02-04 · 相続・遺言 · 要件系

相続人の範囲と法定相続分|誰が相続人になり、取り分はいくらか

相続が発生したとき、「誰が相続人になるか」「それぞれの取り分(法定相続分)はいくらか」は民法で定められています。相続人の範囲と法定相続分は、相続手続の出発点となる重要なルールです。配偶者は常に相続人ですが、血族相続人には第1〜第3順位があり、上位の順位者がいれば下位の順位者は相続人になりません。条文とともに整理します。

こんな方へ

  • 親や配偶者が亡くなり、自分が相続人になるか確認したい
  • 兄弟・親・子など複数の親族がいて、誰が相続人になるかわからない
  • 法定相続分(取り分の割合)を確認したい
  • 代襲相続とは何か知りたい

この記事でわかること

  • 相続人になれる人の範囲(順位)
  • 配偶者の相続権の特殊性
  • 法定相続分(相続割合)の計算方法
  • 代襲相続とは何か
  • 相続人の欠格・廃除
  • 相続人ではない親族の特別寄与料(平成30年(2018年)相続法改正・2019年7月1日施行)

結論:相続人は「配偶者」と「血族の第1〜第3順位」で決まる

相続人の範囲は民法で定められています。配偶者は常に相続人となり、血族相続人は子・孫(第1順位)→直系尊属(第2順位)→兄弟姉妹(第3順位)の順で、上位の順位者がいる場合は下位の順位者は相続人になりません。

根拠条文:(本法)民法第890条(配偶者の相続権)

被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

今すぐやること

  1. 被相続人との関係を確認する(配偶者か、何順位の血族か)
  2. 上位順位の相続人が存在するか確認する(子・孫がいれば親・兄弟姉妹は相続人にならない)
  3. 代襲相続が発生していないか確認する(相続人が先に亡くなっている場合)
  4. 欠格・廃除に該当する者がいないか確認する

判断フロー①:自分は相続人になるか

被相続人との関係はどれか?

常に相続人になる

  • 被相続人の法律上の配偶者(婚姻届を提出した配偶者)

血族相続人(順位による)

  • 第1順位:被相続人の子・孫・ひ孫
  • 第2順位:直系尊属(親・祖父母等)
  • 第3順位:兄弟姉妹・甥・姪

なお、内縁・事実婚の配偶者は相続人になりません(ただし、遺言による遺贈や、相続人不存在の場合の特別縁故者としての財産分与が認められる場合があります。詳細は⑥参照)。認知された非嫡出子は第1順位の相続人となり、平成25年改正以降は嫡出子と相続分が同等です(詳細は③参照)。

判断フロー②:法定相続分はいくらか

配偶者と誰が一緒に相続するか?

配偶者がいる場合

  • 配偶者と子(第1順位)
  • 配偶者と直系尊属(第2順位・子等がいない場合)
  • 配偶者と兄弟姉妹(第3順位・子等・直系尊属がいない場合)
  • 配偶者のみ(血族相続人なし)

配偶者がいない場合

  • 子のみ
  • 直系尊属のみ
  • 兄弟姉妹のみ

法定相続分は遺産分割協議の出発点であり、相続人全員の合意があれば異なる割合で分割することも可能です。代襲相続が発生する場合、代襲相続人は被代襲者の相続分をそのまま引き継ぎます(詳細は④参照)。

① 血族相続人の3つの順位

血族相続人には順位があり、上位の順位者が1人でもいる場合は下位の順位者は相続人になりません。

第1順位:子・孫・ひ孫(直系卑属)

根拠条文:(本法)民法第887条第1項(子の相続権) 根拠条文:(本法)民法第887条第2項・第3項(代襲相続・再代襲相続)

被相続人の子が相続人になります(第1項)。子が被相続人より先に亡くなっている場合等は、その子の子(孫)が代わって相続します(第2項:代襲相続)。孫も先に亡くなっている場合等はひ孫が相続します(第3項:再代襲相続)。

  • 養子縁組による養子も、実子と同様に第1順位の相続人
  • 認知された非嫡出子も第1順位の相続人(平成25年改正により相続分も嫡出子と同等
  • 胎児も生きて生まれた場合は相続人になる(民法第886条
  • 養子縁組前に生まれた養子の子は、養親の代襲相続人になれない(第887条第2項ただし書、大判昭7.5.11)

第2順位:直系尊属(親・祖父母等)

根拠条文:(本法)民法第889条第1項第1号

第1順位の相続人(子・孫等)が1人もいない場合に限り、被相続人の親・祖父母等が相続人になります。親と祖父母が両方存在する場合は、より近い親等(親)が優先します(同号ただし書)。

第3順位:兄弟姉妹・甥・姪

根拠条文:(本法)民法第889条第1項第2号(兄弟姉妹の相続権) 根拠条文:(本法)民法第889条第2項(兄弟姉妹の代襲相続:第887条第2項を準用)

第1順位・第2順位の相続人が1人もいない場合に限り、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合等は、その子(甥・姪)が代襲相続します(第889条第2項が第887条第2項を準用)。

ただし代襲は1代限り(甥・姪まで)であり、再代襲はありません。これは、第889条第2項が第887条第2項のみを準用し、再代襲を定める第3項を準用していないためです。甥・姪の子は代襲しません。

② 配偶者の相続権

法律上の配偶者は、血族相続人の順位にかかわらず、常に相続人になります。

根拠条文:(本法)民法第890条(配偶者の相続権)

状況配偶者の地位
子がいる場合子と同順位で相続(法定相続分:配偶者1/2・子1/2)
子はいないが親がいる場合親と同順位で相続(法定相続分:配偶者2/3・親1/3)
子も親もいないが兄弟姉妹がいる場合兄弟姉妹と同順位で相続(法定相続分:配偶者3/4・兄弟姉妹1/4)
血族相続人がいない場合配偶者がすべてを相続します(遺言がある場合などを除く)

内縁・事実婚の配偶者には相続権がありません(婚姻届を提出した法律上の配偶者のみが相続人となります)。ただし、被相続人の遺言による遺贈を受けることや、相続人不存在の場合の特別縁故者として家庭裁判所への財産分与申立てが認められる場合があります(民法第958条の2、詳細は⑥参照)。

配偶者居住権(平成30年(2018年)相続法改正で新設・2020年4月1日施行)

平成30年(2018年)相続法改正(2020年4月1日施行)により、配偶者居住権が新設されました(民法第1028条以下)。

根拠条文:(本法)民法第1028条(配偶者居住権)

配偶者居住権は、被相続人の所有していた建物に相続開始時に居住していた配偶者が、原則として終身、その建物を無償で使用・収益できる権利です。配偶者が建物の所有権を取得しなくても居住を継続できるため、遺産分割の選択肢が広がりました。

③ 法定相続分(取り分の目安)

法定相続分は各相続人の相続割合の目安です。協議で全員合意すれば異なる割合にできます。また、遺言がある場合は法定相続分と異なる分け方が指定されることがあります。

根拠条文:(本法)民法第900条(法定相続分)

主なパターン

相続人の組み合わせ法定相続分根拠
配偶者+子1人配偶者1/2・子1/2第900条第1号
配偶者+子3人配偶者1/2・子各1/6第900条第1号・第4号本文
配偶者+親2人配偶者2/3・親各1/6第900条第2号・第4号本文
配偶者+兄弟姉妹2人配偶者3/4・兄弟姉妹各1/8第900条第3号・第4号本文
子3人(配偶者なし)各1/3第900条第4号本文

嫡出子と非嫡出子の相続分(平成25年改正)

平成25年(2013年)改正前の民法第900条第4号ただし書前段では、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされていましたが、最大決平成25年(2013年)9月4日民集67巻6号1320頁により憲法第14条第1項違反と判断され、平成25年12月5日成立・同月11日公布・施行の改正法により当該規定が削除されました

→ 改正法は平成25年9月5日以後に開始した相続について適用されます。なお、最高裁の違憲判断により、平成13年7月1日以後に開始した相続についても、すでに遺産分割が終了しているなど確定的なものとなった法律関係を除き、嫡出子と非嫡出子の相続分は同等として扱われます。

半血兄弟姉妹の相続分(民法第900条第4号ただし書後半)

父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の相続分の2分の1になります(第900条第4号ただし書)。この規定は平成25年改正後も維持されています。

④ 代襲相続

相続人となるべき子・兄弟姉妹が先に亡くなっている場合等、その子(孫・甥姪)が代わって相続します。

根拠条文:(本法)民法第887条第2項(子の代襲相続) 根拠条文:(本法)民法第887条第3項(再代襲相続:直系卑属に限り) 根拠条文:(本法)民法第889条第2項(兄弟姉妹の代襲:第887条第2項のみ準用)

代襲相続の原因(3つに限定)

代襲相続が発生する原因は、第887条第2項に明記された以下の3つに限定されます。

  1. 相続開始以前に相続人が死亡している
  2. 相続人が欠格事由に該当した(第891条)
  3. 相続人が廃除された(第892条・第893条)

相続放棄は代襲相続の原因になりません。 相続を放棄した場合、その子は代襲相続人にはなれません(民法第939条による「最初から相続人とならなかった」ものとみなされる効果)。

代襲相続人の相続分

根拠条文:(本法)民法第901条第1項(代襲相続人の相続分)

代襲相続人は、被代襲者(亡くなった相続人)が受けるべきだった相続分をそのまま受け取ります。代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者の相続分を均等分割します。

例:子が3人いてそのうち1人が先に亡くなり、その子に孫が2人いる場合、亡くなった子の1/3の相続分を孫2人で1/6ずつ分けます(同条第2項により兄弟姉妹の代襲にも準用)。

⑤ 相続人の欠格・廃除

一定の行為をした相続人は、相続権を失います(欠格・廃除)。

相続欠格(民法第891条

根拠条文:(本法)民法第891条(相続人の欠格事由)

法律上当然に相続権を失う事由です。第891条は5つの号で構成されています。

欠格事由
第1号故意に被相続人または相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡させ、または死亡させようとしたために刑に処せられた者(殺人・殺人未遂・殺人予備を含む。過失致死・傷害致死は含まない:大判大11.9.25)
第2号被相続人が殺害されたことを知って、これを告発・告訴しなかった者。ただし、是非の弁別がない場合、殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族である場合は除く
第3号詐欺・強迫により被相続人の遺言の作成・撤回・取消し・変更を妨げた者
第4号詐欺・強迫により被相続人に遺言の作成・撤回・取消し・変更をさせた者
第5号相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者(不当な利益を目的とする場合に限る:最判平9.1.28)

欠格は法律上当然に相続権を失うとされており、家庭裁判所の審判等を要しません。ただし実務上は欠格事由の有無について争いが生じる場合があり、その場合は相続権不存在確認訴訟等で判断されます。

欠格者に直系卑属がいる場合は、その者が代襲相続人になります(第887条第2項本文・第889条第2項)。

推定相続人の廃除(民法第892条

根拠条文:(本法)民法第892条(推定相続人の廃除) 根拠条文:(本法)民法第893条(遺言による推定相続人の廃除)

被相続人が生前に家庭裁判所へ申立てを行い、相続人の相続権を剥奪する制度です。廃除は遺言によっても行うことができます(第893条)。

廃除事由は、(1)被相続人に対する虐待、(2)被相続人に対する重大な侮辱、(3)その他の著しい非行に限られ、その判断は家庭裁判所が行います

  • 廃除の対象:遺留分を有する推定相続人(兄弟姉妹は遺留分がないため廃除の対象外。兄弟姉妹を相続人から外すには遺言で対応する)
  • 廃除は、被相続人がいつでも家庭裁判所に取消しを請求でき、遺言で意思表示することもできる(民法第894条第1項・第2項
  • 欠格と異なり、家庭裁判所の審判が必要

⑥ 相続人不存在の場合

法定相続人が誰もいない場合、遺産は最終的に国庫に帰属します。

相続人が誰もいない・または全員が相続放棄した場合、遺産は「相続財産法人」として処理されます(民法第951条)。家庭裁判所による相続財産清算人の選任、相続人捜索の公告等の手続きを経て、被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)は家庭裁判所へ財産分与を申し立てることができます。

根拠条文:(本法)民法第958条の2(特別縁故者に対する相続財産の分与)

特別縁故者として認められうるのは、(1)被相続人と生計を同じくしていた者、(2)被相続人の療養看護に努めた者、(3)その他被相続人と特別の縁故があった者です。残余財産は最終的に国庫に帰属します(民法第959条)。

⑦ 相続人ではない親族の特別寄与料(平成30年(2018年)相続法改正で新設)

相続人ではない親族が被相続人の療養看護等を行った場合、相続人に対して金銭請求できる制度です。

根拠条文:(本法)民法第1050条(特別の寄与)

平成30年(2018年)相続法改正(2019年7月1日施行)により、特別寄与料の制度が新設されました。被相続人の親族(相続人・相続放棄をした者・相続欠格者・廃除された者を除く)が、無償で被相続人の療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をしたときは、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができます。

これは、相続人ではない親族(例:長男の妻等)が被相続人を介護していた場合に、相続発生時に何の金銭的評価も受けられないという従前の不公平を是正するために新設された制度です。

請求期限:特別寄与者が相続の開始および相続人を知ったときから6ヶ月を経過したとき、または相続開始のときから1年を経過したときは、家庭裁判所への協議に代わる処分の請求をすることができません(同条第2項)。

このテーマで使う条文一覧

このテーマは以下の条文で構成されています。

条文法令区分内容
(本法)第890条民法中核配偶者の相続権
(本法)第887条第1項民法中核子の相続権(第1順位)
(本法)第887条第2項民法中核子の代襲相続(孫)
(本法)第887条第3項民法中核再代襲相続(ひ孫以降)
(本法)第889条第1項民法中核直系尊属(第2順位)・兄弟姉妹(第3順位)の相続権
(本法)第889条第2項民法中核兄弟姉妹の代襲(第887条第2項のみ準用)
(本法)第900条民法中核法定相続分
(本法)第901条民法周辺代襲相続人の相続分
(本法)第891条民法周辺相続人の欠格事由(5号構成)
(本法)第892条民法周辺推定相続人の廃除
(本法)第958条の2民法周辺特別縁故者に対する相続財産の分与
(本法)第1028条民法周辺配偶者居住権(平成30年(2018年)相続法改正)
(本法)第1050条民法周辺特別の寄与(平成30年(2018年)相続法改正)

まとめ

  • 配偶者は常に相続人(婚姻届を提出した法律上の配偶者のみ)
  • 血族相続人は第1順位(子・孫)→第2順位(親等)→第3順位(兄弟姉妹)の順
  • 上位順位者が1人でもいれば下位順位者は相続人にならない
  • 法定相続分は配偶者+子:1/2ずつ配偶者+親:2/3・1/3配偶者+兄弟姉妹:3/4・1/4
  • 嫡出子と非嫡出子の相続分は平成25年改正により同等(最大決平成25年(2013年)9月4日を受けた改正)
  • 半血兄弟姉妹の相続分は全血兄弟姉妹の1/2(第900条第4号ただし書)
  • 相続人が先に死亡している場合等は代襲相続(孫・甥姪が代わって相続)
  • 相続放棄は代襲相続の原因にならない(死亡・欠格・廃除のみ)
  • 兄弟姉妹の代襲は1代限り(再代襲なし。第887条第3項は第889条第2項で準用されない)
  • 欠格(第891条・5号構成)・廃除(第892条)に該当する者は相続権を失う
  • 平成30年(2018年)相続法改正で配偶者居住権(第1028条)と特別寄与料(第1050条)が新設

相続人の範囲や法定相続分の計算に疑問がある場合は、個別事情により判断が変わるため、司法書士・弁護士への相談をおすすめします。

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