03-06 · 労働・雇用 · 比較系

解雇予告と即日解雇の違い|30日前予告・予告手当・除外認定の仕組み

使用者(会社)が労働者を解雇する場合、原則として30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法第20条第1項)。この手続きを踏まずに即日解雇した場合は、解雇予告義務違反として刑事罰(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金:労基法第119条第1号)の対象となる可能性があります。例外として、労働基準監督署長の認定(労基法第19条第2項を準用:労基法第20条第3項)を受けた場合は予告なしの即日解雇が認められます。この記事では、解雇予告と即日解雇の違い・予告手当の計算方法・除外認定の要件を条文とともに解説します。

使用者(会社)が労働者を解雇する場合、原則として30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法第20条第1項)。この手続きを踏まずに即日解雇した場合は、解雇予告義務違反として刑事罰(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金:労基法第119条第1号)の対象となる可能性があります。例外として、労働基準監督署長の認定(労基法第19条第2項を準用:労基法第20条第3項)を受けた場合は予告なしの即日解雇が認められます。この記事では、解雇予告と即日解雇の違い・予告手当の計算方法・除外認定の要件を条文とともに解説します。

カテゴリ:労働・雇用 / 種別:比較系
関連条文:(本法)労働基準法第19条第2項・第20条第1項・第2項・第3項・第21条・第22条第2項・第119条第1号/(本法)労働契約法第15条・第16条/(本法)民法第627条第1項

こんな方へ

  • 突然「明日から来なくていい」と言われた場合の対処を知りたい
  • 解雇予告手当の計算方法を確認したい
  • 試用期間中や短期雇用でも解雇予告が必要か確認したい
  • 「懲戒解雇だから予告手当なし」という説明が正しいか確認したい
  • 解雇予告なしの即日解雇が違法かどうか確認したい
  • 解雇予告義務違反の罰則(拘禁刑・罰金)を確認したい

この記事でわかること

  • 解雇予告義務の内容(30日前予告または予告手当:労基法第20条第1項)
  • 解雇予告手当の計算方法と支払い時期(最判昭和35年(1960年)3月11日
  • 解雇予告が不要となる例外(除外認定)の要件(労基法第20条第1項ただし書・第3項)
  • 試用期間中・短期雇用での扱いの違い(労基法第21条第1号~第4号)
  • 解雇予告義務違反の効果と対処(労基法第119条第1号)
  • 解雇予告と解雇の有効性(労働契約法第16条)の独立性

結論:解雇には原則30日前の予告か30日分の予告手当が必要。懲戒解雇でも原則として変わらない

根拠条文:(本法)労働基準法第20条第1項(解雇の予告)

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
比較項目解雇予告即日解雇
原則(労基法第20条第1項本文)30日以上前の予告が必要とされます即日解雇は可能ですが、原則として30日分以上の予告手当の支払いが必要とされます
代替手段(労基法第20条第2項)30日分未満の予告日数の場合は不足日数分の平均賃金を支払う30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払えば可能
例外(労基法第20条第1項ただし書)天災事変・労働者の責に帰すべき事由がある場合労働基準監督署長の除外認定(労基法第20条第3項により第19条第2項を準用)を受けた場合
懲戒解雇の場合除外認定を受けなければ予告または予告手当が必要とされます除外認定があれば予告手当なしの即日解雇が可能
違反した場合(労基法第119条第1号)6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となり得ます+解雇の有効性が別途問題となる場合があります同左

重要: 「懲戒解雇だから予告手当は不要」という説明は、労働基準監督署長の除外認定を受けていない限り正確ではありません。懲戒解雇であっても、認定がない場合は解雇予告義務が課されます。

今すぐやること

  1. 解雇通告の日時・方法・理由を記録する(書面・メール・録音等の証拠保全)
  2. 解雇予告手当の支払いの有無を確認する(30日分以上の平均賃金が解雇通告と同時または事前に支払われたか)
  3. 「除外認定」の有無を会社に確認する(労基署長の認定書の写しを請求)
  4. 解雇理由証明書を請求する(労基法第22条第2項:使用者は遅滞なく交付する義務)
  5. 予告手当の不払い・除外認定なしの即日解雇は労働基準監督署への申告も検討する(労基法第104条第1項)

判断フロー:この解雇は適法か

この解雇は解雇予告義務を満たしているか?

適法の可能性が高い

  • 30日以上前に解雇を予告した解雇予告義務を満たしている可能性があります(労基法第20条第1項本文)
  • 30日分以上の平均賃金(予告手当)を解雇通告と同時または事前に支払って即日解雇した解雇予告義務を満たしている可能性があります
  • 予告日数が30日未満で、不足日数分の予告手当を支払った要件を満たしている可能性があります(労基法第20条第2項)

除外認定がある場合(予告・予告手当なしでも可能)

  • 天災事変等やむを得ない事由で事業継続が不可能になった除外認定の要件を満たす可能性があります
  • 労働者側の重大な帰責事由があり、労基署長の認定を受けた即日解雇が認められます

NOTE: 解雇予告義務違反があった場合でも、解雇そのものの有効性は別途判断されます。解雇予告義務違反と解雇の有効性(労働契約法第16条の解雇権濫用法理)は独立した問題です。

① 解雇予告義務の原則(労基法第20条第1項・第2項)

使用者は、労働者を解雇する場合、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

根拠条文:(本法)労働基準法第20条第1項 根拠条文:(本法)労働基準法第20条第2項

前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

予告期間の計算

予告期間の30日は、解雇通知の翌日から解雇日の前日までを数えます。解雇通知した日は含まれません。

例: 4月1日に解雇を通知した場合、最も早い解雇日は5月1日です(4月2日から5月1日で30日)。

解雇予告手当の計算(労基法第20条第2項)

30日分に満たない予告期間で解雇する場合は、不足する日数分の平均賃金を支払う必要があります。

平均賃金の計算(労基法第12条): 原則として、解雇通知日以前の3か月間に支払われた賃金の総額をその期間の総日数で除した金額(1日あたりの平均賃金)× 不足日数

解雇予告手当の支払い時期

判例上、解雇予告手当は解雇通告と同時または事前に支払う必要があり、事後の支払いは認められないと解されています。事後に支払いがあった場合、解雇通告から支払いまでの間は解雇予告義務違反となる可能性があります。

NOTE: 解雇予告手当の支払時期については、最判昭和35年(1960年)3月11日が、解雇通告と同時または事前の支払いを要すると判示している。

② 解雇予告が不要な例外(除外認定)(労基法第20条第1項ただし書・第3項)

天災事変等やむを得ない事由、または労働者の責に帰すべき事由がある場合は、労働基準監督署長の認定を受けることで予告なしの即日解雇が認められます。

根拠条文:(本法)労働基準法第20条第1項ただし書 根拠条文:(本法)労働基準法第20条第3項

前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

→ 第20条第3項により、第19条第2項(「その事由について行政官庁の認定を受けなければならない」)が準用されます。すなわち、第20条第1項ただし書の事由がある場合でも、即日解雇には労働基準監督署長の認定が必要です。

除外事由① 天災事変等やむを得ない事由

天災・事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合をいいます。単なる経営不振・業績悪化は、この事由には当たらないとされています(行政通達)。

除外事由② 労働者の責に帰すべき事由

労働者側に重大な責任があり、雇用関係の継続が困難な事由をいいます。

重大な帰責事由の例とされるもの(行政通達による):

  • 故意または重大な過失による会社財産の損傷
  • 長期の無断欠勤
  • 経歴詐称・採用時の重大な詐欺
  • 業務上の横領・窃盗等

重要: これらの事由があっても、労働基準監督署長の認定(除外認定)を受けなければ、即日解雇は解雇予告義務違反と評価される可能性があります。除外認定がない場合に「懲戒解雇だから」と一方的に即日解雇することは、義務違反と評価されるリスクがあります。

除外認定の手続き

除外認定は、解雇を行う前または解雇と同時に、管轄の労働基準監督署長に申請します(解雇制限解雇予告除外認定申請書)。認定基準の判断は行政の裁量が伴うため、認定されるかどうかは個別の事情によって異なります。

③ 解雇予告が不要な労働者(労基法第21条の適用除外)

一定の短期雇用・試用期間中の労働者については、解雇予告義務が適用されない場合があります。

根拠条文:(本法)労働基準法第21条

前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

適用除外の対象(4号構成)

対象例外(解雇予告の適用あり)
第1号日々雇い入れられる者1か月を超えて引き続き使用された場合
第2号2か月以内の期間を定めて使用される者その期間を超えて引き続き使用された場合
第3号季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者その期間を超えて引き続き使用された場合
第4号試用期間中の者14日を超えて引き続き使用された場合

直感と逆になりやすい点: 試用期間中であっても、雇入れから14日を超えて継続勤務した場合は解雇予告義務が適用されます(労基法第21条第4号ただし書)。「試用期間中はいつでも解雇予告なしで解雇できる」という認識は誤りです。

→ なお、試用期間中の解雇そのものの有効性は、留保解約権の濫用として制限されると解されています。試用期間中だからといって自由に解雇できるわけではありません。

NOTE: 試用期間中の解雇に関する留保解約権濫用法理は、最大判昭和48年(1973年)12月12日 三菱樹脂事件で示されている。

④ 解雇予告義務違反の効果

解雇予告義務に違反した解雇の効力と、違反に対する制裁は別の問題です。

刑事罰(労基法第119条第1号)

根拠条文:(本法)労働基準法第119条第1号

次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条第二十条、第二十二条第四項、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、…の規定に違反した者

→ 解雇予告義務違反(第20条違反)は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となり得ます。

→ 令和7年(2025年)6月1日施行の改正刑法により、「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。労働基準法第119条の「拘禁刑」は、この改正後の表記です。

ただし実際には是正指導等が行われることが多く、直ちに罰金・拘禁刑が科される運用が一般的ではありません。

民事上の効果

解雇予告義務違反があった場合の解雇の効力については、判例上争いがあります。

  • 予告義務違反と解雇の有効性は独立した問題: 解雇予告義務に違反したことと解雇が有効かどうかは別の問題です。解雇予告義務違反とは別に、解雇の有効性が問題となる場合があります(労働契約法第16条による解雇権濫用法理)
  • 一般的な理解: 一般には、予告手当の支払いによって手続上の違法状態が解消されると解されることが多いとされますが、個別事情によります
  • 予告手当の請求: 解雇予告義務違反があった場合、労働者は30日分の予告手当相当額を請求できる場合があります

NOTE: 解雇権濫用法理は、最判昭和50年(1975年)4月25日 日本食塩製造事件で確立した判例法理であり、平成19年(2007年)労働契約法制定により同法第16条として明文化された(労働契約法の沿革・成立要件は解雇の要件と不当解雇で詳述)。

解雇の有効性とは別の問題: 解雇予告義務を満たしていても、解雇に正当な理由がなければ不当解雇として無効になる場合があります(労働契約法第16条:客観的合理的な理由・社会通念上の相当性)。解雇予告と解雇の正当性は独立した問題です。懲戒解雇の場合は、労働契約法第15条(懲戒権濫用法理)の制約も受けます。

⑤ 解雇予告義務違反を受けた場合の対処

解雇予告なし・予告手当なしで即日解雇された場合は、まず事実確認と記録保全を行うことが重要です。

対処の手順(目安)

Step 1:解雇の内容・日付・状況を記録する
  └ 解雇通知書・口頭での解雇通知の日時・状況等を記録
  └ 解雇理由証明書の交付を請求(労基法第22条第2項)

Step 2:予告手当の支払いを請求する
  └ 内容証明郵便等で30日分の予告手当を請求
  └ 内容証明郵便(催告)の効果:催告の時から6か月の完成猶予(民法第150条第1項)
  ※ 2020年4月1日施行の改正民法により「時効中断」は廃止され「完成猶予」「更新」に変更

Step 3:労働基準監督署または労働局に相談する
  └ 解雇予告義務違反の申告(労基法第104条第1項)・相談が可能です

Step 4:必要に応じて弁護士・社会保険労務士に相談する
  └ 解雇の有効性(不当解雇)についての法的判断を得る

注意: 解雇予告義務違反の問題と、解雇そのものが正当かどうかの問題(不当解雇:労働契約法第16条)は別です。両方の観点から検討することを推奨します。

解雇理由証明書の請求(労基法第22条第2項)

根拠条文:(本法)労働基準法第22条第2項

労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

→ 解雇予告から退職日までの間に解雇理由証明書を請求すれば、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。解雇理由が曖昧な場合の重要な証拠となります。

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
(本法)第19条第2項労働基準法周辺行政官庁(労働基準監督署長)の認定(第20条第3項により準用)
(本法)第20条第1項労働基準法中核解雇予告義務(30日前予告または予告手当)・ただし書(天災等・労働者の責めに帰すべき事由)
(本法)第20条第2項労働基準法中核予告日数の短縮(手当との組み合わせ)
(本法)第20条第3項労働基準法中核第19条第2項の準用(労働基準監督署長の認定)
(本法)第21条労働基準法中核解雇予告の適用除外(4号構成:日々雇入・2か月以内・季節的業務・試用期間中14日以内)
(本法)第22条第2項労働基準法周辺解雇理由証明書の交付義務
(本法)第119条第1号労働基準法中核解雇予告義務違反の罰則(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
(本法)第15条労働契約法周辺懲戒権濫用法理
(本法)第16条労働契約法中核解雇権濫用法理(解雇の客観的合理的理由・社会通念上の相当性)
(本法)第627条第1項民法周辺雇用の解約申入れ(労働契約法第16条による制約あり)

まとめ

  • 解雇には原則として30日前の予告か30日分の予告手当が必要とされます(労基法第20条第1項本文
  • 予告日数は予告手当の支払いで短縮可能(労基法第20条第2項
  • 「懲戒解雇だから予告手当なし」 は、労働基準監督署長の除外認定がない限り正確ではありません
  • 予告なしの即日解雇が認められるのは天災事変等やむを得ない事由または労働者の重大な帰責事由があり、労働基準監督署長の認定を受けた場合に限られます(労基法第20条第1項ただし書第20条第3項による第19条第2項の準用
  • 解雇予告手当は解雇通告と同時または事前に支払う必要があると解されています(判例:最判昭和35年(1960年)3月11日
  • 試用期間中であっても14日を超えて継続勤務した場合は解雇予告義務が適用されます(労基法第21条第4号ただし書
  • 試用期間中の解雇の有効性も留保解約権の濫用として制限されると解されています(判例:最大判昭和48年(1973年)12月12日 三菱樹脂事件
  • 解雇予告義務違反は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となり得ます(労基法第119条第1号令和7年(2025年)6月1日施行の改正刑法による拘禁刑一本化反映)
  • 解雇予告義務を満たしていても、解雇に正当な理由がなければ不当解雇として別途問題になります(労働契約法第16条:解雇権濫用法理。判例:最判昭和50年(1975年)4月25日 日本食塩製造事件
  • 懲戒解雇の場合は労働契約法第15条(懲戒権濫用法理)の制約も受けます
  • 解雇予告義務違反を受けた場合は、解雇理由証明書の請求(労基法第22条第2項)・予告手当の請求・労基署への申告(労基法第104条第1項)等の対応が選択肢となります

解雇予告義務の適否・除外認定の可否・解雇の有効性は個別の事情によって判断が異なるため、労働基準監督署または弁護士・社会保険労務士への相談をおすすめします。

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