こんな方へ
- 条文を読もうとしたが、構造がわからなくて途中で挫折した
- 「第1項」「第2号」の違いがわからない
- 「ただし」「この限りでない」が何を意味するかわからない
- JapanCodexで法令を調べる際に条文を読めるようになりたい
- 「みなす」「推定する」「準用する」の違いを整理したい
- 編・章・節・款の階層構造を理解したい
この記事でわかること
- 条文の階層構造(編・章・節・款・条・項・号・細分)
- 条・項・号の関係と読み方
- 本文・ただし書き・前段・後段の構造
- 定型表現(みなす・推定する・準用・及び・又は・とする)の意味
- 条文番号の読み方(同条・同法・前項・前条・枝番)
- 実際の条文を使った読み方の練習
結論:条文は「条→項→号」の階層で構成されている
条文は基本的に条・項・号の階層で構成されています。この構造を理解するだけで、条文の読みやすさが大幅に変わります。実際にはより上位の編・章・節・款や、号の下の細分(イ・ロ・ハ・(1)・(2)等)もありますが、まず基本の3階層を押さえることが重要です。
法令全体
├─ 編
│ ├─ 章
│ │ ├─ 節
│ │ │ ├─ 款
│ │ │ │ ├─ 第○条(条)
│ │ │ │ │ ├─ 第1項
│ │ │ │ │ │ ├─ 第1号
│ │ │ │ │ │ │ ├─ イ
│ │ │ │ │ │ │ ├─ ロ
│ │ │ │ │ │ │ └─ ハ
│ │ │ │ │ │ ├─ 第2号
│ │ │ │ │ │ └─ 第3号
│ │ │ │ │ └─ 第2項→ 例えば民法は「第1編 総則→第2編 物権→第3編 債権→第4編 親族→第5編 相続」の5編構成。
今すぐやること
- 読みたい条文の「条番号」を確認する(例:民法第709条)
- 条文が複数の段落に分かれていれば「第○項」と数える
- 箇条書きがあれば「第○号」と数える
- 「ただし」以降は例外規定と意識して読む
- 「準用する」が出てきたら参照先の条文を必ず読みに行く
判断フロー①:この条文はどの階層か
この条文の参照範囲はどこまでか?
条単位のみ
- 「第○条」だけで参照されている条全体を対象とする(項・号なし)
項・号の特定が必要
- 条の中に複数の段落(改行されたまとまり)がある上から数えて第1項・第2項と特定する
- 段落の中に「一 二 三」のような箇条書きがある上から数えて第1号・第2号と特定する
- 号の中にさらに「イ ロ ハ」の細分がある上から数えて「第○号イ」と特定する
※補足:条文に項番号は通常書かれていない(六法では「②③」等で示される)。複数段落があれば上から数えて第1項・第2項と判断する。号はイロハや一二三の箇条書きで示される。
判断フロー②:この表現は何を意味するか
この定型表現は「原則の確定」か「例外・変更・参照」か?
原則・確定的な効果
- 「〜しなければならない」義務(違反すると法的効果が生じる)
- 「〜することができる」権限・裁量(してもしなくてもよい)
- 「みなす」法律上確定的に扱われる(原則として反証不可)
- 「〜とする」法律上の効果を確定的に定める(民法に多い)
例外・変更・別条文の参照が必要
- 「ただし」本文の例外・制限を定めている(ただし書き)
- 「この限りでない」直前の規定が適用されない場合を示している
- 「前項の規定にかかわらず」前項の例外を定めている
- 「推定する」法律上の仮定(証拠があれば反証で覆せる)
- 「準用する」別の条文のルールをこの場面にも当てはめる(参照先を必ず確認)
※補足:「みなす」と「推定する」の最大の違いは反証できるかどうか。「準用する」が出たら必ず参照先の条文を読みに行くこと。
① 編・章・節・款と条・項・号の基本
→ 「条」が基本単位、「項」は条の中の段落、「号」は箇条書きの各項目です。
編・章・節・款(へん・しょう・せつ・かん)
法令は通常、テーマごとに編→章→節→款という大きな構造で整理されています。例:
民法
├─ 第1編 総則(第1条〜第174条)
├─ 第2編 物権(第175条〜第398条の22)
├─ 第3編 債権(第399条〜第724条の2)
│ ├─ 第1章 総則
│ ├─ 第2章 契約
│ │ ├─ 第1節 総則
│ │ ├─ 第2節 贈与
│ │ └─ ...
│ └─ ...
├─ 第4編 親族(第725条〜第881条)
└─ 第5編 相続(第882条〜第1050条)編・章・節・款は条文の所在を理解する上で重要ですが、条文の引用では通常「第○条」のみで足ります(編・章を併記する必要はありません)。
条(じょう)
法令の基本的な区切りです。「第1条」「第709条」のように番号が振られます。
民法第709条
不法行為による損害賠償項(こう)
1つの条が複数の段落に分かれる場合、上から順に「第1項」「第2項」と呼びます。伝統的な条文形式では本文に項番号は書かれませんが、法令データベースや六法では表示上「②③」や「第1項」等と明記されることが多いです。上から数えて判断するのが基本です。
建設業法第3条
(第1項)建設業を営もうとする者は、…許可を受けなければならない。
(第2項)前項の許可は、…二種類に区分する。
(第3項)…条文を引用する際は「建設業法第3条第1項」のように表記します。
号(ごう)
箇条書きの各項目を「号」と呼びます。「一 二 三」または「1 2 3」で表記されます。
民法第969条第1項
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。「民法第969条第1項第1号」のように引用します。
号の下の細分(イ・ロ・ハ等)
号の中にさらに細かい項目がある場合、「イ ロ ハ」または「(1) (2) (3)」で表記されます。例:建設業法第7条の各号にはイ・ロ・ハの細分があります。
建設業法第7条第2号
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し…
ロ …
ハ …「建設業法第7条第2号イ」のように引用します。
② 本文・ただし書き・前段・後段
→ 「ただし」以降は例外・制限の規定です。
本文(ほんぶん)
条文の主たるルールを定めた部分です。
ただし書き(ただしがき)
「ただし、〜」で始まる部分で、本文の例外・制限を定めます。まず本文を読んでからただし書きを読むのが正しい順序です。ただし書きは本文が存在して初めて意味を持ちます。
重要: ただし書きは本文の適用範囲を直接制限するため、結論が逆転する場合があります。
民法第915条第1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から
三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は
放棄をしなければならない。
↑本文:まずここを読む
ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、
家庭裁判所において伸長することができる。
↑ただし書き:本文の例外(期間を延ばせる)「この限りでない」
直前の規定が適用されない場合を示します。「〜の場合は、この限りでない」という形で使われます。
前段・後段
1つの項が2つの文で構成される場合、前の文を「前段」、後の文を「後段」と呼びます。
なお、「前項」「後項」「前条」「後条」「前段」「後段」は近接する条文・項・段を指す表記法です。条文中で頻出します。
③ 「みなす」「推定する」「とする」の違い
→ 「みなす」は反証できない、「推定する」は反証できる、「とする」は法律上の効果を確定的に定める表現です。
| 表現 | 意味 | 反証 |
|---|---|---|
| みなす | 法律上、そのものとして確定的に扱う | 原則としてできない |
| 推定する | 法律上そうと仮定する | 証拠があれば覆せる |
| とする | 法律上の効果を確定的に定める | 性質による(無効・有効など) |
例:みなす
根拠条文:(本法)民法第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
→ 法律上、最初から相続人ではなかったこととして確定的に扱われる。原則として反証できないが、適用範囲の解釈が争われることはあり得る。
例:推定する
根拠条文:(本法)民法第772条第1項
妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。
→ 法律上そうと仮定するが、(本法)民法第774条第1項が定める嫡出否認の訴え等によって覆すことができる。
重要: 民法第772条は2024年(令和6年)4月1日施行の令和4年改正により大幅に見直されました。改正前は「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(旧第1項)と「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」(旧第2項)という構成でしたが、改正後は嫡出推定の対象が拡大され、再婚後の出生に関する特則(第3項)等が新設されています。
例:とする
根拠条文:(本法)民法第90条
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
→ 「とする」は法律上の効果を確定的に定める表現。「みなす」「推定する」とは異なり、認定された事実に対する法的効果(この場合「無効」)を直接定める。
④ 「準用する」の意味
→ 「準用する」とは、別の条文のルールをそのまま(または少し修正して)この場面にも当てはめることです。準用元の条文を見ないと意味がわかりません。
条文をゼロから書くと長くなるため、「この場合も○条と同じルールが適用される」と簡略化する手法です。
「前項の規定は、○○に準用する」
→ 前項のルールを○○にも適用する
→ 必ず前項を読みに行く必要があるJapanCodexでは、準用元の条文もリンクで辿ることができます。「準用する」という表現を見たら、参照先の条文を確認することが条文読解の重要なステップです。
⑤ 「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の使い分け
→ 「及び」「並びに」は「AとB」、「又は」「若しくは」は「AまたはB」です。大きなまとまりと小さなまとまりの接続で使い分けます。
並列(AとB)
| 表現 | 使い方 |
|---|---|
| 及び(および) | 入れ子構造において内側の結合に用いる(小さなまとまりをつなぐ) |
| 並びに(ならびに) | 入れ子構造において外側の結合に用いる(大きなまとまりをつなぐ) |
A及びB並びにC
→ (AとB)とC
※「及び」でAとBをまとめ、「並びに」でそのまとまりとCをつなぐ選択(AまたはB)
| 表現 | 使い方 |
|---|---|
| 又は(または) | 入れ子構造において外側の結合に用いる(大きなまとまりをつなぐ) |
| 若しくは(もしくは) | 入れ子構造において内側の結合に用いる(小さなまとまりをつなぐ) |
A若しくはB又はC
→ (AかB)またはC
※「若しくは」でAとBをまとめ、「又は」でそのまとまりとCをつなぐポイント: 「並びに」「又は」が入れ子構造の外側(大きい接続)、「及び」「若しくは」が内側(小さい接続)です。構造を意識して読むと正確に解釈できます。
⑥ よく出る定型表現
→ 条文には繰り返し登場する定型表現があります。意味を覚えておくと読みやすくなります。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| 〜しなければならない | 義務(しないと違反) |
| 〜することができる | 権限・裁量(してもしなくてもよい) |
| 〜することができない | 禁止・制限 |
| 〜とする | 法律上の効果を確定的に定める |
| 前項の規定にかかわらず | 前の項のルールを例外的に適用しない |
| 〜の定めるところによる | 詳細は別の法令・条文に委任している |
| 〜を除く | その場合は適用しない |
| 〜に限る | その場合にのみ適用する |
| 〜に相当する | 同等のものとして扱う |
| 当該〜 | その(直前で言及されたもの) |
⑦ 条文番号の読み方
→ 条・項・号は「第○条第○項第○号」の順で読みます。
| 表記 | 読み方 |
|---|---|
| 民法第709条 | 民法・第709条 |
| 同条第1項 | 同じ条文の第1項 |
| 同法第710条 | 同じ法律の第710条 |
| 前項 | この条の中の直前の項 |
| 前条 | この法律の直前の条 |
| 建設業法第7条第1号 | 建設業法・第7条・第1号(1項のみのため項は省略) |
| 地方自治法第260条の2 | 地方自治法・第260条の2(枝番) |
枝番(の2、の3)は、後から条文を追加したときに元の番号を変えずに挿入するために使われます。例:民法第398条の2〜第398条の22は根抵当権の規定で、後から追加されたもの。
実際に読んでみる
→ 民法第1条を例に、構造を確認してみましょう。
根拠条文:(本法)民法第1条
第1項:私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
第2項:権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
第3項:権利の濫用は、これを許さない。
- 第1条は3項から構成されている
- 第1項:「公共の福祉」に反する私権は認められない
- 第2項:「信義誠実の原則」(信義則)を定めている
- 第3項:「権利濫用の禁止」を定めている
- いずれも「〜しなければならない」「〜許さない」という義務・禁止表現
このテーマで使う条文一覧
このテーマは以下の条文を例示として使用しています。
| 条文 | 法令 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|---|
| (本法)第1条 | 民法 | 中核 | 条・項の構造の例示(基本原則の3項構成) |
| (本法)第90条 | 民法 | 周辺 | 「とする」表現の例示(公序良俗違反の無効) |
| (本法)第709条 | 民法 | 中核 | 条単体の例示(不法行為) |
| (本法)第772条第1項 | 民法 | 中核 | 「推定する」の例示(嫡出推定・令和4年改正後) |
| (本法)第774条第1項 | 民法 | 周辺 | 嫡出否認の訴え(推定の覆滅) |
| (本法)第915条第1項 | 民法 | 中核 | 本文・ただし書きの例示(相続の承認・放棄期間) |
| (本法)第939条 | 民法 | 周辺 | 「みなす」の例示(相続放棄の効果) |
| (本法)第969条第1項 | 民法 | 周辺 | 号の例示(公正証書遺言の方式・令和7年10月施行改正後の2号構成) |
| (本法)第3条 | 建設業法 | 周辺 | 項の例示 |
まとめ
- 条文は「構造で読む」 — 構造を誤ると意味も誤る。意味より先に構造(編・章・節・款・条・項・号)を把握する
- 条文は基本的に条→項→号の階層で構成される(編・章・節・款の上位構造、号の下のイ・ロ・ハ細分もある)
- 「ただし」以降は例外・制限の規定(まず本文を読んでから)
- 「みなす」は原則として反証不可(法律上確定的に扱われる)、「推定する」は反証可能、「とする」は法律上の効果を確定的に定める
- 「準用する」は準用元の条文を必ず確認すること
- 「並びに」「又は」が入れ子構造の外側(大きい接続)、「及び」「若しくは」が内側(小さい接続)
- 「〜しなければならない」は義務、「〜できる」は権限・裁量
- 「同条」「同法」「前項」「前条」「前段」「後段」は近接する条文・項・段を指す表記法
- 枝番(の2・の3)は後から追加された条文
- 条文は改正によって構造が大きく変わる場合がある(最新の条文を確認すること)。例:民法第772条は令和4年改正(2024年4月1日施行)で嫡出推定が見直された/民法第969条は令和5年改正(2025年10月1日施行)により第1項が2号構成に再編され、旧第3号〜第5号は公証人法第37条・第40条に移管された