01-08 · 入門・リテラシー · 手続系

改正法令の調べ方|現行条文・旧法・施行日・経過措置の確認手順

改正法令の調べ方は、現行法令・改正履歴・附則を順番に辿る作業です。改正の3類型と束ね法の仕組みを理解した上で、e-Gov法令検索・官報・JapanCodexを使い分けます。

法律は頻繁に改正されます。「現在どの条文が適用されているか」「特定の時点でどんな内容だったか」を正確に確認するには、現行法令・改正履歴・附則を順番に辿る必要があります。改正には一部改正・全部改正・廃止と新規制定の3類型があり、複数の法律を一括で改正する「束ね法(一括改正法)」もあります。この記事では、e-Gov法令検索・官報・JapanCodexを使った改正法令の調べ方を手順とともに解説します。

カテゴリ:入門・リテラシー / 種別:手続系
関連条文:(本法)日本国憲法第7条第1号/(本法)法の適用に関する通則法第2条

こんな方へ

  • 法律が改正されたと聞いたが、現在の条文を確認したい
  • ある時点でどの条文が有効だったかを調べたい
  • 「○○法の一部を改正する法律」という法令の読み方がわからない
  • 「束ね法(一括改正法)」の意味を知りたい
  • 施行日・経過措置を附則で確認したい
  • JapanCodexで改正履歴を辿りたい
  • 「なお従前の例による」「みなして」等の経過措置表現を整理したい

この記事でわかること

  • 改正の3類型(一部改正・全部改正・廃止と新規制定)の違い
  • 「束ね法(一括改正法)」とは何か
  • 現行法令(最新版)の確認方法
  • 改正前の条文を確認する方法
  • 「○○法の一部を改正する法律」の読み方
  • 附則で施行日・経過措置を確認する手順
  • 経過措置の典型表現(「なお従前の例による」「みなして」等)の整理
  • e-Gov法令検索・官報・JapanCodexの使い分け
  • 主要な近年改正の実例(民法・刑法・下請法→取適法・育児介護休業法等)

結論:改正法令の調査は「現行版の確認→附則の確認→必要なら改正前版の確認」の順で進める

目的確認する内容主なツール
現在の条文を確認したい現行法令(最新版)e-Gov法令検索・JapanCodex
いつから新しいルールが適用されるか附則の施行期日同上
経過措置の内容を確認したい附則の経過措置規定同上
特定時点の条文を確認したい改正前の条文・改正履歴e-Gov(改正履歴・全ての時点検索)・官報
改正の内容・理由を確認したい改正法律本文・立法資料官報・国会審議録

今すぐやること

  1. まず法令名・法令番号を確認する(法令番号の読み方を参照)
  2. e-Gov法令検索またはJapanCodexで現行版を確認する
  3. 附則の「施行期日」を確認する(施行日と公布日の違いを参照)
  4. 経過措置が必要な場合は附則の経過措置規定を確認する
  5. 改正法律が「束ね法」の場合は対象となる複数の法律を確認する

判断フロー①:何を調べたいか

何を確認したいか?

現在のルールを確認したい

  • 今この法律で何が定められているかe-Gov法令検索またはJapanCodexで現行版を確認する
  • 改正後の新しいルールはいつから適用されるか附則の施行期日を確認する
  • 自分の案件に旧法・新法どちらが適用されるか施行日と案件の発生日を照合する

過去の時点のルールを確認したい

  • 過去に行われた行為・契約に適用される条文を確認したい改正前の条文(旧法)を確認する
  • 改正の経緯・変遷を把握したいe-Govの改正履歴・官報で改正法律を確認する

※補足:法律の適用は「施行日」を基準に判断する。施行日より前の行為・契約には原則として旧法が適用されるが、経過措置の内容や規定の性質によっては新法が適用される場合もある。経過措置がある場合は必ず内容を確認すること。

判断フロー②:どのツールを使うか

どのツールが適切か?

現行法令の条文を確認したい

  • 最新の条文テキストを確認e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)またはJapanCodex
  • 条文から関連法令を横断して辿りたいJapanCodex(条文リンクで横断検索できる)

改正の内容・経緯を確認したい

  • 改正法律の原文(「○○法の一部を改正する法律」)を見たい官報または国立印刷局の官報検索サービス
  • 改正の審議経緯・立法趣旨を確認したい国会審議録(衆議院・参議院のウェブサイト)

※補足:e-Gov法令検索は現行法令の最新版が基本だが、過去時点の検索機能も提供されている。重要な案件で特定時点の条文が必要な場合は、専門家への相談もあわせて検討するとよい。

① 改正の3類型

法律の改正には「一部改正・全部改正・廃止と新規制定」の3類型があります。

1. 一部改正

最も一般的な改正類型。元の法律はそのまま存続し、改正法律が「条文を書き換える」指示を出します。

例:「民法等の一部を改正する法律」
  → 民法はそのまま存続
  → 改正法律が民法の条文を書き換える指示を出す
  → 施行されると、元の法律の条文が書き換えられた状態になる

2. 全部改正

法律全体を新しく書き換える改正。元の法律の番号・題名は維持されることが多い。

例:行政事件訴訟法の全部改正
  → 元の法律の番号は維持されるが、内容が抜本的に変更される

3. 廃止と新規制定

旧法を廃止し、新しい法律を制定する。新法には新しい法令番号が付与される。

例:「法例」→ 「法の適用に関する通則法」
  → 旧法(法例)は廃止
  → 新法(通則法)として平成19年1月1日施行
  → 法令番号も新規

例:「下請代金支払遅延等防止法」
  → による改正で「中小受託取引適正化法」(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)に改題
  → 法律番号は維持しつつ題名と用語を変更(一部改正に近いが大幅な刷新)

② 「束ね法(一括改正法)」とは

複数の法律を一つの改正法律で同時に改正することを「束ね法」または「一括改正法」といいます。

近年、関連する複数の法律を一括で改正する「束ね法」が多用されるようになっています。1本の改正法律で複数の元法律の条文を書き換えるため、改正履歴を辿る際は改正対象となる法律ごとに個別に確認する必要があります。

主な束ね法の実例

改正法律主な改正対象施行日
「民法等の一部を改正する法律」民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法(新法)・関連法段階施行(令和5年4月1日・令和6年4月1日等)
「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」民法(相続法)・家事事件手続法段階施行(令和元年7月1日・令和2年7月10日等)
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」労働基準法・労働安全衛生法・労働者派遣法等段階施行(平成31年4月1日等)

→ 束ね法を読む際は、附則で「対象となる法律ごとの施行日と経過措置」を個別に確認することが重要。

③ 現行法令の確認方法

現在施行中の最新条文はe-Gov法令検索またはJapanCodexで確認します。

e-Gov法令検索の使い方

e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)は、国(デジタル庁)が提供する法令データベースです。憲法・法律・政令・勅令・府令・省令・規則の現行条文と、未施行法令・廃止法令の一覧を提供しています。

手順:

  1. 法令名または法令番号で検索する
  2. 検索結果から該当法令を選択する
  3. 条文一覧から目的の条文を確認する
  4. 「改正情報」または改正履歴で改正の経緯を確認する

注意点:

  • 表示される内容は「現在施行中の最新版」が基本
  • 公布されたが施行前の法律は「未施行法令」として別途確認できる
  • 政令指定による施行日の法令は、政令が出るまで施行日が未確定の場合がある
  • 2024年7月のリニューアル後、新ドメイン laws.e-gov.go.jp が正規のURLとなっている

JapanCodexでの確認

JapanCodexでは、法令名・法令番号・条文の内容から横断的に検索できます。条文リンクで法律→政令→省令を辿ることができ、委任立法の連鎖を一体的に確認できます。

条文リンクの形式:

/law/{LawId}/#article-N

主要法令のlaw_id:

法令名law_id
民法129AC0000000089
刑法140AC0000000045
労働基準法322AC0000000049
国家行政組織法323AC0000000120
建設業法324AC0000000100
法の適用に関する通則法418AC0000000078
内閣府設置法411AC0000000089
地方自治法322AC0000000067
日本国憲法321CONSTITUTION(特殊形式)

④ 「○○法の一部を改正する法律」の読み方

改正法律は元の法律とは別の法令番号を持ちます。改正法律の附則で施行日を確認します。

法律が改正される際、「○○法の一部を改正する法律」という形の法律が制定・公布されます。この改正法律自体にも法令番号が付与されます。

例:「民法等の一部を改正する法律」
  → 元の法律(民法 )はそのまま存続
  → 改正法律が「元の法律の条文を書き換える」指示を出す
  → 改正が施行されると、元の法律の条文が書き換えられた状態になる

改正法律の構造:

  • 本則:元の法律のどの条文を、どう書き換えるかを定める
  • 附則:施行期日・経過措置・関連法律の改正等を定める

重要: 改正法律の本則を読んでも、改正後の条文全体はわかりません。改正後の完全な条文はe-GovやJapanCodexの現行版で確認します。

主要な近年改正の実例

改正法律改正対象施行日
民法(債権法)改正:民法(債権関係)令和2年4月1日
民法(相続法)改正:民法(相続関係)・家事事件手続法段階施行(令和元年7月1日・令和2年7月10日等)
民法(成年年齢)改正:民法・関連法令和4年4月1日
改正民法(所有者不明土地):民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法段階施行(令和5年4月1日・令和6年4月1日等)
改正下請法→取適法:旧下請法→中小受託取引適正化法令和8年1月1日
改正刑法(拘禁刑一本化):刑法令和7年6月1日
改正育児・介護休業法:育児・介護休業法3段階施行(令和4年4月1日・令和4年10月1日・令和5年4月1日)

⑤ 附則で施行日・経過措置を確認する

改正法律の附則には、施行日・経過措置・段階施行が定められています。条文単体ではなく附則とあわせて一体として確認することが、改正の影響を正確に判断するうえで重要です。

根拠条文:(本法)法の適用に関する通則法第2条(施行日の原則)

法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、法律でこれと異なる施行期日を定めたときは、その定めによる。

重要: 第2条は施行日のデフォルトルール(公布の日から起算して20日を経過した日)を定めるものですが、実務上はほとんどの法律で附則により個別の施行期日が定められるため、20日ルールが直接適用される場面は多くありません。第2条本文の役割は、施行期日の規定を置かない法律に対する補完的なものです。なお、法の適用に関する通則法(、平成19年1月1日施行)は、旧来の法例を全部改正して施行された法律で、施行日原則を定める条文は旧法例第1条から本法第2条に承継されました。

確認すべき附則の内容

附則の項目内容なぜ重要か
施行期日この改正がいつから効力をもつか施行日前の行為・契約には原則として旧法が適用される(経過措置等で異なる場合あり)
経過措置施行前の行為・契約への旧法の継続適用自分のケースに新法・旧法どちらが適用されるか
段階施行条文・内容ごとに異なる施行日特定の規定の施行日を個別に確認する必要がある
関連法律の改正同時に改正される他の法律関連法令も合わせて確認する

経過措置の典型表現

経過措置にはいくつかの典型表現があります:

表現意味
「なお従前の例による」施行前のルール(旧法)が引き続き適用される
「〜とみなす」旧法に基づく行為等を新法上の概念にみなして処理する(条文の読み方・構造の基礎準用とは何かを参照)
「新法第○条の規定にかかわらず」新法の特定規定の適用を排除する(準用とは何かを参照)
「経過措置政令で定める」経過措置の詳細を政令に委任する(委任立法とは何かを参照)

経過措置の読み方の例

附則第○条(経過措置)
この法律の施行前に締結された契約については、
なお従前の例による。

「なお従前の例による」= 施行前のルール(旧法)が引き続き適用される、という意味です。自分の契約・行為が施行前か施行後かを確認し、経過措置の対象かどうかを判断します。

重要: 施行日より前の行為・契約には原則として旧法が適用されますが、経過措置の内容や規定の性質によっては新法が適用される場合もあります。特に継続的契約や長期的関係では、施行前後で適用法が分かれる場合があるため注意が必要です。

⑥ 改正前の条文を確認する方法

特定時点の条文が必要な場合は、改正履歴を逆にたどって旧法の内容を確認します。

e-Gov法令検索での改正履歴確認

e-Gov法令検索では、各法令の「改正情報」から過去の改正一覧を確認できます。2025年3月のリリースで「全ての時点検索」機能が追加され、過去時点から未来時点の法令まで横断的にキーワード検索できるようになりました(法令APIバージョン2と同時公開)。

手順:

  1. 目的の法令を検索・表示する
  2. 「改正情報」または改正履歴を選択する
  3. 改正の日付・改正法律の番号の一覧が表示される
  4. 目的の時点以前の最後の改正を特定する
  5. 改正法律の内容と元の条文を照合し、改正前の条文を再構成する(または「全ての時点検索」で時点を指定して確認する)

注意: 過去時点の完全な条文テキスト確認は、機能の追加で利便性が向上しているものの、複雑な改正経緯のある法令では追跡が難しい場合があります。重要な案件で特定時点の条文が必要な場合は、専門家への相談もあわせて検討することをおすすめします。

官報での確認

公布時の原文は官報に掲載されています。国立印刷局の官報検索サービスでは過去の官報も閲覧できます。

⑦ よくある確認パターン別の手順

調べる目的に応じて、確認の手順が変わります。

パターン1:「この法律は今どんな内容か」

① e-Gov法令検索またはJapanCodexで法令名を検索
② 現行版の条文を確認
③ 附則で施行日・段階施行を確認
→ 現在施行中の条文が確認できる

パターン2:「改正後のルールはいつから適用されるか」

① 改正法律(「○○法の一部を改正する法律」)を検索
② 改正法律の附則第1条(施行期日)を確認
③ 政令指定の場合はさらに政令を確認
→ 施行日が特定できる

パターン3:「施行前に締結した契約に新法は適用されるか」

① 改正法律の附則の経過措置規定を確認
② 「施行前に締結した契約」への適用がどう定められているか確認
③ 「なお従前の例による」等の規定があれば旧法が適用
→ 新法・旧法どちらが適用されるかが判断できる

パターン4:「○年前にこの法律はどんな内容だったか」

① e-Gov法令検索で改正履歴または「全ての時点検索」を確認
② 目的の時点以前・以後の改正を特定
③ 改正法律の本則で変更内容を確認
④ 改正前の条文を再構成して確認
→ 特定時点の条文が把握できる

⑧ 注意点:公布済みで施行前の法令

公布されているが施行前の法令は、現行版には反映されていないことがあります。

根拠条文:(本法)日本国憲法第7条第1号(法律の公布)

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。

法律は公布から施行まで期間があります(施行日と公布日の違いを参照)。この期間中は、公布済みの改正法律があっても、現行版の条文表示には反映されていない場合があります。e-Gov法令検索では「未施行法令」として別途確認できます。

近い将来の施行が予定されている改正がある場合は、改正法律の附則で施行予定日を確認し、e-GovやJapanCodexの表示が現行版か未施行版かを意識して利用してください。

複雑な改正の追跡や、特定時点の条文が問題となる法律実務については、個別事情によって判断が変わることが多いため、弁護士・司法書士等の専門家への相談をおすすめします。

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
(本法)第2条法の適用に関する通則法中核施行日の原則(附則に定めがない場合の20日ルール・旧法例第1条から承継)
(本法)第7条第1号日本国憲法周辺法律の公布(公布が改正の起点となる根拠)

まとめ

  • 改正には一部改正・全部改正・廃止と新規制定の3類型がある
  • 束ね法(一括改正法):複数の法律を一括で改正する形式(例:民法等の一部を改正する法律=)
  • 現行法令の最新版はe-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)またはJapanCodexで確認する
  • 改正法律(「○○法の一部を改正する法律」)は元の法律とは別の法令番号を持つ
  • 施行日・経過措置・段階施行は改正法律の附則で確認する
  • 経過措置の典型表現:「なお従前の例による」(旧法継続適用)・「〜とみなす」(新法上の概念に擬制)・「新法第○条の規定にかかわらず」(適用排除)
  • 施行日の原則は法の適用に関する通則法第2条で定められている(旧法例第1条から承継・平成19年1月1日施行)
  • 特定時点の条文は改正履歴を逆に辿るか、e-Govの「全ての時点検索」機能(2025年3月リリース・法令APIバージョン2と同時公開)で確認できる
  • 公布済みで施行前の法令は「未施行法令」として別途確認する
  • 主要な近年改正:民法(債権法)令和2年4月1日施行、民法(相続法)令和元年7月1日他、民法(成年年齢)令和4年4月1日、民法(所有者不明土地)令和5年4月1日他、改正下請法→取適法 令和8年1月1日、改正刑法(拘禁刑一本化)令和7年6月1日、改正育児介護休業法 令和4年4月1日他
  • 複雑な改正の追跡や法律実務への適用は専門家への相談を推奨する

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