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法令の種類(憲法・法律・政令・省令)の違いとは?

日本の法令には種類と効力の上下関係があります。憲法・法律・政令・省令・規則の違いを、根拠条文とともに体系的に解説します。

こんな方へ

  • 「政令」「省令」「規則」の違いがわからない
  • 法令を調べていて、種類が多くて混乱している
  • 条文を読む前に法令の全体像を把握したい
  • JapanCodexで法令を検索する際に種類を理解したい

この記事でわかること

  • 日本の法令の種類と階層構造
  • 憲法・法律・政令・省令・規則それぞれの特徴
  • 誰が制定するか・どんな内容を定めるか
  • 上位法令と下位法令の関係
  • 根拠条文(憲法・国家行政組織法・内閣府設置法)

結論:法令には「階層」があり、下位は上位に反することができない

日本の法令は原則として効力の強い順に階層構造をなしており、下位の法令は上位の法令に反する内容を定めることはできず、そのような場合には無効とされます。(条例と法律の関係・告示の法的性質など、単純な上下関係だけでは処理できない場面もあります。)

根拠条文:(本法)日本国憲法第98条第1項(憲法の最高法規性)

この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

法令の階層(上位から順に)

① 憲法
↓
② 法律
↓
③ 政令
↓
④ 省令・府令
↓
⑤ 規則・告示・訓令

今すぐやること

  • 調べたい条文が「どの階層にあるか」を確認する(法律か政令か省令かで意味が変わる)
  • 条文に「〜で定める」とあれば、委任先の法令を探す(JapanCodexで横断検索できる)
  • 法律だけでなく、政令・省令まで必ず確認する(詳細は下位法令に書かれていることが多い)
  • すべての事項が法律で完結するわけではないことを前提に読む

判断フロー①:この法令は誰が作ったか

この法令を制定したのは誰か?

立法機関(国会)

  • 衆議院・参議院(国会)法律

行政機関・独立機関

  • 内閣政令
  • 各省大臣(府・省)省令・府令
  • 各委員会・各庁の長官規則(国家行政組織法第13条第1項)
  • 各省大臣・各委員会・各庁の長官告示(国家行政組織法第14条第1項)
  • 国会・裁判所・会計検査院等の独立機関議院規則・最高裁判所規則等

※補足:国民の権利・義務に直接関わる事項は法律(国会)が制定。詳細・執行規定は行政機関の命令(政令・省令等)で定めることが多い。

判断フロー②:この法令はどの範囲に効力があるか

この法令はどのような効力・範囲を持つか?

国全体・全国民への効力

  • 国の最高法規・あらゆる法令の基準憲法
  • 国民の権利・義務に直接関係する事項法律(国会のみ制定可能)

委任・地域限定の効力

  • 法律の委任を受けた詳細・執行のための規定政令・省令・規則
  • 地域限定の規定条例・規則(地方公共団体)

※補足:「〜で定める」という委任規定がある場合は、委任先の政令・省令も必ず確認すること。下位法令の内容は、必ずその根拠となる上位法令の範囲内で定められます。

① 憲法

すべての法令の頂点に立つ最高法規です。国会も内閣も憲法に反することはできません。

根拠条文:(本法)日本国憲法第98条第1項(最高法規)

項目内容
制定者国民(憲法制定権力)
公布・施行昭和21年(1946年)11月3日公布・昭和22年(1947年)5月3日施行
改正手続各議院の総議員の3分の2以上の賛成→国民投票で過半数
主な内容国民の基本的人権・国家の統治構造・法令の最高基準
JapanCodexでの種別憲法

② 法律

国民の権利・義務に関わる事項は、原則として法律で定める必要があります。

根拠条文:(本法)日本国憲法第41条(国会の地位)

国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
項目内容
制定者国会(衆議院・参議院)
成立要件両議院で可決(原則)
主な内容国民の権利・義務・罰則・行政機関の組織等
JapanCodexでの種別法律
民法・刑法・建設業法・個人情報保護法 など

国民に義務を課したり、権利を制限したりするには、原則として法律の根拠が必要です(法律の留保)。「法律の留保」とは、国民の権利制限や義務付けは原則として法律による必要があるという考え方です。通説(侵害留保説)は、国民の権利・自由を制限したり義務を課したりする場合に法律の根拠が必要であると説きます。ただし、留保の要求される程度は分野によって異なります。また、すべての事項が法律で完結するわけではなく、詳細は政令・省令に委任されることが多いです。

③ 政令

内閣が制定する命令です。法律の委任を受けて詳細を定めることが多いです。

根拠条文:(本法)日本国憲法第73条第6号(内閣の職務・第6号)

この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
項目内容
制定者内閣
手続閣議決定・天皇による公布
主な内容法律の委任事項・法律の執行に必要な事項
JapanCodexでの種別政令
民法施行令・建設業法施行令 など

注意: 政令には罰則を設けることができますが、法律の委任がある場合に限られます(憲法第73条第6号ただし書)。また、原則として法律の根拠または委任がない事項を政令・省令で独自に定めることはできません(執行命令として法律を具体化する場合は例外的に認められることがあります)。

④ 省令・府令

各省大臣が制定する命令です。法律・政令を受けてさらに細かい内容を定めます。

省令(国家行政組織法第12条第1項)

根拠条文:(本法)国家行政組織法第12条第1項(省令)

各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。
項目内容
制定者各省大臣(国土交通省・厚生労働省・法務省等)
主な内容法律・政令の委任事項・手続・様式・技術的基準等
JapanCodexでの種別府省令
民法施行規則・建設業法施行規則 など

府令(内閣府設置法第7条第3項)

府令の根拠は内閣府設置法第7条第3項であり、国家行政組織法ではない点に注意。

府令は内閣府の長(内閣総理大臣)が制定するもので、省令に相当します。

根拠条文:(本法)内閣府設置法第7条第3項(府令)

省令の罰則・義務付け・権利制限の制限

重要: 省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができないとされています(国家行政組織法第12条第3項)。

根拠条文:(本法)国家行政組織法第12条第3項

省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。

⑤ 規則・告示・訓令・通達

行政機関が制定する命令の中でも、より細かい内容や行政内部のルールを定めるものです。それぞれ根拠条文と性質が異なります。

種別根拠条文制定者主な内容
規則(国家行政組織法上)(本法)国家行政組織法第13条第1項各委員会・各庁の長官別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を発する
告示(本法)国家行政組織法第14条第1項各省大臣・各委員会・各庁の長官その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合の公示(基準・指定等)
訓令・通達(本法)国家行政組織法第14条第2項各大臣・各委員会・各庁の長官所管の諸機関及び職員に対する命令・示達(行政機関内部のルール)

規則(国家行政組織法第13条第1項)

根拠条文:(本法)国家行政組織法第13条第1項

各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。

重要: 国家行政組織法上の「規則」は、各委員会及び各庁の長官が発するものです(各省大臣ではありません)。例:公正取引委員会規則、国税庁長官告示等。

なお、最高裁判所規則(憲法第77条第1項)・国会の議院規則(憲法第58条第2項)等、別の根拠に基づく規則もあります(後述)。

告示(国家行政組織法第14条第1項)

根拠条文:(本法)国家行政組織法第14条第1項

各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。

告示は基準・指定・公示事項等を国民に対して示すものです。

告示の法的性質: 告示は形式上は公示行為ですが、内容によっては法規命令としての性質を持つものもあります(例:パワハラ防止指針、最低賃金法に基づく地域別最低賃金の決定告示等)。形式は告示でも実質的に法規範性を持つ場合がある点に注意が必要です。

訓令・通達(国家行政組織法第14条第2項)

訓令・通達は行政機関内部のルールであり、国民への直接的な法的拘束力はありません。

根拠条文:(本法)国家行政組織法第14条第2項

国家行政組織法第14条第2項により、各大臣等は所管の機関・職員に対する命令・示達として訓令・通達を発することができます。ただし、行政運用に事実上の影響を与えます。

⑥ 条例・規則(地方公共団体)

都道府県・市区町村が、その区域内に限って制定できる法令です。

根拠条文:(本法)日本国憲法第94条(地方公共団体の権能)

地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
種別制定者主な内容
条例地方議会地域内の権利・義務に関する事項
規則首長(知事・市町村長)条例・法律の委任事項

注意: 条例は法律の範囲内でのみ制定できます。法律に反する条例は無効です。

⑦ その他の法形式

国会・裁判所等の独立機関も、それぞれ固有の規則を制定できます。

根拠条文:(本法)日本国憲法第77条第1項(最高裁判所規則)

最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

根拠条文:(本法)日本国憲法第58条第2項(議院規則)

種別根拠制定者
議院規則(本法)憲法第58条第2項衆議院・参議院衆議院規則・参議院規則
最高裁判所規則(本法)憲法第77条第1項最高裁判所民事訴訟規則・刑事訴訟規則
会計検査院規則(本法)会計検査院法第38条会計検査院会計検査院規則

法令の種類と「委任」の関係

上位法令が下位法令に詳細を委ねることを「委任」といいます。条文に「〜で定める」とある場合、別の法令に詳細が書かれています。

委任の連鎖の例(建設業許可の場合)

建設業法(法律)
→ 「政令で定める」
↓
建設業法施行令(政令)
→ 「国土交通省令で定める」
↓
建設業法施行規則(省令)
→ 「告示で定める」
↓
告示

JapanCodexでは、法律・政令・省令・規則を横断して検索・参照できます。「〜で定める」という委任規定を見つけたら、その法令を芋づる式に辿ることができます。

このテーマで使う条文一覧

このテーマは以下の条文で構成されています。

条文法令区分内容
(本法)第98条第1項日本国憲法中核憲法の最高法規性
(本法)第41条日本国憲法中核国会は唯一の立法機関
(本法)第58条第2項日本国憲法周辺議院規則制定権
(本法)第73条第6号日本国憲法中核内閣による政令制定権・罰則委任の制限
(本法)第77条第1項日本国憲法周辺最高裁判所規則制定権
(本法)第94条日本国憲法周辺地方公共団体の条例制定権
(本法)第12条第1項国家行政組織法中核省令の根拠
(本法)第12条第3項国家行政組織法中核省令による罰則・義務付け・権利制限の制限
(本法)第13条第1項国家行政組織法周辺各委員会・各庁の長官による規則の根拠
(本法)第14条第1項国家行政組織法周辺告示の根拠
(本法)第14条第2項国家行政組織法周辺訓令・通達の根拠
(本法)第7条第3項内閣府設置法周辺府令の根拠(内閣総理大臣による制定)

まとめ

  • 日本の法令は憲法→法律→政令→省令→規則の順に効力が強い
  • 下位法令は上位法令に反する内容を定めることはできず、そのような場合には無効とされる(憲法第98条第1項)
  • 国民の権利・義務を定めるには法律の根拠が必要(法律の留保:通説は侵害留保説)
  • 政令は内閣、省令は各省大臣が制定する(憲法第73条第6号・国家行政組織法第12条第1項)
  • 政令の罰則は法律の委任がある場合に限られる(憲法第73条第6号ただし書)
  • 省令で罰則・義務付け・権利制限を定めるには法律の委任が必要(国家行政組織法第12条第3項)
  • 府令は内閣府の長(内閣総理大臣)が制定し、根拠は内閣府設置法第7条第3項(国家行政組織法ではない)
  • 規則(国家行政組織法第13条第1項)は各委員会・各庁の長官が発する命令
  • 告示は国家行政組織法第14条第1項を根拠とする公示行為だが、内容によっては法規命令としての性質を持つものもある(例:パワハラ防止指針・地域別最低賃金の決定告示)
  • 訓令・通達は国家行政組織法第14条第2項を根拠とする内部命令で、国民への直接的な法的拘束力はない
  • 条例は地方議会が制定し、法律の範囲内でのみ有効(憲法第94条)
  • 議院規則は憲法第58条第2項、最高裁判所規則は憲法第77条第1項を根拠
  • 「〜で定める」は委任規定で、別の法令に詳細がある
  • JapanCodexでは法令の種別を横断して検索できる

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