
- 第39条第10項と第136条の関係を整理したい
この記事でわかること
- 有給休暇の付与要件(労基法第39条第1項:6か月継続勤務・出勤率80%以上)
- フルタイム・パートタイム別の付与日数(労基法第39条第2項・第3項)
- 時間単位有給休暇(労基法第39条第4項)
- 労働者の時季指定権と使用者の時季変更権(労基法第39条第5項)
- 計画的付与(労基法第39条第6項:労使協定)
- 5日取得義務(平成30年(2018年)改正・労基法第39条第7項~第8項)
- 有給休暇中の賃金の計算方法(労基法第39条第9項)
- 不利益取扱いの禁止(労基法第39条第10項・第136条の関係)
- 時効(労基法第115条:2年)の条文上の根拠
- 主要判例(補足):時季変更権の判断枠組み(最判昭和48年(1973年)3月2日 林野庁白石営林署事件)/取得理由説明不要(最判昭和57年(1982年)3月18日 此花電報電話局事件)/長期休暇の特殊性(最判昭和62年(1987年)7月10日 弘前電報電話局事件)/不利益取扱いの判断枠組み(最判平成5年(1993年)6月25日 沼津交通事件)
結論:有給休暇は「6ヶ月継続勤務+出勤率80%以上」で当然に発生する権利
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第1項(年次有給休暇)
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 付与要件 | 雇入れから6ヶ月継続勤務+全労働日の80%以上出勤(労基法第39条第1項) |
| 初回付与日数 | フルタイム(週5日以上または年217日以上):10日 |
| 権利の性質 | 使用者の裁量によるものではなく、要件を満たせば法律上当然に発生 |
| 時季指定権 | 労働者が取得日を指定する権利(労基法第39条第5項本文) |
| 時季変更権 | 使用者が「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り取得日の変更を求める権利(労基法第39条第5項ただし書) |
| 時効 | 2年(労基法第115条) |
重要: 有給休暇の取得は労働者の権利であり、使用者の許可を得る必要はありません(ただし、時季の指定は行う必要があります)。「有給休暇を取らせてもらえない」という状況は、労働基準法違反と評価される可能性があります。
今すぐやること
- 自分の勤続期間・出勤率を確認し、付与日数を算定する
- 取得を希望する日を使用者に申し出る(「申請」ではなく「指定」)
- 取得を拒否された場合は、時季変更権の要件を満たすか確認する
- 拒否が違法と思われる場合は、必要に応じて労働基準監督署への相談も検討する
判断フロー①:有給休暇の付与日数はいくつか
自分の有給休暇の付与日数はいくつか?
フルタイム労働者(週所定労働日数5日以上または年217日以上)
- 継続勤務6ヶ月10日
- 継続勤務1年6ヶ月11日
- 継続勤務2年6ヶ月12日
- 継続勤務3年6ヶ月14日
- 継続勤務4年6ヶ月16日
- 継続勤務5年6ヶ月18日
- 継続勤務6年6ヶ月以上20日(上限)
短時間労働者(週所定労働日数4日以下かつ年216日以下)(労基法第39条第3項)
- 週4日(年169〜216日):継続6ヶ月→7日(以後段階的に増加)
- 週3日(年121〜168日):継続6ヶ月→5日
- 週2日(年73〜120日):継続6ヶ月→3日
- 週1日(年48〜72日):継続6ヶ月→1日
NOTE: 付与日数は所定労働日数・継続勤務年数によって決まります。出勤率(全労働日の80%以上)を満たすことが要件となります。
判断フロー②:使用者は有給休暇の取得を拒否できるか
使用者は労働者の有給休暇取得を拒否できるか?
拒否できない(原則)(労基法第39条第5項本文)
- 労働者が取得日を指定した原則として拒否できず、時季変更権の要件を満たす場合に限り変更が認められる
- 取得理由の説明を求められた労働者は理由を告げる義務はない(労基法第39条第5項本文)
時季変更権の行使ができる場合(例外)(労基法第39条第5項ただし書)
- その日に休まれると事業の正常な運営が妨げられる時季変更権を行使して別の日への変更を求めることができる(労基法第39条第5項ただし書)
- 「忙しい時期だから」という一般的な理由のみで時季変更権を行使する認められにくい
NOTE: 時季変更権の行使が認められるかどうかは、「事業の正常な運営を妨げるかどうか」という要件を個別具体的な事情に基づいて判断されます。判例の判断枠組みは「⑤ 使用者の時季変更権」セクションを参照してください。
① 付与要件(労基法第39条第1項)
→ 有給休暇は、(1)雇入れから6ヶ月継続して勤務し、(2)全労働日の80%以上出勤した労働者に当然に発生します。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第1項(条文:上記参照)
継続勤務の意味
「継続勤務」とは、雇用関係が継続していることをいいます。途中で一時的に休職していた場合でも、雇用関係が継続している限り継続勤務の期間に含まれるとされています。また、定年後の再雇用や会社の合併・事業譲渡の場合も、実態として雇用が継続していれば継続勤務として扱われる場合があります。
出勤率の計算
出勤率 = 実際の出勤日数 ÷ 全労働日数 × 100用語の整理:
- 全労働日:労働義務がある日(休日・休暇等を除いた日)
- 所定労働日:事業場で定められた労働日(就業規則・労使協定等で規定)
全労働日から除外されるもの(分母から除外):
- 使用者の責に帰すべき休業日
- 正当な争議行為による休業日
出勤したものとみなされる日(分子に加算):
- 業務上の負傷・疾病による療養のための休業日
- 育児休業・介護休業取得期間
- 産前産後休業取得期間
- 年次有給休暇取得日
② 付与日数(労基法第39条第2項・第3項)
→ 付与日数は、継続勤務年数と週所定労働日数によって決まります。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第2項(継続勤務年数による加算) 根拠条文:(本法)労働基準法第39条第3項(比例付与)
フルタイム労働者の付与日数
週所定労働日数5日以上または年間所定労働日数217日以上の労働者:
| 継続勤務年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6ヶ月 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 |
| 6年6ヶ月以上 | 20日 |
短時間労働者(比例付与・労基法第39条第3項)
週所定労働日数4日以下かつ年間所定労働日数216日以下の労働者には、所定労働日数に比例した日数が付与されます(具体的な日数は労基法施行規則第24条の3)。
週4日勤務の場合の例:
| 継続勤務年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6ヶ月 | 7日 |
| 1年6ヶ月 | 8日 |
| 2年6ヶ月 | 9日 |
| 3年6ヶ月 | 10日 |
| 4年6ヶ月 | 12日 |
| 5年6ヶ月 | 13日 |
| 6年6ヶ月以上 | 15日 |
重要: パートタイム・アルバイト・派遣労働者であっても、要件を満たせば有給休暇は発生します。「アルバイトには有給がない」という説明は誤りです。
特殊な勤務形態(労基法施行規則第24条の5)
労基法施行規則第24条の5は、1年単位の変形労働時間制・1週間単位の非定型的変形労働時間制等の特殊な勤務形態の労働者の年次有給休暇の付与日数の算定基準を定めています。これらの勤務形態では、所定労働日数の判定が複雑になるため、施行規則第24条の5を確認する必要があります。
③ 時間単位有給休暇(労基法第39条第4項)
→ 労使協定の締結により、年5日を限度として時間単位で有給休暇を取得できます。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第4項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一項から第三項までの規定による有給休暇の日数のうち第一号に掲げる日数については、第五項及び第六項の規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上限 | 年5日まで(労使協定に基づく) |
| 必要な労使協定事項 | (1)対象労働者の範囲、(2)時間単位で与える日数、(3)1日分に相当する時間数、(4)その他厚生労働省令で定める事項 |
| 用途例 | 通院・子供の学校行事・官公署への諸届等、必要な時間分のみ取得 |
④ 労働者の時季指定権(労基法第39条第5項本文)
→ 有給休暇の取得日は、労働者が指定します。使用者の許可は不要です。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
労働者は、取得したい日を使用者に告げれば足ります。法律上は「指定」により足り、使用者の承認は法律上不要です。実務上は申請形式が採られていることが多いですが、法律上の承認は不要です。取得理由を告げる義務もありません(労基法第39条第5項本文)。
実務と法律の乖離: 多くの職場では「有給休暇の申請書」を提出し、上司の承認印が必要とされています。しかし法律上は承認を要せず、指定のみで足ります。「申請を承認しない」という対応は、時季変更権の要件を満たさない限り、法律上は認められないとされています。
NOTE: 取得理由の説明義務がない点については、最判昭和57年(1982年)3月18日 此花電報電話局事件で示されている。
⑤ 使用者の時季変更権(労基法第39条第5項ただし書)
→ 使用者は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、取得日を変更するよう求めることができます。取得そのものを拒否することはできません。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第5項ただし書(条文:上記参照)
時季変更権の判断枠組み
「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、労働者が休むことで業務が実際に著しく支障をきたす場合をいいます。判断にあたっては、当該労働者の所属する事業場の規模・内容、担当作業の内容・性質・繁閑、代行者配置の難易、繁忙期等の諸般の事情を総合考慮します。
時季変更権の要件
「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、労働者が休むことで業務が実際に著しく支障をきたす場合をいいます。判例上、以下の要素が考慮されます:
- その日の業務の性質・内容
- 代替要員の確保が困難かどうか
- 他の労働者の休暇取得状況
時季変更権として認められにくいとされるケース:
- 「繁忙期だから」という一般的な理由
- 「いつも忙しいから」という慢性的な多忙
- 取得理由が気に入らないという理由
注意: 時季変更権は「別の日に取得してほしい」という変更の権限です。取得そのものをなくすことはできません。
NOTE: 時季変更権の判断枠組みは、最判昭和48年(1973年)3月2日 林野庁白石営林署事件で示されている。判旨は次のとおり:「『事業の正常な運営を妨げる場合』とは、当該労働者の所属する事業場の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、繁閑、代行者の配置の難易、繁忙期等労働者の請求する時季に休暇を与える場合に与える諸般の事情を総合的に判断する」。
長期連続休暇の特殊性
長期連続の有給休暇(労働者が約1か月の連続休暇を時季指定した事案)の時季指定について、判例は使用者の時季変更権の行使に「ある程度の裁量的判断」を認めています。長期連続休暇の場合、業務との調整について事業運営に与える影響を予測することが困難であるためです。
→ 通常の1日〜数日の有給休暇取得とは異なり、長期連続休暇では時季変更権の行使が認められやすい傾向があります。
NOTE: 長期連続休暇の特殊性は、最判昭和62年(1987年)7月10日 弘前電報電話局事件で示されている。
⑥ 計画的付与(労基法第39条第6項)
→ 労使協定により、5日を超える部分の有給休暇について、計画的に取得時季を指定できます。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第6項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
計画的付与の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象範囲 | 付与日数のうち5日を超える部分のみ(5日は労働者の自由取得分として留保) |
| 例 | 付与日数10日の労働者→5日まで計画的付与可能。20日の労働者→15日まで可能 |
| 必要な手続 | 労使協定(書面による) |
| 主な方法 | (1)事業場全体の一斉付与、(2)班別の交替制付与、(3)個人別の年休計画表 |
→ 計画的付与の労使協定が締結された場合、その日数については労働者の時季指定権・使用者の時季変更権はいずれも行使できなくなる(昭63.3.14基発150号)。
⑦ 5日取得義務(労基法第39条第7項~第8項・平成30年(2018年)改正)
→ 平成31年(2019年)4月1日から、年10日以上の有給休暇が付与される労働者について、使用者は年5日の取得を義務付けられました。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第7項(使用者による時季指定義務) 根拠条文:(本法)労働基準法第39条第8項(時季指定義務の控除規定)
5日取得義務の根拠改正
平成30年(2018年)「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(、通称「働き方改革関連法」)により、労働基準法第39条第7項・第8項が新設され、平成31年(2019年)4月1日から施行された。
5日取得義務の内容
- 対象:年10日以上の有給休暇が付与される労働者(管理監督者も含む)
- 義務の内容:使用者は、有給休暇の日数のうち5日について、基準日から1年以内に取得させなければならない
- 方法:使用者が時季を指定して取得させる(労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努める)
控除規定(労基法第39条第8項)
労働者が自ら請求・取得した年次有給休暇の日数や、第6項の労使協定による計画的付与で与えた日数は、5日から控除可能。
→ 例:労働者が自ら4日取得していれば、使用者の時季指定義務は1日分のみ。
違反した場合の罰則
5日取得させなかった使用者には、労働基準法第120条第1号により30万円以下の罰金が科される可能性があります。罰則は労働者一人ごとに適用されます。
労基法の罰則体系の補足: 労基法の罰則は、第117条〜第121条までに段階的に規定されています。第119条以下の罰則には、令和7年(2025年)6月1日施行の改正刑法による「懲役・禁錮」→「拘禁刑」一本化が反映され、現行は「○年以下の拘禁刑」と表記されます(第120条第1号は罰金のみのため拘禁刑表記の影響なし)。
年次有給休暇管理簿の作成・保存義務(労基法施行規則第24条の7、平成30年(2018年)改正・平成31年(2019年)4月1日施行で導入)
使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、5年間(当面の間3年間)保存する義務があります。
⑧ 有給休暇中の賃金(労基法第39条第9項)
→ 有給休暇中の賃金は、労使協定または就業規則の定めにより、3類型のいずれかから決定されます。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第9項
| 類型 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| (1)所定労働時間労働した場合の通常の賃金 | 通常の出勤と同様の賃金(最も多い運用) | 第39条第9項本文 |
| (2)平均賃金 | 労基法第12条による平均賃金 | (本法)労働基準法第12条 |
| (3)健康保険法の標準報酬月額の30分の1 | 労使協定で定めた場合のみ | 第39条第9項ただし書 |
→ どの類型を採用するかは、就業規則等で定めることが必要。
平均賃金(労基法第12条)
労基法第12条:平均賃金とは、直前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額(暦日計算)。なお、対象賃金から除外される項目(賞与・臨時の賃金等)も第12条で規定されています。
⑨ 不利益取扱いの禁止(労基法第39条第10項・第136条)
→ 有給休暇を取得したことを理由とした不利益な取扱いは禁止されています。労基法は第39条第10項と第136条の2つの条文で不利益取扱いを規制しています。
根拠条文:(本法)労働基準法第39条第10項
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
根拠条文:(本法)労働基準法第136条
使用者は、第三十九条第一項から第三項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
第39条第10項と第136条の関係
労基法は、有給休暇取得を理由とする不利益取扱いを第39条第10項(平成20年(2008年)改正で新設)と第136条(昭和62年(1987年)改正で新設)の2つの条文で禁止しています:
| 条文 | 新設時期 | 性質 |
|---|---|---|
| 第136条 | 昭和62年(1987年)改正 | 罰則の伴わない努力義務的規定(行政指導の根拠) |
| 第39条第10項 | 平成20年(2008年)改正 | 第136条と同内容を第39条の権利規定の一部として明示 |
→ 両条文は実質的に同内容ですが、第39条第10項は第39条の中で権利保障を補強する位置付け、第136条は労基法全体の総則的規定としての位置付けです。
不利益取扱いの判断枠組み
判例上、有給休暇取得日を皆勤手当の算定上欠勤として扱う取扱いは、労働者の有給休暇取得を抑制するものとして、有給休暇の権利保障の趣旨を実質的に失わせる場合は無効と解されています。
NOTE: 不利益取扱いの判断枠組みは、最判平成5年(1993年)6月25日 沼津交通事件で示されている。
禁止される行為の例
- 有給休暇を取ると査定に響く
- 多く取るとボーナスが減る
- 皆勤手当の算定上、有給取得日を欠勤として扱う
→ 上記のような運用は、不利益取扱いに該当する可能性があります。
⑩ 時効(労基法第115条)
→ 年次有給休暇の請求権は2年で時効消滅します。
根拠条文:(本法)労働基準法第115条
この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から五年間…時効によって消滅する。この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
「2年」の条文上の根拠
労基法第115条本文は2つの請求権を区別しています:
| 請求権の種類 | 時効期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 賃金の請求権(退職手当を除く) | 5年間(改正前は2年・令和2年改正で5年に延長) | 第115条前段 |
| 災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く) | 2年間(変更なし) | 第115条後段 |
→ 年次有給休暇の請求権は、賃金請求権ではなく「その他の請求権」に該当するため、時効2年は条文上の根拠に基づきます(行政解釈ではなく条文解釈)。
→ 付与された日から2年以内に取得しなかった年次有給休暇は、時効により消滅します。
このテーマで使う条文一覧
| 条文 | 法令 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|---|
| (本法)第12条 | 労働基準法 | 周辺 | 平均賃金の定義(第39条第9項類型(2)の根拠) |
| (本法)第39条第1項 | 労働基準法 | 中核 | 付与要件(6ヶ月継続勤務・出勤率80%以上)・初回10日 |
| (本法)第39条第2項 | 労働基準法 | 中核 | 継続勤務年数による付与日数の加算 |
| (本法)第39条第3項 | 労働基準法 | 中核 | 比例付与(短時間労働者) |
| (本法)第39条第4項 | 労働基準法 | 中核 | 時間単位有給休暇(労使協定・年5日まで) |
| (本法)第39条第5項 | 労働基準法 | 中核 | 時季指定権(本文)・時季変更権(ただし書) |
| (本法)第39条第6項 | 労働基準法 | 中核 | 労使協定に基づく計画的付与(5日を超える部分) |
| (本法)第39条第7項 | 労働基準法 | 中核 | 5日取得義務(使用者による時季指定・平成30年(2018年)改正) |
| (本法)第39条第8項 | 労働基準法 | 中核 | 時季指定義務の控除規定(労働者の自由取得分・計画的付与分を控除) |
| (本法)第39条第9項 | 労働基準法 | 中核 | 有給休暇中の賃金(3類型) |
| (本法)第39条第10項 | 労働基準法 | 中核 | 不利益取扱いの禁止(平成20年(2008年)改正で新設) |
| (本法)第115条 | 労働基準法 | 中核 | 時効(年次有給休暇は2年・賃金請求権5年とは別) |
| (本法)第120条第1号 | 労働基準法 | 周辺 | 罰則(5日取得義務違反等:30万円以下の罰金) |
| (本法)第136条 | 労働基準法 | 周辺 | 不利益取扱いの禁止(昭和62年(1987年)改正で新設・第39条第10項と並存) |
| (本法)第24条の3 | 労働基準法施行規則 | 周辺 | 比例付与の具体的日数 |
| (本法)第24条の5 | 労働基準法施行規則 | 周辺 | 特殊な勤務形態(変形労働時間制等)の付与日数 |
| (本法)第24条の7 | 労働基準法施行規則 | 周辺 | 年次有給休暇管理簿の作成・保存義務(平成31年(2019年)4月1日施行) |
まとめ
- 有給休暇は「6ヶ月継続勤務+出勤率80%以上」で当然に発生する権利(労基法第39条第1項)
- パートタイム・アルバイトにも要件を満たせば有給休暇は発生する(比例付与・労基法第39条第3項・施行規則第24条の3)
- 特殊な勤務形態(変形労働時間制等)の付与日数は労基法施行規則第24条の5を参照
- 時間単位有給休暇(労基法第39条第4項):労使協定により年5日まで時間単位で取得可能
- 取得日は労働者が指定(労基法第39条第5項本文)。使用者の許可・承認は法律上不要
- 取得理由を告げる義務はない(労基法第39条第5項本文。判例:最判昭和57年(1982年)3月18日 此花電報電話局事件)
- 使用者の時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られる(労基法第39条第5項ただし書。判断枠組み:最判昭和48年(1973年)3月2日 林野庁白石営林署事件)
- 長期連続休暇については時季変更権の行使に「ある程度の裁量的判断」が認められる(判例:最判昭和62年(1987年)7月10日 弘前電報電話局事件)
- 計画的付与(労基法第39条第6項):労使協定により、付与日数のうち5日を超える部分について計画的に取得時季を指定可能
- 5日取得義務(労基法第39条第7項、平成30年(2018年)改正・平成31年(2019年)4月1日施行):年10日以上付与される労働者に対し、使用者は年5日の取得義務(労働者の自由取得分・計画的付与分は控除可:労基法第39条第8項)
- 有給休暇中の賃金(労基法第39条第9項):通常賃金・平均賃金(労基法第12条)・健康保険標準報酬月額の30分の1のいずれか
- 不利益取扱いの禁止は労基法第39条第10項(平成20年(2008年)新設)と労基法第136条(昭和62年(1987年)新設)の2条文で並存(判断枠組み:最判平成5年(1993年)6月25日 沼津交通事件)
- 時効2年(労基法第115条後段「災害補償その他の請求権」):賃金請求権の5年(令和2年改正)とは別の規定
- 年次有給休暇管理簿の作成・保存義務(労基法施行規則第24条の7、平成31年(2019年)4月1日施行)
- 5日取得義務違反は30万円以下の罰金(労基法第120条第1号、労働者一人ごとに適用)
- 取得を違法に拒否された場合は労働基準監督署への相談も一つの選択肢
有給休暇の取得に関する具体的な問題については、労働基準監督署または社会保険労務士・弁護士への相談をおすすめします。