04-03 · デジタル・現代 · 条文解説系

著作権の保護期間と例外|70年ルール・起算点・パブリックドメインの判断方法

著作権は、創作した瞬間から発生し、一定期間保護されます。日本では平成30年(2018年)改正により、原則として著作者の死後70年(法人著作物等は公表後70年)に延長されました。保護期間が終了した著作物は「パブリックドメイン」となります。著作権(財産的権利)については原則として自由に利用できますが、著作者人格的利益・著作隣接権・商標等の他の権利や法的制約が残る場合があります。この記事では、著作権の保護期間・起算点・例外・パブリックドメインの判断方法を条文とともに解説します。

こんな方へ

  • 特定の著作物の著作権保護期間が終了しているか確認したい
  • 「死後70年」の起算点の計算方法を確認したい
  • 保護期間内でも無断利用できる「著作権の例外」を知りたい
  • パブリックドメインになった著作物を安全に利用する方法を知りたい
  • 法人が著作者の場合・無名著作物の保護期間を確認したい

この記事でわかること

  • 著作権の保護期間の原則(死後70年)と起算点
  • 著作物の種類ごとの保護期間の違い
  • 平成30年(2018年)改正(TPP整合)による保護期間延長の影響
  • 保護期間終了後も残る権利(著作者人格権等)
  • 保護期間内でも利用できる例外(引用・私的複製等)

結論:著作権の保護期間は原則「著作者の死後70年」。起算点・著作物の種類によって計算方法が異なる

根拠条文:著作権法 第51条(保護期間の原則)

著作物の種類保護期間起算点
一般の著作物(実名・著名な変名)著作者の死後70年著作者が死亡した年の翌年1月1日
無名・変名の著作物公表後70年公表した年の翌年1月1日
法人その他の団体名義の著作物公表後70年公表した年の翌年1月1日
映画の著作物公表後70年公表した年の翌年1月1日
未公表の著作物(著作者不明)創作後70年創作した年の翌年1月1日

重要: 平成30年(2018年)12月30日に施行された TPP11 整合法により、保護期間が従来の「死後50年」から「死後70年」に延長されました。この改正は、施行日時点でまだ保護期間が満了していなかった著作物に適用されます(死後50年が経過して既にパブリックドメインになっていたものは対象外)。

今すぐやること

著作物の利用可否を判断するために、以下の手順で確認します。

  1. 著作物の性質を特定する(個人著作物・法人著作物・映画・無名/変名著作物等の区別)
  2. 起算点となる事実を確認する(個人著作物なら著作者の死亡年、法人著作物・映画なら公表年)
  3. 平成30年(2018年)12月29日時点の保護状態を確認する(既にパブリックドメインになっていた場合は改正の影響を受けない)
  4. 翌年1月1日起算で保護期間を計算する(死亡年または公表年の翌年1月1日から70年間)
  5. 著作権以外の権利関係を確認する(著作者人格権・著作隣接権・契約による制限・商標等)

確認が困難な場合は、著作権情報センター(CRIC)または著作権の専門家への相談を推奨します。

判断フロー①:この著作物の保護期間は終了しているか

保護期間は終了しているか?

※ 著作物の種類別の起算点詳細は § ①〜② を参照。著作者の死亡年・公表年等の情報が不明な場合は、パブリックドメインと断定することは避ける必要があります。確認が困難な場合は専門家への確認を推奨します。

判断フロー②:保護期間内でも利用できる例外に該当するか

この著作物は保護期間内であるが、無断で利用できる例外に該当するか?

例外として利用できる可能性が高い

  • 個人・家庭内その他これに準ずる限られた範囲内での使用(私的使用)著作権法第30条により複製可能とされる場合があります
  • 公表された著作物の引用(出所明示・主従関係・引用部分の明確な区別等の要件を満たすもの)第32条により可能とされる場合があります
  • 学校等の教育機関の授業の過程における複製等(一定条件あり)第35条により可能とされる場合があります
  • 図書館等での調査研究目的の複製(要件あり)第31条により可能とされる場合があります
  • 時事問題の論説の他の新聞・雑誌等への転載(一定条件あり)第39条により可能とされる場合があります

例外に該当しない可能性が高い

  • 引用の要件(主従関係・出所明示・必要最小限の範囲等)を満たさない利用著作権侵害となる可能性があります
  • 業務・商用目的での複製・改変等で例外規定の対象外著作権者の許諾が必要となる可能性があります

※ 引用に該当するかどうかは判例上、目的の正当性・主従関係・引用部分の明確な区別・出所の明示等の要素を総合的に判断するとされています。要件の充足性に迷う場合は弁護士または著作権の専門家への相談を推奨します。

① 保護期間の原則(個人著作物)

個人が創作した著作物の保護期間は、著作者の死後70年です。

根拠条文:著作権法 第51条

起算点の計算

保護期間は、著作者が死亡した年の翌年1月1日から起算します(著作権法 第57条)。

計算例:

  • 1950年1月1日に死亡した著作者 → 1951年1月1日〜2020年12月31日(70年間)→ 2021年1月1日にパブリックドメイン
  • 1950年12月31日に死亡した著作者 → 同じく1951年1月1日起算 → 2021年1月1日にパブリックドメイン

つまり、同じ年に死亡した著作者の著作物は、月日を問わず同じ年にパブリックドメインになります。

共同著作物の場合

複数の著作者による共同著作物の保護期間は、最後に死亡した著作者の死後70年で計算されます(著作権法 第51条第2項)。

② 保護期間の特則(法人・映画・無名著作物)

法人著作物・映画・無名著作物は、著作者の死亡ではなく「公表」を起算点とします。

根拠条文:著作権法 第52条第54条

法人その他の団体名義の著作物(第53条)

会社・官公庁・団体等の名義で公表された著作物は、公表後70年が保護期間です(著作権法 第53条)。法人著作物に該当するかどうかは、職務著作の要件(著作権法 第15条)により判断されます。

ただし、公表後70年以内に著作者である法人が解散・消滅した場合の扱いは、個別の事情によって判断が異なる場合があります。

映画の著作物(第54条)

映画の著作物は、公表後70年が保護期間です(未公表の場合は創作後70年)(著作権法 第54条)。

映画に含まれる音楽・脚本等の個別の著作物は、それぞれ別途著作権が存在し、映画の著作権とは独立して保護期間が計算されます。

無名・変名の著作物(第52条)

著作者名が明示されていない著作物や、実名と結びつけられていないペンネーム等で公表された著作物は、公表後70年が保護期間です(著作権法 第52条)。

ただし、公表後70年以内に著作者の実名が明らかになった場合は、著作者の死後70年ルールが適用されます。

③ 平成30年(2018年)改正(TPP整合)の影響

平成30年(2018年)12月30日に施行された改正により、保護期間が死後50年から死後70年に延長されました。

根拠条文:著作権法 第51条(平成30年改正)

改正の概要

TPP11(CPTPP)の発効に伴う整合法として、著作権の保護期間が延長されました。

著作物の区分改正前改正後
個人著作物死後50年死後70年
法人著作物・映画等公表後50年(映画は70年)公表後70年

改正の適用範囲(重要)

既にパブリックドメインになっていた著作物(死後50年が経過済み)には改正は適用されません。 平成30年(2018年)12月29日時点で著作権が消滅していた著作物は、改正後もパブリックドメインのままです。

影響を受けた著作物の例: 平成30年(2018年)12月29日時点で著作者の死後49年〜50年未満だった著作物は、改正により保護期間が20年延長されました。

④ 保護期間が終了しても残る権利

著作権の財産的権利の保護期間が終了した後も、著作者人格権・実演家の人格権等は別途考慮が必要です。

根拠条文:著作権法 第60条(著作者の死後の人格的利益の保護)

著作者人格権

著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)は、法的には著作者の死亡により消滅しますが、死後も人格的利益は保護されます(著作権法 第60条)。著作者の意思に反するような利用は差止・損害賠償の対象となる場合があります。

具体的には、著作者が死亡した後であっても、著作者の名誉・声望を傷つける方法で著作物を利用することは、差止・損害賠償の対象となる場合があります。

実演家・レコード製作者等の権利

著作物を利用する場合、著作権(財産権)の保護期間が終了していても、実演家・レコード製作者・放送事業者等の著作隣接権が別途存在する場合があります。

例: 楽曲の著作権保護期間が終了していても、その楽曲を収録したCDの実演家・レコード製作者の権利は別途保護されます(著作隣接権の保護期間:実演・レコード固定から70年)。

⑤ 保護期間内でも利用できる例外

著作権の保護期間内であっても、一定の場合は著作権者の許諾なく著作物を利用できます。

根拠条文:著作権法 第30条第50条(権利の制限規定)

主な例外(著作権の制限)

例外の種類内容条文
私的使用のための複製個人・家庭内での複製第30条
引用正当な目的・範囲内での引用(出所明示が必要)第32条
教育機関での利用授業・学校での複製等(一定条件あり)第33条第36条
図書館等での複製図書館等での調査研究目的の複製第31条
時事問題の論説新聞・雑誌等での時事問題の論説の転載第39条

引用の要件(最重要): 引用として認められるためには、①引用目的の正当性、②引用部分と自分の著述の主従関係(自分の著述が主)、③引用部分の明確な区別、④出所の明示、等が必要とされています。判例上は要件の総合判断で判断されるとされています。これらの要件を満たさない場合は著作権侵害となる可能性があります。

⑥ パブリックドメインの確認方法

著作物がパブリックドメインかどうかを確認するためには、著作者の生没年・著作物の公表年・平成30年(2018年)改正の適用関係を確認することが必要です。

確認の手順

Step 1:著作物の性質を確認する(個人著作物・法人著作物・映画等)
Step 2:起算点となる事実を確認する(著作者の死亡年・公表年)
Step 3:平成30年(2018年)改正の適用関係を確認する
  (平成30年(2018年)12月29日時点で死後50年経過済み → 対象外)
  (平成30年(2018年)12月29日時点で死後50年未経過 → 死後70年ルール適用)
Step 4:翌年1月1日起算で保護期間を計算する

注意: 著作者の死亡年が不明・著作物の種類が不明な場合は、パブリックドメインと断定することは避ける必要があります。また、著作権(財産的権利)がパブリックドメインになっていても、著作隣接権・商標・契約による二次利用制限等の別の制約が残る場合があります。確認が困難な場合は、著作権情報センター(CRIC)等への相談も選択肢の一つです。

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
著作権法 第51条著作権法中核保護期間の原則(著作者の死後70年)
著作権法 第52条著作権法中核無名・変名著作物の保護期間(公表後70年)
著作権法 第53条著作権法中核法人著作物の保護期間(公表後70年)
著作権法 第54条著作権法中核映画の著作物の保護期間(公表後70年)
著作権法 第57条著作権法中核保護期間の計算(翌年1月1日起算)
著作権法 第60条著作権法周辺著作者の死後の人格的利益の保護
著作権法 第30条著作権法周辺私的使用のための複製
著作権法 第32条著作権法周辺引用

まとめ

  • 著作権の保護期間は原則として著作者の死後70年です(著作権法第51条)
  • 起算点は著作者が死亡した年の翌年1月1日です(第57条)
  • 法人著作物・映画・無名著作物は公表後70年(起算点:公表年の翌年1月1日)
  • 平成30年(2018年)12月30日の改正で保護期間が死後50年から70年に延長されました。ただし改正施行日時点で既にパブリックドメインになっていた著作物は対象外です
  • 保護期間が終了した後も著作者人格権・著作隣接権等が残る場合があります
  • 保護期間内でも引用・私的複製等の例外として著作権者の許諾なく利用できる場合があります(第30条〜第50条)
  • パブリックドメインの判断が困難な場合は、専門家・著作権情報センター等への確認を推奨します

著作物を利用するにあたっては、著作権以外の権利関係(著作隣接権・商標・契約による制限等)も含めた確認が必要です。保護期間の具体的な判断は個別の著作物の事情によって異なるため、確認が困難な場合は著作権の専門家への相談をおすすめします。

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