解雇は、使用者が一方的に労働契約を終了させる行為です。労働契約法第16条は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方を欠く解雇を無効と定めています(解雇権濫用法理:最判昭和50年(1975年)4月25日日本食塩製造事件で確立した判例法理を、平成15年(2003年)労働基準法改正で第18条の2として明文化、平成19年(2007年)労働契約法制定により同法第16条に移転)。また、労働基準法は特定の状況での解雇を禁止し(第19条)、解雇予告の義務(第20条)を定めています。この記事では、解雇が有効と判断されるための要件・無効と判断される場合・対処の手順を条文とともに解説します。
カテゴリ:労働・雇用 / 種別:要件系
関連条文:(本法)労働契約法第15条・第16条・第17条第1項・第19条/労働基準法第3条・第19条第1項・第2項・第20条第1項・第2項・第3項・第21条・第22条第1項・第2項・第104条第1項・第2項/民法第627条第1項/男女雇用機会均等法第6条第4号・第9条第3項/育児介護休業法第10条・第16条/労働組合法第7条第1号
こんな方へ
- 突然解雇を告げられ、不当解雇ではないか確認したい
- 解雇が有効とされるための要件を知りたい
- 整理解雇・普通解雇・懲戒解雇の違いを整理したい
- 解雇予告なしに即日解雇されたが適法か確認したい
- 解雇に異議を申し立てる手順を知りたい
- 有期雇用契約と無期雇用契約の解雇の違いを知りたい
この記事でわかること
- 解雇が有効とされるための要件(労働契約法第16条・解雇権濫用法理)
- 解雇権濫用法理の確立判例(最判昭和50年(1975年)4月25日 日本食塩製造事件)
- 絶対に解雇できない期間・状況(労基法第19条第1項・第2項)
- 解雇予告の義務(労基法第20条第1項~第3項)と適用除外(労基法第21条)
- 整理解雇の4要素(東京高判昭和54年(1979年)10月29日 東洋酸素事件)
- 普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の違い
- 懲戒権濫用法理(労働契約法第15条)
- 有期雇用契約の解雇制限(労働契約法第17条第1項)
- 不当解雇と考えられる場合の対処手順
結論:解雇は「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方が必要(労働契約法第16条)
解雇が有効と認められるためには、以下の2つの要件を満たすことが必要とされています。
根拠条文:(本法)労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 客観的合理的な理由 | 解雇に足る客観的・合理的な事由が存在すること(能力不足・規律違反・経営上の必要性等) |
| 社会通念上の相当性 | 解雇という手段が社会通念に照らして相当であること(解雇回避努力の有無・他の手段で対処できる場合は解雇が相当でないと評価される可能性があります) |
この2要件のいずれかを欠く解雇は「解雇権の濫用」として無効と判断されます。
解雇権濫用法理の確立判例
最判昭和50年(1975年)4月25日 日本食塩製造事件:
使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になるものと解するのが相当である。
→ 労働契約法第16条は、この最判昭和50年(1975年)4月25日 日本食塩製造事件で確立された判例法理を、平成15年(2003年)労働基準法改正で第18条の2として明文化し、平成19年(2007年)労働契約法制定(2008年3月1日施行)により同法第16条に移転したもの。現行の労基法第18条の2は削除されているため、解雇権濫用法理の根拠条文は労働契約法第16条のみ。
今すぐやること
- 解雇通知書・解雇理由証明書を受け取る(労基法第22条第2項により、使用者は遅滞なく交付する義務)
- 解雇理由と自分の状況を照らし合わせる(下記「判断フロー」参照)
- 証拠を保全する(雇用契約書・就業規則・業務記録・メール・給与明細等)
- 解雇後の賃金請求等には時効(原則5年・当面の間は3年)があるため、早期に対処を検討する(労働基準法第115条)
- 労働基準監督署・労働局・弁護士等に相談する
判断フロー①:この解雇は有効か
解雇に「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」はあるか?
有効と判断される可能性がある
- 重大な規律違反・犯罪行為等があり、警告・処分を経てもなお継続している客観的合理的な理由があると評価される可能性があります
- 業務上の能力不足が客観的に明らかで、改善指導・配置転換等を尽くしてもなお改善がない同上
- 整理解雇の4要素(後述)を満たす経営上の必要性がある整理解雇として有効と評価される可能性があります
無効と判断される可能性がある
- 解雇理由が曖昧・抽象的で、客観的な事実の裏付けがない客観的合理的な理由を欠くと評価される可能性があります
- 一度の軽微な違反・ミスを理由とした解雇社会通念上の相当性を欠くと評価される可能性があります
- 改善の機会・警告等なしに突然解雇された相当性を欠くと評価される可能性があります
NOTE: 解雇の有効性の判断は個別の事実関係に依存し、裁判所・労働審判等での判断が必要になる場合があります。「有効そう」「無効そう」に見えても最終的な判断は事案ごとに異なります。
判断フロー②:解雇禁止期間・特別保護に該当するか
以下の保護に該当するか?
解雇が法律上禁止される場合
- 業務上の負傷・疾病による療養期間中およびその後30日間解雇制限(労基法第19条第1項本文)
- 産前産後休業期間中およびその後30日間解雇制限(労基法第19条第1項本文)
解雇が無効と評価される可能性が高い場合
- 育児・介護休業の取得を理由とした解雇不利益取扱いの禁止([育児介護休業法第10条](/law/403AC0000000076/#article-10)・[第16条](/law/403AC0000000076/#article-16))に違反
- 労基法違反を労働基準監督署に申告したことを理由とした解雇不利益取扱いの禁止([労基法第104条第2項](/law/322AC0000000049/#article-104))に違反
- 性別・婚姻・妊娠等を理由とした解雇[男女雇用機会均等法第6条第4号](/law/347AC0000000113/#article-6)・[第9条第3項](/law/347AC0000000113/#article-9)に違反
- 国籍・信条・社会的身分を理由とした解雇[労基法第3条](/law/322AC0000000049/#article-3)に違反
- 労働組合の正当な行為等を理由とした解雇不当労働行為([労働組合法第7条第1号](/law/324AC0000000174/#article-7))に該当
NOTE: 上記法律に違反する解雇は「客観的合理的な理由」を欠くと評価され、労働契約法第16条により無効と判断される可能性が高い。
① 解雇の3つの類型
→ 解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3つの類型があり、それぞれ必要とされる要件が異なります。
民法第627条第1項は使用者の解雇の自由を定めていますが、労働者保護のため、労働契約法第16条による制約が課されています。
根拠条文:(本法)民法第627条第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
普通解雇
能力不足・勤務態度の問題・健康上の理由等を理由とする通常の解雇です。労働契約法第16条による客観的合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされます。
裁判例上、以下の点が重視される傾向があります:
- 事前の指導・警告を行っていたか
- 改善の機会を与えていたか
- 配置転換等の代替手段を検討したか
- 解雇理由が客観的資料による裏付けを伴う形で証明できるか
整理解雇(リストラ)
経営上の理由による人員削減を目的とした解雇です。裁判例上、以下の4要素が確立しています(東京高判昭和54年(1979年)10月29日 東洋酸素事件で確立した「整理解雇の4要素」):
- 人員削減の必要性:経営上、人員削減を行わなければならない客観的な必要性があること
- 解雇回避努力:役員報酬の削減・希望退職者の募集・配置転換等の解雇を回避するための努力を尽くしていること
- 被解雇者選定の合理性:解雇する対象者の選定基準が客観的・合理的であること
- 手続の相当性:労働者・組合への説明・協議等の手続きを踏んでいること
これらは「4要件」と呼ばれることもありますが、現在の裁判例では4要素を総合的に考慮して判断する立場が一般的です(一つを欠いても直ちに無効ではなく、各要素の充足度を総合考慮)。
懲戒解雇
就業規則に定める懲戒事由(横領・重大な規律違反・犯罪行為等)を理由とする解雇です。最も重い懲戒処分であり、労働契約法第15条(懲戒権濫用法理)による制約があります。
根拠条文:(本法)労働契約法第15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
→ 懲戒解雇には、(1)就業規則に懲戒解雇の根拠規定があること、(2)労働契約法第15条の客観的合理的な理由・社会通念上の相当性、(3)労働契約法第16条の解雇権濫用法理のすべてが必要。普通解雇よりも一段ハードルが高い。
懲戒解雇は、退職金の不支給・減額と連動している場合があります。就業規則の規定内容によって異なるため確認が必要です。懲戒解雇が無効と判断された場合は、通常の解雇として扱われる可能性があり、退職金の扱いも改めて問題となることがあります。
試用期間中の解雇
試用期間中の解雇についても留保解約権の濫用として制限されます(最大判昭和48年(1973年)12月12日 三菱樹脂事件)。試用期間中だからといって自由に解雇できるわけではなく、客観的合理的な理由・社会通念上の相当性が必要とされる点に注意。
② 解雇制限(労働基準法第19条)
→ 労働基準法は、特定の期間・状況での解雇を明確に制限しています。
根拠条文:(本法)労働基準法第19条第1項(解雇制限)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
根拠条文:(本法)労働基準法第19条第2項
前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
解雇が制限される期間(第19条第1項本文)
| 状況 | 制限期間 |
|---|---|
| 業務上の負傷・疾病による療養期間中 | 療養期間中+その後30日間 |
| 産前産後休業(産前6週・産後8週)期間中 | 休業期間中+その後30日間 |
例外(第19条第1項ただし書)
| 例外事由 | 認定 |
|---|---|
| 打切補償(療養開始後3年経過後に平均賃金の1,200日分を支払う:労基法第81条) | 不要 |
| 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合 | 労働基準監督署長の認定(労基法第19条第2項) |
解雇制限に違反した場合
解雇制限期間中の解雇は無効となります。また、労基法違反として刑事責任が問題となる可能性があります(労基法第119条第1号:6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)。
③ 解雇予告の義務(労働基準法第20条)と適用除外(第21条)
→ 解雇する場合は、原則として30日前までに予告するか、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払うことが必要とされます。
解雇予告のルール(第20条)
根拠条文:(本法)労働基準法第20条第1項(解雇の予告)
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
根拠条文:(本法)労働基準法第20条第2項
前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
根拠条文:(本法)労働基準法第20条第3項
前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 予告 | 少なくとも30日前に予告する(労基法第20条第1項本文) |
| 手当 | 予告しない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う(労基法第20条第1項本文) |
| 組み合わせ | 予告日数が30日未満の場合は不足日数分の平均賃金を支払う(労基法第20条第2項) |
例: 解雇の20日前に告知された場合 → 残り10日分の解雇予告手当が必要。
解雇予告手当の支払い時期(最判昭和35年(1960年)3月11日)
最判昭和35年(1960年)3月11日:解雇予告手当は、解雇通告と同時または事前に支払うべき。事後の支払いは認められない。
解雇予告の例外(第20条第1項ただし書)
以下の場合は解雇予告・予告手当が不要(労働基準監督署長の認定が必要:労基法第20条第3項により第19条第2項を準用):
- 天災事変等のやむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合
- 労働者の責めに帰すべき事由による解雇
解雇予告の適用除外(労働基準法第21条)
根拠条文:(本法)労働基準法第21条
前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
| 号 | 適用除外の対象 | 例外(解雇予告の適用あり) |
|---|---|---|
| 第1号 | 日々雇い入れられる者 | 1か月を超えて引き続き使用された場合 |
| 第2号 | 2か月以内の期間を定めて使用される者 | その期間を超えて引き続き使用された場合 |
| 第3号 | 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者 | その期間を超えて引き続き使用された場合 |
| 第4号 | 試用期間中の者 | 14日を超えて引き続き使用された場合 |
→ 第20条ただし書(天災等・労働者の責めに帰すべき事由)と第21条(試用期間中等)は別の規定である点に注意:第20条ただし書は予告義務そのものを免除する規定だが、第21条は予告義務の適用対象外となる労働者を限定列挙するもの。
注意: 「解雇予告をした(または手当を支払った)」ことと「解雇が有効(合理的理由・相当性あり)」であることは別の問題。予告手当を払っても、解雇自体が無効と判断される場合があります。
④ 解雇理由証明書の請求(労働基準法第22条第2項)
→ 解雇予告から退職日までの間に、使用者に解雇理由を明記した証明書の交付を求めることができます。
根拠条文:(本法)労働基準法第22条第2項(退職時等の証明)
労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
根拠条文:(本法)労働基準法第22条第3項
前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
→ 労働者が解雇理由の証明書交付を求めた場合、使用者は遅滞なく交付しなければなりません(労基法第22条第2項)。解雇理由が曖昧な場合や、後から理由が変わった場合に対応するための重要な証拠となります。
⑤ 有期雇用契約の解雇制限(労働契約法第17条第1項)
→ 有期雇用契約の解雇は、無期雇用契約より厳格に制限されます。
根拠条文:(本法)労働契約法第17条第1項
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
→ 無期雇用契約は労働契約法第16条による「客観的合理的な理由・社会通念上の相当性」が必要だが、有期雇用契約はより厳格な「やむを得ない事由」が必要。
雇止め制限(労働契約法第19条)
根拠条文:(本法)労働契約法第19条(有期労働契約の更新等)
→ 有期雇用契約の更新拒絶(雇止め)も、(1)反復更新の実態、(2)更新への合理的期待がある場合は、解雇権濫用法理が類推適用される(過去の判例法理を成文化したもの)。
⑥ 不当解雇と考えられる場合の対処手順
→ 解雇が無効と考えられる場合、複数の手段で対処できます。
Step 1:証拠の保全
- 解雇通知書・解雇理由証明書(労基法第22条第2項により請求可能)
- 雇用契約書・就業規則
- 業務記録・メール・チャット履歴
- 給与明細・タイムカード
- 指導・警告を受けた記録(またはその不存在の記録)
Step 2:相談窓口の活用
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 労働基準監督署 | 解雇予告違反等の労基法違反の申告(労基法第104条第1項に基づく行政指導ルート) |
| 都道府県労働局(総合労働相談コーナー) | 労働問題全般の相談・あっせん申請 |
| 労働審判(裁判所) | 迅速な解決(原則3回以内の審理)が可能な手続き(労働審判法) |
| 民事訴訟 | 地位確認・未払い賃金・損害賠償の請求 |
| 弁護士・社会保険労務士 | 個別事案の法的評価・交渉・代理 |
行政ルートと民事ルートの区別: 労働基準監督署への申告(労基法第104条第1項)は行政指導につながりますが、個別の解雇の有効・無効の判断や賃金回収は行政では行えません。復職・未払い賃金の請求は労働審判・民事訴訟(民事ルート)によることになります。
Step 3:内容証明郵便による撤回請求(民法第150条第1項)
内容証明郵便で解雇撤回を請求する効果:
- 時効の完成猶予(民法第150条第1項:催告の時から6か月)
- 6か月以内に裁判上の請求等を行わなければ完成猶予の効果は失われる
→ 平成29年(2017年)民法(債権関係)改正(2020年4月1日施行)により、「時効中断」は廃止され「完成猶予」「更新」に変更された点に注意。
時効
不当解雇を理由とする賃金・損害賠償の請求権には時効があります。
| 請求の種類 | 時効 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 未払い賃金(解雇後の賃金相当額) | 3年(当面の間。最終的には5年) | (本法)労働基準法第115条・附則第143条第3項 |
| 損害賠償(不法行為) | 損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年 | (本法)民法第724条 |
このテーマで使う条文一覧
| 条文 | 法令 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|---|
| (本法)第15条 | 労働契約法 | 中核 | 懲戒権濫用法理(懲戒の客観的合理的理由・社会通念上の相当性) |
| (本法)第16条 | 労働契約法 | 中核 | 解雇権濫用法理(解雇の客観的合理的理由・社会通念上の相当性) |
| (本法)第17条第1項 | 労働契約法 | 中核 | 有期雇用契約の解雇制限(やむを得ない事由が必要) |
| (本法)第19条 | 労働契約法 | 周辺 | 有期雇用契約の更新拒絶(雇止め)の制限 |
| (本法)第3条 | 労働基準法 | 周辺 | 国籍・信条・社会的身分による差別的取扱いの禁止 |
| (本法)第19条第1項 | 労働基準法 | 中核 | 解雇制限(療養期間中・産前産後休業期間中とその後30日間) |
| (本法)第19条第2項 | 労働基準法 | 中核 | 天災等の事由について労働基準監督署長の認定 |
| (本法)第20条第1項 | 労働基準法 | 中核 | 解雇予告の義務(30日前予告または30日分以上の予告手当)・ただし書(天災等・労働者の責めに帰すべき事由) |
| (本法)第20条第2項 | 労働基準法 | 中核 | 予告日数の短縮(手当との組み合わせ) |
| (本法)第20条第3項 | 労働基準法 | 中核 | 第19条第2項の準用(労働基準監督署長の認定) |
| (本法)第21条 | 労働基準法 | 中核 | 解雇予告の適用除外(4号構成:日々雇入・2か月以内・季節的業務・試用期間中14日以内) |
| (本法)第22条第1項 | 労働基準法 | 周辺 | 退職時の証明書 |
| (本法)第22条第2項 | 労働基準法 | 中核 | 解雇理由証明書(解雇予告日から退職日までの間に請求された場合の交付義務) |
| (本法)第104条第1項 | 労働基準法 | 周辺 | 労働基準監督署への申告権 |
| (本法)第104条第2項 | 労働基準法 | 周辺 | 申告を理由とする不利益取扱いの禁止 |
| (本法)第627条第1項 | 民法 | 周辺 | 雇用の解約申入れ(一般法・労働契約法第16条による制約あり) |
| (本法)第6条第4号 | 男女雇用機会均等法 | 周辺 | 性別を理由とする差別的取扱いの禁止 |
| (本法)第9条第3項 | 男女雇用機会均等法 | 周辺 | 婚姻・妊娠・出産等を理由とする解雇等の禁止 |
| (本法)第10条 | 育児介護休業法 | 周辺 | 育児休業の取得を理由とする不利益取扱いの禁止 |
| (本法)第16条 | 育児介護休業法 | 周辺 | 介護休業の取得を理由とする不利益取扱いの禁止 |
| (本法)第7条第1号 | 労働組合法 | 周辺 | 労働組合の正当な行為等を理由とする不利益取扱い(不当労働行為)の禁止 |
まとめ
- 解雇権濫用法理:解雇は「客観的合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方が必要(労働契約法第16条)
- 確立判例:最判昭和50年(1975年)4月25日 日本食塩製造事件で確立した法理を、平成15年(2003年)労働基準法改正で第18条の2として明文化、平成19年(2007年)労働契約法制定により同法第16条に移転。現行の労基法第18条の2は削除されている
- 解雇類型は普通解雇・整理解雇・懲戒解雇に大別され、それぞれ必要とされる要件が異なります
- 整理解雇の4要素(東京高判昭和54年(1979年)10月29日 東洋酸素事件):(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避努力、(3)被解雇者選定の合理性、(4)手続の相当性
- 懲戒解雇は労働契約法第15条の懲戒権濫用法理+労働契約法第16条の解雇権濫用法理の両方の制約があり、普通解雇よりハードルが高い
- 試用期間中の解雇も留保解約権の濫用として制限される(最大判昭和48年(1973年)12月12日 三菱樹脂事件)
- 解雇制限(労基法第19条第1項):療養期間中・産前産後休業期間中とその後30日間の解雇禁止
- 例外(労基法第19条第1項ただし書・第2項):打切補償・天災等で事業継続不能(後者は労働基準監督署長の認定が必要)
- 解雇予告(労基法第20条第1項):30日前の予告または30日分以上の予告手当。予告手当は解雇通告と同時または事前に支払う必要(最判昭和35年(1960年)3月11日)
- 解雇予告の適用除外(労基法第21条):日々雇入・2か月以内・季節的業務・試用期間中14日以内
- 解雇理由証明書の交付義務(労基法第22条第2項)
- 有期雇用契約の解雇制限(労働契約法第17条第1項):「やむを得ない事由」が必要(無期雇用契約より厳格)
- 雇止め制限(労働契約法第19条):反復更新等で更新への合理的期待がある場合の保護
- 差別的取扱いを理由とする解雇は無効:労基法第3条(国籍・信条・社会的身分)、男女雇用機会均等法第6条第4号・第9条第3項、育児介護休業法第10条・第16条、労働組合法第7条第1号
- 対処:行政ルート(労基法第104条第1項による申告)と民事ルート(労働審判・訴訟)を区別して活用
- 内容証明郵便(催告)の効果:催告の時から6か月の完成猶予(民法第150条第1項。平成29年(2017年)民法改正で「時効中断」は廃止)
解雇の有効性の判断は個別の事実関係により大きく異なるため、弁護士・社会保険労務士への相談をおすすめします。