03-05 · 労働・雇用 · 条文解説系(横断型)

ハラスメントの法的定義|パワハラ・セクハラ・マタハラの要件と使用者の義務

ハラスメントは、パワーハラスメント(パワハラ)・セクシュアルハラスメント(セクハラ)・マタニティハラスメント(マタハラ)等の類型に分かれており、それぞれ根拠となる法律と要件が異なります。「嫌がらせ」という共通のイメージがありますが、法律上の定義・要件・使用者の義務はそれぞれ異なります。令和元年(2019年)6月5日公布の改正により、労働施策総合推進法第30条の2にパワハラ防止規定が新設され、大企業は令和2年(2020年)6月1日から、中小企業は令和4年(2022年)4月1日から防止措置が義務化されました(いわゆる「パワハラ防止法」)。この記事では、ハラスメント全類型に共通する「義務ベース」の構造として、3類型の法的定義・要件・使用者の措置義務を条文とともに横断的に解説します。

ハラスメントは、パワーハラスメント(パワハラ)・セクシュアルハラスメント(セクハラ)・マタニティハラスメント(マタハラ)等の類型に分かれており、それぞれ根拠となる法律と要件が異なります。「嫌がらせ」という共通のイメージがありますが、法律上の定義・要件・使用者の義務はそれぞれ異なります。令和元年(2019年)6月5日公布の改正により、労働施策総合推進法第30条の2にパワハラ防止規定が新設され、大企業は令和2年(2020年)6月1日から、中小企業は令和4年(2022年)4月1日から防止措置が義務化されました(いわゆる「パワハラ防止法」)。この記事では、ハラスメント全類型に共通する「義務ベース」の構造として、3類型の法的定義・要件・使用者の措置義務を条文とともに横断的に解説します。

カテゴリ:労働・雇用 / 種別:条文解説系(横断型)
関連条文:(本法)労働施策総合推進法第30条の2第1項・第2項・第3項・第30条の3・第33条/(本法)男女雇用機会均等法第9条第3項・第11条第1項・第2項・第11条の3第1項・第2項/(本法)育児・介護休業法第10条・第16条・第25条第1項・第2項/(本法)労働契約法第5条/(本法)民法第415条・第709条・第715条

こんな方へ

  • パワハラ・セクハラ・マタハラの法律上の定義を確認したい
  • 自分が受けている行為がハラスメントに当たるか判断したい
  • 使用者(会社)のハラスメント防止義務の内容を確認したい
  • ハラスメントを受けた場合の対処方法を知りたい
  • ハラスメントと業務上の指導・注意の境界線を整理したい
  • パワハラ防止指針(厚労省告示)の6類型を確認したい

この記事でわかること

  • ハラスメント全類型に共通する「義務ベース」の法的構造
  • パワハラ・セクハラ・マタハラそれぞれの法律上の定義と要件
  • パワハラ防止指針(令和2年(2020年)1月15日厚生労働省告示第5号)の6類型
  • 使用者(会社)が負う雇用管理上の措置義務労働施策総合推進法第30条の2第1項等)の主軸的位置づけ
  • 「業務上の指導」と「ハラスメント」の境界線(グレーゾーン)
  • 違反時の効果(行政指導・民事責任)と対処フロー

結論:ハラスメントは「使用者の措置義務」を主軸とする義務ベースの法体系。3類型はその下位区分

ハラスメント関連法は、すべての類型に共通する「使用者の措置義務」を主軸として構成されています。3類型(パワハラ・セクハラ・マタハラ等)は、措置義務の対象となる「言動の種類」に応じた下位区分として整理されます。

類型根拠法公布・施行使用者の義務
パワーハラスメント労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(、通称「労働施策総合推進法」または「パワハラ防止法」)第30条の2令和元年(2019年)6月5日公布。大企業:令和2年(2020年)6月1日施行/中小企業:令和4年(2022年)4月1日施行雇用管理上の措置義務(相談体制整備等:第30条の2第1項)
セクシュアルハラスメント雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(、通称「男女雇用機会均等法」または「均等法」)第11条第1項雇用管理上の措置義務
妊娠・出産・育休等ハラスメント均等法第11条の3第1項育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(、通称「育児・介護休業法」または「育介法」)第25条第1項雇用管理上の措置義務

重要: いずれの類型も、使用者(会社)には防止のための雇用管理上の措置を講じる義務があります。この義務は、ハラスメントが実際に発生したかどうかにかかわらず課される継続的な義務です。3類型の差異は「対象となる言動の性質」のみであり、措置義務の構造は共通します。

今すぐやること

  1. 受けている言動が3類型のどれに当たる可能性があるか整理する(パワハラ/セクハラ/マタハラ・育休等ハラ)
  2. 記録を残す(日時・場所・発言内容・目撃者・自分の感じた影響等を時系列で書面化)
  3. 会社の相談窓口・コンプライアンス窓口に相談する(措置義務の一環として設置されているはず)
  4. 社内相談で解決しない場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナー等の外部機関への相談も検討する

判断フロー①:その言動はハラスメント類型のいずれかに該当するか

その言動はパワハラ・セクハラ・マタハラ等のいずれかに該当するか?

パワハラ判定

  • 優越的な関係を背景とした言動か第1要件をチェック(労働施策総合推進法第30条の2第1項)
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えているか第2要件をチェック
  • 就業環境を害する言動か第3要件をチェック
  • 3要件すべてを満たすかパワハラに該当する可能性

セクハラ判定

  • 性的な言動への対応により労働条件上の不利益が生じたか対価型に該当する可能性(均等法第11条第1項)
  • 性的な言動により就業環境が害されているか環境型に該当する可能性

NOTE: いずれの類型も、「使用者には措置義務がある」点で構造は共通です(フロー②参照)。

判断フロー②:使用者の措置義務違反があるか

使用者は雇用管理上の措置義務を果たしているか?

措置義務の確認項目

  • 事業主の方針が明確化・周知されているか措置の第1項目(パワハラ防止指針)
  • 相談窓口が設置・周知されているか措置の第2項目
  • 事後の迅速・適切な対応がなされているか措置の第3項目
  • 相談者・行為者のプライバシーが保護されているか措置の第4項目
  • 相談を理由とする不利益取扱いが禁止されているか独立条項(労働施策総合推進法第30条の2第2項等)

措置義務違反の効果

  • 厚労大臣の助言・指導・勧告行政指導の対象(労働施策総合推進法第33条)
  • 勧告に従わない場合の公表行政公表の対象
  • 民事上の安全配慮義務違反損害賠償責任が発生する可能性(労働契約法第5条・民法第415条)

NOTE: 法令上の直接の罰則はありませんが、行政指導と民事責任の二重構造で実効性が確保されています。

① ハラスメントの基本構造と義務体系(横断整理)

ハラスメント関連法は、3類型を貫く「使用者の措置義務」を主軸とする統一構造で整理されています。

全類型に共通する3つの構造要素

構造要素内容該当条文(類型横断)
(1) 言動の定義各類型ごとに対象となる言動の要件労働施策総合推進法第30条の2第1項/均等法第11条第1項・第11条の3第1項/育介法第25条第1項
(2) 使用者の措置義務雇用管理上の措置を講じる義務同上(各条第1項)
(3) 相談を理由とする不利益取扱いの禁止相談・協力を理由とする解雇等の禁止労働施策総合推進法第30条の2第2項/均等法第11条第2項・第11条の3第2項/育介法第25条第2項

3要素は全類型で共通。3類型の差異は「(1) 対象となる言動」のみです。

「ハラスメント」と「不利益取扱い」の区別

ハラスメント規定(措置義務の対象)と不利益取扱い禁止規定(解雇等の禁止)は別条文として整理されています:

概念対象根拠条文
ハラスメント(措置義務の対象)就業環境を害する言動労働施策総合推進法第30条の2第1項/均等法第11条・第11条の3/育介法第25条
不利益取扱いの禁止解雇・降格・減給等の処分均等法第9条第3項(婚姻・妊娠・出産等)/育介法第10条(育児休業)・第16条(介護休業)

→ 不利益取扱いには至らないが就業環境を害する言動が「ハラスメント」、不利益処分自体は別条文で禁止という二重構造です。

② 類型別の定義と要件

ハラスメント3類型は、それぞれ要件が異なります。① で示した「義務ベース」構造の下、各類型の言動定義を整理します。

②-A. パワーハラスメント(労働施策総合推進法第30条の2第1項)

パワハラとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものをいいます。

根拠条文:(本法)労働施策総合推進法第30条の2第1項(雇用管理上の措置等)

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

#### 3要件の解説

① 優越的な関係を背景とした言動: 職務上の地位が上位であることによる言動だけでなく、人間関係・専門知識・経験等において優位に立っている場合も含まれます。上司から部下への行為だけでなく、同僚・部下から上司への行為も、状況によってはパワハラになり得るとされています(パワハラ防止指針)。

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動: 業務上の必要性がない、または必要性はあっても言動の態様が相当でない場合をいいます。業務上の指導・注意であっても、態様・頻度・言葉の内容によってはパワハラと評価される可能性があります。

③ 就業環境を害する言動: 当該言動により、労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じている状態をいいます。一般的な労働者が、能力の通常の発揮ができなくなるような状態が目安とされています。

#### パワハラ防止指針の6類型(限定列挙ではない)

労働施策総合推進法第30条の2第3項に基づき、厚生労働大臣は「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年(2020年)1月15日厚生労働省告示第5号、通称「パワハラ防止指針」)を策定。パワハラの定義の具体的内容、典型6類型、措置義務の具体的内容を定めています。

類型内容
1. 身体的な攻撃殴打・足蹴りを行うこと
2. 精神的な攻撃脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
3. 人間関係からの切り離し別室への隔離・長期間の自宅研修・職場での孤立
4. 過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
5. 過小な要求業務上の合理性なく能力・経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと
6. 個の侵害私的なことに過度に立ち入ること

6類型は限定列挙ではなく、これら以外もパワハラに該当する場合があります(パワハラ防止指針)。

#### 業務上の指導との境界線

パワハラと業務上の指導の区別は、行為の性質・目的・態様・頻度・状況等を総合的に評価して判断されます。「厳しい指導」が直ちにパワハラになるわけではありませんが、相手の人格を否定する言動・必要性のない厳しさ・継続的な攻撃的言動はパワハラと評価されやすいとされています。

②-B. セクシュアルハラスメント(均等法第11条第1項)

セクハラとは、職場における性的な言動による労働条件上の不利益(対価型)または就業環境の悪化(環境型)の2種類があります。

根拠条文:(本法)男女雇用機会均等法第11条第1項

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

#### 2類型の解説

対価型セクシュアルハラスメント: 性的な言動に対する拒否・抵抗を理由として、解雇・降格・減給等の不利益な取扱いが行われるものをいいます。

環境型セクシュアルハラスメント: 性的な言動によって就業環境が不快なものとなり、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じるものをいいます。

#### 成否の判断

セクハラの成否は、受け手の主観に加え、平均的な労働者の感じ方を基準に客観的に判断されます。受け手の主観のみで決まるものではなく、客観的な評価基準が重要です。行為者の意図・悪意の有無は直接の要件ではありませんが、慰謝料額等の評価に影響する場合があります。

同性間・上司以外の言動: セクハラは異性間に限られず、同性間の言動も対象となる場合があります(セクハラ指針:平成18年(2006年)厚生労働省告示第615号)。また、顧客・取引先からの言動も職場のセクハラとして使用者の防止義務の対象となります。

②-C. 妊娠・出産・育休等ハラスメント(均等法第11条の3・育介法第25条)

妊娠・出産・育休等に関するハラスメントは、当該事由に関する言動による就業環境の悪化(環境型)を対象とします。不利益取扱い自体は別条文(均等法第9条第3項・育介法第10条・第16条)で禁止されています。

根拠条文:(本法)男女雇用機会均等法第11条の3第1項

事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

根拠条文:(本法)育児・介護休業法第25条第1項(職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)

#### 典型的な言動の例

  • 「妊娠したなら辞めるべき」「育休を取るなら覚悟しろ」等の言動
  • 育休取得後の不利益と評価される配置転換・降格
  • 育休取得の申出に対し「迷惑だ」「辞めてもらった方がいい」等の発言

#### 「不利益取扱い」との区別(再掲)

妊娠・出産・育休等を理由とした解雇・降格等の不利益取扱い自体は、以下の条文で禁止されています:

対象事由根拠条文
婚姻・妊娠・出産等を理由とする解雇等(本法)男女雇用機会均等法第9条第3項
育児休業等を理由とする不利益取扱い(本法)育児・介護休業法第10条
介護休業等を理由とする不利益取扱い(本法)育児・介護休業法第16条

→ ハラスメント規定(均等法第11条の3・育介法第25条)は、不利益取扱いには至らないが就業環境を害する言動を対象とする規定です。

③ 使用者の措置義務(本記事の主軸)

使用者(会社)は、ハラスメントが発生しないよう雇用管理上の措置を講じる義務があります。この義務はハラスメントが実際に発生したかどうかにかかわらず課されます。3類型横断で共通の構造です。

③-1. 措置義務の根拠条文(類型横断)

類型措置義務条文相談を理由とする不利益取扱い禁止条文
パワハラ(本法)労働施策総合推進法第30条の2第1項(本法)第30条の2第2項
セクハラ(本法)男女雇用機会均等法第11条第1項(本法)第11条第2項
マタハラ(本法)男女雇用機会均等法第11条の3第1項(本法)第11条の3第2項
育休等ハラ(本法)育児・介護休業法第25条第1項(本法)第25条第2項

第1項=措置義務/第2項=相談を理由とする不利益取扱い禁止という構造が4法で統一されています。

③-2. 措置義務の主な内容(パワハラ防止指針より)

措置の種類内容
事業主の方針の明確化と周知・啓発ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と社内周知。行為者への厳正対処の方針の就業規則等への明記
相談体制の整備相談窓口の設置、担当者の設置、相談者への適切な対応
事後の迅速・適切な対応事実確認・被害者への配慮・行為者への措置・再発防止
プライバシー保護相談者・行為者等のプライバシー保護のための措置
相談・協力を理由とした不利益取扱いの禁止相談したことを理由とした不利益取扱いの防止

→ パワハラ防止指針が示す措置義務の内容は、セクハラ・マタハラ・育休等ハラの各指針でも実質的に同様の構造です。

③-3. 相談を理由とする不利益取扱いの禁止(独立条項・全類型共通)

根拠条文:(本法)労働施策総合推進法第30条の2第2項

事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

→ 同様の規定は均等法第11条第2項・第11条の3第2項・育介法第25条第2項にもあり、4法横断で共通の構造です。

③-4. 国・事業主・労働者の責務(労働施策総合推進法第30条の3)

根拠条文:(本法)労働施策総合推進法第30条の3(国、事業主及び労働者の責務)

→ 国・事業主・労働者それぞれの努力義務を定めた規定。事業主自身も労働者に対する言動に注意するよう努める義務があります(第30条の3第3項)。労働者も他の労働者に対する言動に注意を払う義務があります(第30条の3第4項)。

④ 違反時の効果(行政指導・民事責任)

措置義務違反には法令上の直接の罰則はありませんが、行政指導と民事責任の二重構造で実効性が確保されています。

④-1. 行政指導(労働施策総合推進法第33条)

労働施策総合推進法には直接の罰則はありませんが、第33条により、厚生労働大臣は事業主に対して助言・指導・勧告ができます。勧告に従わない場合、その旨を公表することができます。均等法・育介法でも同様の行政指導の仕組みがあります。

④-2. 民事上の責任

ハラスメント行為および使用者の対応に関する民事上の責任には複数の法的根拠があります:

根拠条文内容
(本法)民法第709条不法行為(行為者の損害賠償責任)
(本法)民法第715条使用者責任(被用者が事業の執行について第三者に加えた損害について使用者が責任を負う)
(本法)民法第415条債務不履行(安全配慮義務違反)
(本法)労働契約法第5条労働者の安全への配慮(使用者は労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務を負う:労働契約上の安全配慮義務の根拠条文)

→ ハラスメントは、行為者個人の不法行為責任(民法第709条)と、使用者の使用者責任(民法第715条)または安全配慮義務違反(労働契約法第5条・民法第415条)の両方が問題となり得ます。

⑤ ハラスメントを受けた場合の対処

ハラスメントを受けた場合、まず社内の相談窓口への相談、次いで外部機関の利用が選択肢となります。

⑤-1. 社内での対応

まず、就業規則・ハラスメント相談窓口等の社内制度を活用することが一般的です。相談したことを理由とした不利益取扱いは禁止されています(労働施策総合推進法第30条の2第2項・均等法第11条第2項・第11条の3第2項・育介法第25条第2項)。

⑤-2. 外部機関

機関利用できる場合
都道府県労働局(雇用環境・均等部)セクハラ・マタハラに関する相談・行政指導(調停)の申請
労働基準監督署労働基準法違反が疑われる場合の相談(ハラスメント一般は労働局が窓口)
労働局の総合労働相談コーナー各種ハラスメントに関する相談
弁護士損害賠償請求等の法的対応(必要に応じて相談を検討)

⑤-3. 対処の手順(目安)

Step 1:事実関係を記録する
  └ 日時・場所・発言内容・目撃者・自分の感じた影響を時系列で書面化
  └ 録音・メール・SNS 等のデジタル証拠も保全

Step 2:社内の相談窓口に相談する
  └ 措置義務の一環として設置されているはずの相談窓口を利用
  └ 相談の事実・内容を記録(相談したこと自体が証拠になる)

Step 3:社内対応で解決しない場合、外部機関に相談する
  └ 都道府県労働局(雇用環境・均等部)への申請
  └ 労働局の総合労働相談コーナー
  └ 必要に応じて弁護士に法的対応を相談

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
(本法)第30条の2第1項労働施策総合推進法中核パワハラの定義(3要件)・使用者の雇用管理上の措置義務
(本法)第30条の2第2項労働施策総合推進法中核パワハラ相談を理由とする不利益取扱いの禁止
(本法)第30条の2第3項労働施策総合推進法周辺パワハラ防止指針の策定根拠(厚労大臣による)
(本法)第30条の3労働施策総合推進法周辺国・事業主・労働者の責務(努力義務)
(本法)第33条労働施策総合推進法周辺厚労大臣による助言・指導・勧告・公表
(本法)第9条第3項男女雇用機会均等法中核婚姻・妊娠・出産等を理由とする解雇等の禁止
(本法)第11条第1項男女雇用機会均等法中核セクハラの防止・使用者の雇用管理上の措置義務
(本法)第11条第2項男女雇用機会均等法中核セクハラ相談を理由とする不利益取扱いの禁止
(本法)第11条の3第1項男女雇用機会均等法中核妊娠・出産等に関するハラスメント防止措置義務
(本法)第11条の3第2項男女雇用機会均等法中核マタハラ相談を理由とする不利益取扱いの禁止
(本法)第10条育児・介護休業法中核育児休業を理由とする不利益取扱いの禁止
(本法)第16条育児・介護休業法中核介護休業を理由とする不利益取扱いの禁止
(本法)第25条第1項育児・介護休業法中核職場における育児休業等に関するハラスメント防止措置義務
(本法)第25条第2項育児・介護休業法中核育休等関連の相談を理由とする不利益取扱いの禁止
(本法)第5条労働契約法中核労働者の安全への配慮(労働契約上の安全配慮義務)
(本法)第415条民法周辺債務不履行による損害賠償(安全配慮義務違反)
(本法)第709条民法周辺不法行為(行為者の損害賠償責任)
(本法)第715条民法中核使用者責任(被用者が事業の執行について加えた損害について使用者が責任を負う)

まとめ

  • ハラスメント関連法は、「使用者の措置義務」を主軸とする義務ベースの統一構造で構成されています。3類型は措置義務の対象となる「言動の種類」に応じた下位区分です
  • 3要素(言動の定義/措置義務/相談を理由とする不利益取扱い禁止)は全類型横断で共通。各法は「第1項=措置義務」「第2項=不利益取扱い禁止」の構造で統一
  • パワハラは「①優越的関係を背景 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えた ③就業環境を害する言動」の3要件で定義されます(労働施策総合推進法第30条の2第1項令和元年(2019年)改正・大企業令和2年(2020年)6月1日施行・中小企業令和4年(2022年)4月1日施行
  • パワハラの6類型(身体的攻撃・精神的攻撃・人間関係からの切り離し・過大要求・過小要求・個の侵害)はパワハラ防止指針令和2年(2020年)1月15日厚生労働省告示第5号)による(限定列挙ではない)
  • セクハラは「対価型(不利益取扱い)」と「環境型(就業環境を害する)」の2類型があります(男女雇用機会均等法第11条第1項
  • マタハラ等は妊娠・出産・育休等に関する言動による就業環境を害するものが対象です(均等法第11条の3第1項・育介法第25条第1項
  • 不利益取扱いの禁止(ハラスメントとは別条文):均等法第9条第3項(婚姻・妊娠・出産等)、育介法第10条(育児休業)・第16条(介護休業)
  • 使用者には防止のための雇用管理上の措置義務があり、ハラスメントが実際に発生していなくても課されます
  • 相談を理由とする不利益取扱いは禁止されています(4法横断で共通:労働施策総合推進法第30条の2第2項・均等法第11条第2項・第11条の3第2項・育介法第25条第2項)
  • 違反時は行政指導(厚労大臣の助言・指導・勧告・公表:労働施策総合推進法第33条)と民事責任民法第709条不法行為・第715条使用者責任・労働契約法第5条民法第415条安全配慮義務違反)の二重構造で実効性が確保されています

具体的な行為がハラスメントに当たるかどうかは個別の事情によって判断が異なるため、都道府県労働局・労働基準監督署または弁護士への相談をおすすめします。

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