02-11 · 相続・遺言 · 要件系

相続財産清算人とは|選任要件・手続き・権限と令和3年改正のポイント

相続財産清算人とは、相続人がいない(または相続人全員が相続放棄をした)場合に、家庭裁判所が選任する、相続財産を管理・清算する者です。令和3年(2021年)改正(2023年4月1日施行)により、従来の「相続財産管理人」制度のうち清算を目的とするものが改正され、「相続財産清算人」という名称になるとともに、公告手続が合理化されました。この記事では、相続財産清算人の選任要件・権限・手続きを解説します。

相続財産清算人とは、相続人がいない(または相続人全員が相続放棄をした)場合に、家庭裁判所が選任する、相続財産を管理・清算する者です。令和3年(2021年)改正(2023年4月1日施行)により、従来の「相続財産管理人」制度のうち清算を目的とするものが改正され、「相続財産清算人」という名称になるとともに、公告手続が合理化されました。この記事では、相続財産清算人の選任要件・権限・手続きを解説します。

カテゴリ:相続・遺言 / 種別:要件系
関連条文:(本法)民法第951条・第952条第1項・第2項・第953条・第957条第1項・第958条の2・第959条/民法第897条の2(保存目的の相続財産管理人・参考)

こんな方へ

  • 相続人がいない・全員が相続放棄した場合の相続財産の扱いを知りたい
  • 相続財産清算人の選任を申し立てたい
  • 債権者・受遺者として相続財産から弁済を受けたい
  • 特別縁故者として財産分与を請求したい
  • 令和3年改正で何が変わったか確認したい

この記事でわかること

  • 相続財産清算人が選任される場面・要件
  • 選任申立ての方法(申立権者・申立先)
  • 相続財産清算人の権限と義務
  • 清算手続きの流れ(並行公告→債権者弁済→特別縁故者分与→国庫帰属)
  • 令和3年改正(名称変更・公告手続の合理化)のポイント

結論:相続財産清算人は「相続人不存在」の場合に選任される。清算後の残余財産は特別縁故者への分与または国庫帰属となる

根拠条文:(本法)民法第952条第1項(相続財産清算人の選任)

段階内容条文
相続財産法人の成立相続人のあることが明らかでないとき、相続財産は法人となる民法第951条
相続財産清算人の選任利害関係人または検察官の申立てにより家庭裁判所が選任民法第952条第1項
選任・相続人捜索の公告(6か月以上)家庭裁判所が清算人選任・相続人捜索を同時公告民法第952条第2項
相続債権者・受遺者への請求申出の公告(2か月以上)清算人が並行して公告(第952条第2項の期間内に満了)民法第957条第1項
相続財産の管理・清算相続財産清算人が財産を管理・債権者へ弁済民法第953条〜第958条
特別縁故者への分与被相続人と特別の縁故があった者への財産分与民法第958条の2
国庫帰属残余財産が国庫に帰属する民法第959条

重要: 「相続財産清算人」は令和3年改正前の「相続財産管理人」(清算目的)に相当します。名称・公告手続が変更されているため、改正前の情報と混同しないよう注意が必要です。

判断フロー:相続財産清算人の選任が必要か

相続財産清算人の選任が必要な状況か?

選任が必要・有効な場面

  • 相続人が全員不明・相続人がいない
  • 相続人全員が相続放棄をした
  • 債権者として相続財産から弁済を受けたい
  • 特別縁故者として財産分与を求めたい

選任前の確認

  • 相続人の有無が不明
  • 相続放棄が確定していない

選任の根拠条文は民法第952条第1項。債権者は選任申立てを行ったうえで相続財産清算人による公告期間内に申出を行います(民法第957条第1項)。特別縁故者として財産分与を求める場合は、清算手続きを経たうえで、相続人捜索の公告期間満了後3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります(民法第958条の2第2項)。

「相続人のあることが明らかでない」状態であれば申立可能です。相続放棄の申述期間(3か月)中は、放棄が確定した後に選任申立てを行うことが実務上は一般的です。

選任申立てから清算完了までは、令和3年改正後は最短6か月程度に短縮されました(改正前は10か月以上)。ただし複雑な事案では1年以上かかる場合もあるため、債権者として請求する場合は早期の申立てが望ましいといえます。

① 相続財産清算人が選任される場面

相続財産清算人は、「相続人のあることが明らかでない」場合に選任されます。

根拠条文:(本法)民法第951条(相続財産法人の成立) 根拠条文:(本法)民法第952条第1項(相続財産清算人の選任)

「相続人のあることが明らかでない場合」の典型例

  • 被相続人に子・親・兄弟姉妹がおらず、相続人となるべき者がいない場合
  • 相続人全員が相続放棄をした場合
  • 相続人の所在が不明で、相続人が存在するかどうか確認できない場合

相続財産法人の成立(民法第951条

相続人のあることが明らかでないとき、相続財産は法人となります(民法第951条)。この相続財産法人を管理・清算するために相続財産清算人が選任されます。

→ 改正前は「相続人不存在の確定後に法人が成立する」と解されていましたが、改正後は「相続人のあることが明らかでないとき」から法人として扱う整理が明確化されています。

② 選任申立ての手続き

相続財産清算人の選任申立ては、利害関係人または検察官が家庭裁判所に行います。

根拠条文:(本法)民法第952条第1項

申立権者

  • 利害関係人: 相続債権者・受遺者・特別縁故者となりうる者・特定遺贈の受遺者・受贈者・後見人・地方公共団体等
  • 検察官: 公益上の必要がある場合

申立先

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法第203条第1号・別表第1の99)

申立てに必要な主な書類(目安)

  • 申立書
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人不存在を示す資料(相続放棄申述受理証明書等)
  • 相続財産の概要を示す資料
  • 申立人の利害関係を示す資料

注意: 申立てには予納金(清算人への報酬・費用に充てる金員)の納付が求められることがあります。予納金の額や要否は、財産規模や事案の内容により個別に判断されます(数十万円〜100万円程度の事例が多い)。

③ 相続財産清算人の権限と義務

相続財産清算人は、相続財産の管理・清算に必要な行為を行う権限を持ちます。

根拠条文:(本法)民法第953条(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)

第953条は不在者の財産管理人に関する規定(民法第27条第29条)を準用しており、相続財産清算人もこれらの規定に従って権限・義務を負います。

主な権限

行為の種類内容
財産の管理相続財産の調査・保全・管理
財産の換価不動産・動産等の売却(処分行為は家庭裁判所の許可が必要:民法第28条準用)
債権者への弁済公告期間内に申出のあった債権者・受遺者への弁済
訴訟行為相続財産に関する訴訟の当事者となること
報告義務相続債権者・受遺者の請求があるとき、相続財産の状況を報告(民法第954条

相続財産清算人の権限のうち、保存行為と利用・改良行為(民法第28条準用)は単独で行えますが、それ以外の処分行為(不動産の売却等)には家庭裁判所の許可が必要です。家庭裁判所の関与が強い制度であり、清算人が自由に処分できるわけではありません。

④ 清算手続きの流れ(令和3年改正後)

清算手続きは「並行公告→債権者・受遺者への弁済→特別縁故者への分与→国庫帰属」の段階で進みます。令和3年改正により公告期間が大幅に短縮されました。

根拠条文:(本法)民法第952条第2項第957条第1項第958条の2第959条

Step 1:相続財産清算人の選任(民法第952条第1項)
  └ 家庭裁判所が利害関係人・検察官の請求により清算人を選任

Step 2:選任・相続人捜索の公告(民法第952条第2項)【6か月以上】
  └ 家庭裁判所が「清算人選任の事実」と「相続人があるならば期間内に権利を主張すべき旨」を同時公告
  └ 公告期間:6か月以上
  └ 期間内に相続人としての権利を主張する者がなければ、相続人不存在が確定

Step 3:相続債権者・受遺者への請求申出の公告(民法第957条第1項)【2か月以上】
  └ 相続財産清算人が並行して、相続債権者・受遺者に対し「2か月以上の期間内に請求の申出をすべき旨」を公告
  └ この期間は、Step 2の選任・捜索公告期間内に満了するものでなければならない
  └ **公告期間内に申出をしなかった相続債権者・受遺者で清算人に知れなかった者は、残余財産についてのみその権利を行使できる**(民法第957条第2項→第935条本文準用)
  └ ただし、清算人に**知られている**相続債権者・受遺者は、申出がなくても弁済から除斥されない(同条第935条ただし書準用)
  └ 債権者としては、確実に弁済を受けるため、公告期間内の申出が極めて重要なポイントとなります

Step 4:債権者・受遺者への弁済(民法第957条第2項→第928条〜第935条準用)
  └ 申出のあった相続債権者に弁済・受遺者に遺贈を実行
  └ 換価のための競売は民法第932条本文(ただし、限定承認と異なり民法第932条ただし書の先買権相当の規定は準用されない)

Step 5:特別縁故者への財産分与(民法第958条の2)
  └ 民法第952条第2項の公告期間(6か月以上)満了後3か月以内に申立て
  └ 家庭裁判所が「特別縁故者」と認めた者に残余財産の全部・一部を分与

Step 6:国庫帰属(民法第959条)
  └ 分与されなかった残余財産は国庫に帰属

改正前後の比較(公告手続の合理化)

段階改正前改正後(2023年4月1日施行)
第1段階:選任公告改正前民法第952条第2項により遅滞なく公告(特に期間定めなし)第952条第2項により6か月以上の選任・捜索公告(同時並行)
第2段階:相続債権者・受遺者への請求申出公告改正前民法第957条第1項により2か月以上第957条第1項により2か月以上(第952条第2項の期間内に満了)
第3段階:相続人捜索の公告改正前民法第958条により6か月以上(第2段階終了後)廃止(第952条第2項の選任・捜索公告に統合)
全期間10か月以上6か月程度に短縮

→ 令和3年改正により、(1)選任公告と(3)相続人捜索公告が統合され、(2)請求申出公告も並行して行われるようになったことで、清算手続が大幅に短縮されました。

⑤ 特別縁故者への財産分与

被相続人と特別の縁故があった者は、相続財産の全部または一部の分与を家庭裁判所に申し立てることができます。

根拠条文:(本法)民法第958条の2(特別縁故者に対する相続財産の分与)

申立期間

民法第952条第2項の公告期間(6か月以上)満了後3か月以内に申立てが必要です(民法第958条の2第2項)。

→ 改正前は「最後の相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内」とされていましたが、改正により最初の選任・相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内に整理されました。

特別縁故者の例

判例上、特別縁故者と認められる可能性があるとされる者の例:

  • 被相続人と生計を同じくしていた者(内縁の配偶者・事実上の養子等)
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • 被相続人と特別の縁故があったその他の者

注意: 分与の有無・範囲は家庭裁判所の裁量により個別に判断されます。上記の例に当てはまる場合でも、必ず認められるわけではありません。申立てをしても分与されない場合があります。

⑥ 令和3年改正のポイント

令和3年(2021年)改正(2023年4月1日施行)により、相続財産管理制度が整理されました。

根拠法:「民法等の一部を改正する法律」(、令和3年4月21日成立・4月28日公布、2023年4月1日施行)

主な改正内容

項目改正前改正後(令和3年(2021年)改正(2023年4月1日施行))
名称(清算目的)相続財産管理人相続財産清算人民法第952条
名称(保存目的)(清算目的の管理人と区別なし)相続財産管理人民法第897条の2が新設)
相続財産法人相続人不存在確定後に成立する整理相続人のあることが明らかでないときから法人として扱う整理(第951条)
公告手続第1段階(選任)→第2段階(請求申出2か月以上)→第3段階(相続人捜索6か月以上)の順次公告(合計10か月以上)第952条第2項の選任・相続人捜索公告(6か月以上)と第957条第1項の請求申出公告(2か月以上)の並行公告(最短6か月程度)
特別縁故者の申立期間最後の相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内第952条第2項の公告期間の満了後3か月以内(第958条の2第2項

保存目的の「相続財産管理人」(民法第897条の2

令和3年改正で新設されたもう1つの制度として、保存を目的とする「相続財産管理人」民法第897条の2)があります。これは清算ではなく、相続財産を保存する目的で家庭裁判所が選任する管理人です。

  • 相続人が単純承認した場合(複数相続人で遺産分割未了等)にも選任可能
  • 「相続財産清算人」(民法第952条)が選任されている場合は不要
  • 保存行為のみが権限であり、処分は原則できない

実務上の注意: 改正前(2023年4月1日以前に開始した手続き)については旧法が適用されます。手続きが複数の時期にまたがる場合は適用法の確認が必要です。

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
(本法)第951条民法中核相続財産法人の成立
(本法)第952条第1項民法中核相続財産清算人の選任(令和3年改正で名称変更)
(本法)第952条第2項民法中核選任・相続人捜索の公告(6か月以上・令和3年改正で統合)
(本法)第953条民法中核相続財産清算人の権限・義務(不在者財産管理人の規定を準用)
(本法)第957条第1項民法中核相続債権者・受遺者への請求申出の公告(2か月以上・並行公告)
(本法)第958条の2民法中核特別縁故者への財産分与(公告期間満了後3か月以内に申立て)
(本法)第959条民法中核残余財産の国庫帰属
(本法)第897条の2民法周辺保存目的の相続財産管理人(令和3年改正で新設・参考)

まとめ

  • 相続財産清算人は相続人がいない・全員が相続放棄をした場合に、利害関係人または検察官の申立てにより家庭裁判所が選任します(民法第952条第1項
  • 令和3年(2021年)改正(2023年4月1日施行)で「相続財産管理人」(清算目的)から「相続財産清算人」に名称・制度が変更されました
  • 清算手続は並行公告(選任・相続人捜索公告6か月以上+請求申出公告2か月以上)→債権者弁済特別縁故者への分与国庫帰属の順で進みます
  • 令和3年改正により公告手続が10か月以上から6か月程度に短縮されました
  • 特別縁故者への財産分与(第958条の2)は、第952条第2項の公告期間満了後3か月以内に申し立てる必要があります
  • 分与されなかった残余財産は国庫に帰属します(第959条)
  • 令和3年改正で保存目的の「相続財産管理人」民法第897条の2)も別途新設されました(清算目的の「相続財産清算人」とは別の制度)
  • 申立てには予納金の納付が求められることがあります
  • 手続きは複雑なため、弁護士・司法書士への早期相談をおすすめします

相続財産清算人の手続は、各段階で期限や要件が定められており、それらを踏まえて進める必要があります。個別の事情によって異なるため、弁護士・司法書士への早期相談をおすすめします。

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