03-11 · 労働・雇用 · 要件系

中小受託取引適正化法(旧下請法)が適用されるケース|資本金区分・従業員基準・対象取引・委託事業者の義務

【重要:法律名の改正】「下請代金支払遅延等防止法」は、令和7年(2025年)5月16日成立・5月23日公布の改正法により、令和8年(2026年)1月1日から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称「中小受託取引適正化法」または「取適法」)として施行されました。あわせて、「親事業者」→「委託事業者」、「下請事業者」→「中小受託事業者」、「下請代金」→「製造委託等代金」と用語が改正されました。本改正では、従業員基準の追加・協議を適切に行わない代金額決定の禁止・手形払等の禁止・運送委託の対象取引への追加等の重要な変更があります。

重要:法律名の改正】「下請代金支払遅延等防止法」は、令和7年(2025年)5月16日成立・5月23日公布の改正法により、令和8年(2026年)1月1日から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称「中小受託取引適正化法」または「取適法」)として施行されました。あわせて、「親事業者」→「委託事業者」、「下請事業者」→「中小受託事業者」、「下請代金」→「製造委託等代金」と用語が改正されました。本改正では、従業員基準の追加・協議を適切に行わない代金額決定の禁止・手形払等の禁止・運送委託の対象取引への追加等の重要な変更があります。

取適法は、委託事業者と中小受託事業者の取引について、中小受託事業者の保護を目的とした法律です。資本金区分または従業員基準と取引内容によって適用の有無が決まり、適用される場合は委託事業者に書面交付・代金支払期限・禁止行為等の規律が課せられます。この記事では、取適法の適用要件・委託事業者の義務・違反のリスクを解説します。

カテゴリ:労働・雇用 / 種別:要件系
関連条文:(本法)製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)第2条・第4条・第5条・第6条・第10条・第11条/(本法)独占禁止法/(本法)特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)

こんな方へ

  • 自社の取引が取適法(旧下請法)の適用対象か確認したい
  • 委託事業者の義務(書面交付・支払期限・遅延利息)を整理したい
  • 委託事業者の禁止行為(11+1類型)を確認したい
  • 令和7年改正(取適法への変更)のポイントを把握したい
  • フリーランス保護法との関係を理解したい
  • 違反時の措置(勧告・公表・罰則)を知りたい

この記事でわかること

  • 取適法の正式名称と改正経緯(、令和8年1月1日施行)
  • 取適法と旧下請法の用語・規制の違い
  • 適用要件①:資本金区分(取適法第2条)
  • 適用要件②:従業員基準(令和7年改正で新設)
  • 取引4類型(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)
  • 委託事業者の4つの義務
  • 委託事業者の12類型の禁止行為(令和7年改正で「協議を適切に行わない代金額の決定の禁止」を新設)
  • 違反時の措置(勧告・公表・罰金)
  • フリーランス保護法・独占禁止法との関係

結論:取適法は「資本金区分または従業員基準」と「取引内容」の両方を満たす場合に適用される

適用要件内容
資本金区分または従業員基準委託事業者と中小受託事業者の資本金額または従業員数の組み合わせが法定の関係にあること(令和7年改正で従業員基準を新設
取引内容製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託のいずれか(令和7年改正で運送委託を追加
委託事業者の義務書面交付(第4条)・支払期日(第2条の2)・遅延利息(第6条)・書類保存(第5条)
禁止行為受領拒否・代金減額・返品・買いたたき・協議を適切に行わない代金額の決定(令和7年改正で新設)・手形払等(令和7年改正で新設)等(取適法第5条)

重要: 取適法は資本金区分または従業員基準と取引内容の両方を満たす場合にのみ適用されます。中小企業同士の取引や、製造委託等に該当しない取引には適用されません。ただし、取適法の適用がない場合でも、独占禁止法やフリーランス保護法特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、、令和6年11月1日施行)等が適用される可能性があります。実務では契約書の名称にかかわらず、実際の取引内容に基づいて適用の有無が判断されます。

本記事の主軸:取適法が「適用されるか」の判断。本記事は取適法の適用判断を中心とし、適用される場合の効果(書面交付・支払期限・主要禁止行為)の概要と、関連法令(独占禁止法・フリーランス保護法)との横断整理を扱います。個別の禁止行為や罰則の詳細運用は公正取引委員会・中小企業庁のガイドラインを参照してください。

今すぐやること

  1. 自社の取引が取適法の対象となる類型か確認する(製造・修理・情報成果物・役務・運送)
  2. 資本金区分または従業員基準を確認する令和7年改正で従業員基準が新設
  3. 委託事業者に該当する場合は書面交付・支払期日・禁止行為のチェック
  4. 令和8年(2026年)1月1日施行への移行対応(手形払の廃止、価格協議の記録化等)
  5. 必要に応じて公正取引委員会・中小企業庁・弁護士に相談する

判断フロー:取適法が適用されるか

この取引は取適法の適用対象か?

NOTE: 各 Step の詳細条件(取引類型の定義・資本金区分の境界値・従業員基準の数値)は下記「適用要件の詳細」表を参照してください。これまで下請法の対象外であった企業も、令和7年改正の従業員基準新設により取適法の適用対象となるケースが増えます。

適用要件の詳細

適用要件内容
取引類型(取適法第2条第1〜5項)製造委託(第1項)/修理委託(第2項)/情報成果物作成委託(第3項)/役務提供委託(第4項)/運送委託(令和7年改正で追加)
資本金区分①(製造・修理・特定情報成果物・特定役務)委託事業者 3億円超/中小受託 3億円以下、または 委託事業者 1千万円超3億円以下/中小受託 1千万円以下
資本金区分②(その他の情報成果物・役務)委託事業者 5千万円超/中小受託 5千万円以下、または 委託事業者 1千万円超5千万円以下/中小受託 1千万円以下
従業員基準(令和7年改正で新設)委託事業者 従業員300人超(役務提供委託等は100人超)/中小受託 それ以下

① 取適法と旧下請法の主な違い(による改正)

令和7年(2025年)5月23日公布・令和8年(2026年)1月1日施行の改正により、法律名・用語・適用基準・規制内容が大幅に見直されました。

名称・用語の変更

区分旧下請法取適法(現行)
法律名下請代金支払遅延等防止法製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称「中小受託取引適正化法」「取適法」)
法律番号による改正
規制対象親事業者委託事業者
保護対象下請事業者中小受託事業者
代金下請代金製造委託等代金

主な改正内容

改正点内容
従業員基準の追加従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設し、規制及び保護の対象を拡充
協議を適切に行わない代金額の決定の禁止価格協議に応じない・必要な説明をしない一方的な代金決定を新たに禁止(取適法第5条第2項第4号)
手形払等の禁止手形払を禁止。電子記録債権・ファクタリング等のうち、支払期日までに代金相当額の金銭と引換が困難なものも禁止
運送委託の対象取引への追加製造・販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を対象に追加
書面交付の電子化中小受託事業者の事前承諾なしで電磁的方法による提供が可能に
遅延利息の対象に減額を追加委託事業者が代金額を減じた場合も遅延利息(年率14.6%)の対象に(取適法第6条第2項)
執行強化違反行為が是正された場合でも再発防止勧告が可能に

② 適用される場合の効果(概要)

取適法が適用される取引では、委託事業者に書面交付・支払期限・記録保存等の義務が課せられます。本記事では概要のみを示します。

義務概要根拠条文
書面交付注文時に給付内容・支払期日等を記載した書面(令和7年改正で電磁的方法可)(本法)取適法第4条
支払期日給付の受領日から60日以内(本法)取適法第2条の2
遅延利息60日超過時に年14.6%(令和7年改正で代金減額も対象)(本法)取適法第6条
書類保存給付内容・代金等の記録を2年間保存(本法)取適法第5条

→ 各義務の運用詳細(書面の様式・支払期日の起算点の例外・遅延利息の計算方法等)は、公正取引委員会「下請取引適正化推進講習会テキスト」「下請法運用基準」を参照してください。

③ 委託事業者の禁止行為(取適法第5条)

取適法第5条は委託事業者に12類型の禁止行為を定めています。本記事では主要類型と令和7年改正の新設論点のみを示します。

主要禁止行為(実務上の頻出4類型)

禁止行為内容
代金の減額中小受託事業者の責に帰すべき事由なく代金を減額すること
代金の支払遅延受領日から60日以内に代金を支払わないこと
買いたたき通常の対価に比べ著しく低い代金を不当に定めること
不当な経済上の利益の提供要請協賛金・従業員派遣等の提供を不当に要請すること

令和7年改正で新設・強化された論点

改正点内容
協議を適切に行わない代金額の決定の禁止(新設)価格協議に応じない・必要な説明をしない一方的な代金決定(取適法第5条第2項第4号)
手形払等の禁止(新設)旧法では「割引困難な手形の交付」が禁止されていたが、令和7年改正により手形払自体が原則禁止
報復措置の対象拡大違反通報を理由とする取引停止等の禁止対象に、事業所管省庁への通報も追加

→ 12 類型の全リスト(受領拒否・返品・物の購入強制・有償支給原材料等の対価の早期決済・不当な給付内容の変更等)と各類型の運用基準は、公正取引委員会「下請法運用基準」および「下請取引適正化推進講習会テキスト」を参照してください。

④ 違反時の措置(取適法第10条以下)

措置内容根拠条文
公正取引委員会・中小企業庁の調査立入検査・報告徴収等(本法)取適法第9条
勧告・公表違反企業名・違反事実の公表(令和7年改正で違反行為が是正された場合でも再発防止勧告が可能(本法)取適法第10条
罰則書面交付義務違反等に50万円以下の罰金(本法)取適法第11条
両罰規定法人の代表者・従業員等が違反行為をした場合、行為者と法人の双方に罰金(本法)取適法第12条

→ 実務上は勧告・公表が中心で、罰則が適用されるケースは限定的です。ただし、令和7年改正で再発防止勧告が可能になったため、一度違反行為を行った委託事業者は是正を行ったとしても勧告の対象となるリスクがあります。

⑤ 関連法令との関係

独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)

根拠法:(本法)独占禁止法

→ 取適法は独占禁止法の特別法。優越的地位の濫用(独禁法第2条第9項第5号)に該当する行為のうち、特定の委託取引について取適法が個別の禁止行為を具体化しています。取適法の対象外でも、独占禁止法の優越的地位濫用規制は適用される可能性があります。

フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)

根拠法:(本法)特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(、令和6年11月1日施行

比較項目取適法フリーランス保護法
法律番号による改正
施行令和8年1月1日令和6年11月1日
適用基準資本金区分または従業員基準資本金要件なし(従業員を使用する全ての発注事業者)
適用対象法人を含む中小受託事業者フリーランス(特定受託事業者
主な規制書面交付・支払期日・禁止行為(12類型)取引条件の明示・60日以内支払・育児介護等への配慮・ハラスメント対策・中途解除30日前予告

重要: 中小受託事業者がフリーランス(特定受託事業者)にも該当する場合に、取適法とフリーランス保護法のいずれにも違反する行為が委託事業者から行われた場合は、原則としてフリーランス保護法が優先適用されます。

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
(本法)第2条取適法中核定義(取引類型・資本金区分・従業員基準)
(本法)第2条の2取適法中核代金支払期日(受領日から60日以内)
(本法)第4条取適法中核書面交付義務(電磁的方法可能)
(本法)第5条取適法中核委託事業者の禁止行為(12類型・令和7年改正で「協議を適切に行わない代金額の決定」追加)
(本法)第5条(書類保存)取適法中核書類作成・保存義務(2年間)
(本法)第6条取適法中核遅延利息(年14.6%・令和7年改正で減額の場合も対象)
(本法)第10条取適法中核公正取引委員会の勧告・公表
(本法)第11条取適法中核罰則(50万円以下の罰金)
(本法)第12条取適法周辺両罰規定
(本法)独占禁止法独占禁止法周辺優越的地位の濫用規制
(本法)特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律フリーランス保護法周辺フリーランスとの取引適正化(、令和6年11月1日施行)

まとめ

  • 令和7年(2025年)改正(、令和8年1月1日施行)により、「下請代金支払遅延等防止法」は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称「中小受託取引適正化法」または「取適法」)に名称変更されました
  • 用語:「親事業者」→「委託事業者」、「下請事業者」→「中小受託事業者」、「下請代金」→「製造委託等代金」
  • 取適法は資本金区分または従業員基準(令和7年改正で新設)と取引内容の両方を満たす場合に適用されます
  • 取引類型は製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・運送委託(令和7年改正で運送委託を追加)の5種類
  • 委託事業者には書面交付(電磁的方法可能)・支払期限60日以内・遅延利息(年14.6%)・書類保存(2年間)等の義務があります
  • 委託事業者の12類型の禁止行為(受領拒否・代金減額・買いたたき・協議を適切に行わない代金額の決定(令和7年改正で新設)・手形払等の禁止(令和7年改正で新設)等)が定められています
  • 違反時は勧告・公表・50万円以下の罰金(取適法第11条)・両罰規定(同第12条)の対象となります
  • 取適法の適用がない場合でも、独占禁止法フリーランス保護法(、令和6年11月1日施行)が適用される可能性があります
  • 中小受託事業者がフリーランスにも該当する場合は、原則としてフリーランス保護法が優先適用されます
  • 適用関係は個別取引で複雑なため、弁護士・公正取引委員会・中小企業庁での確認を推奨します

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