告示日(衆議院・参議院議員選挙では公示日)は、選挙運動ができる期間の始まりです。告示前と告示後では、同じ行為でも適法か違法かが逆転する場合があります。「告示前だから安心」「告示後は何でもできる」という理解はいずれも誤りです。さらに 投票日当日は別フェーズで、選挙運動が全面的に禁止されます。この記事では、3 つの期間(告示前/告示後/投票日当日)で何ができて何ができないかを、行為の類型ごとに比較して解説します。
カテゴリ:公職選挙法 / 種別:比較型・類型比較
関連条文:(本法)公職選挙法第129条・第138条・第142条・第142条の6・第201条の6・第221条
本記事の主軸: 選挙の時間軸を 「適用される規制(事前運動禁止/選挙運動規制/投票日当日禁止)・許容される行為(政治活動/選挙運動)・個別禁止規定(戸別訪問/有料広告/買収)・罰則接続」 の 4 軸で 3 期間(告示前/告示後/投票日当日)を比較整理 する。06001 v6(借地権の種類と存続期間)と同じ §12-3-A 制度類型比較・経過措置型構造(時期境界による適用法の切替)。
最短理解: 告示日が選挙運動の解禁日。①告示前(事前運動として選挙運動禁止・政治活動のみ可)②告示後(投票日前日まで)(選挙運動 + 政治活動可・ただし戸別訪問・有料広告・買収等の個別禁止規定は継続)③投票日当日(選挙運動全面禁止)の 3 期間で構成される。
重要(再禁止フェーズ): 投票日当日は、告示後に解禁された選挙運動も再び禁止されます。 「告示後 OK なら投票日も OK」という理解は誤りで、投票日当日は告示前と同じく選挙運動が全面禁止される 再禁止フェーズ です。
※補足①: 「政治活動なら告示前も自由」は 誤解 です。特定の選挙への投票獲得を目的とすると評価される場合は、政治活動の名目であっても事前運動として禁止対象になり得ます(公職選挙法第129条)。選挙期日に近接するほど事前運動と評価されやすくなる傾向があります。
※補足②: 「告示後は選挙運動が解禁」は 誤解 です。解除されるのは選挙運動の 期間規制(公職選挙法第129条)のみで、戸別訪問(第138条)・有料インターネット広告(第142条の6)・買収・利害誘導(第221条)等の 個別禁止規定は告示後も継続 します。
※補足③: 政治活動と選挙運動の区別は 内容だけでは決まりません。同じ表現でも時期・文脈・配布対象の広さ・選挙期日との近接性によって評価が変わるため、個別の事実関係に基づく総合判断 が必要です。「投票」「当選」等の直接的な言葉がなくても選挙運動と評価される場合があります。
こんな方へ
- 告示前にやっていい活動・やってはいけない活動を確認したい
- 告示後(選挙運動期間中)に解禁される行為と依然禁止される行為を整理したい
- 後援会活動・ポスター掲示・SNS 投稿が告示前後でどう変わるか確認したい
- 「政治活動」として許容される行為と「選挙運動」として規制される行為の境界を知りたい
- 投票日当日に注意すべき行為を確認したい
この記事でわかること
- 告示前・告示後・投票日当日の 3 期間で変わること・変わらないこと
- 告示前に許容される「政治活動」の範囲と限界
- 告示後に新たに解禁される行為(選挙運動)
- 告示後も継続して禁止される行為(公職選挙法第138条・第142条の6・第221条等)
- 告示日当日の候補者届出と選挙運動開始の関係
- 投票日当日の選挙運動禁止のルール
結論:告示日が選挙運動の解禁日。告示前は政治活動のみ可、告示後は選挙運動が加わるが個別禁止は継続、投票日当日は選挙運動全面禁止
根拠条文:公職選挙法第129条(選挙運動の期間)
| 行為の種類 | ①告示前 | ②告示後(投票日前日まで) | ③投票日当日 |
|---|---|---|---|
| 政策・理念の訴え(政治活動) | 原則として可 | 可 | 可(選挙運動と評価されない範囲) |
| 投票依頼(選挙運動) | 禁止(事前運動・第129条) | 可 | 禁止(第129条) |
| 選挙運動用ポスターの掲示 | 禁止(第143条等) | 可(所定の掲示板等) | 既掲示分の撤去義務はないが新規掲示は不可 |
| 選挙運動用ビラの配布 | 禁止(第142条) | 可(法定枚数・規格内) | 禁止 |
| 戸別訪問による投票依頼 | 禁止(第138条) | 禁止(告示後も継続) | 禁止 |
| 有料インターネット広告(選挙運動目的) | 禁止(第142条の6) | 禁止(告示後も継続) | 禁止 |
| SNS・ウェブサイトでの投票依頼 | 禁止(事前運動) | 可 | 禁止 |
| 買収・利害誘導 | 禁止(第221条) | 禁止(時期問わず) | 禁止 |
| 後援会活動(入会勧誘・政治活動) | 一定の範囲で可 | 可(選挙運動にならない範囲) | 可(選挙運動にならない範囲) |
重要: 告示日(公示日)の境界は 平成4年(1992年)8月1日 が借地権の新法/旧法の境界となるのと同様の構造で、選挙の時期によって適用される規制が切り替わる経過措置的構造となっています。さらに 投票日当日は別フェーズ で、告示後に解禁された選挙運動も再び禁止される点が特徴です。
今すぐやること
- 対象選挙の告示日(公示日)と投票日を確認する(地方選は告示日・衆参は公示日)
- 現在が「告示前」「告示後」「投票日当日」のどのフェーズか判定する
- 行おうとしている行為が「政治活動」か「選挙運動」かを 3 要素(特定の選挙・特定候補・投票目的)で判定する
- 告示後であっても戸別訪問・有料広告・買収等の個別禁止規定に該当しないか確認する
- 判断に迷う場合は選挙管理委員会または弁護士への確認を検討する
判断フロー①:告示前・告示後・投票日当日の適法性判定(公選法第129条)
現在のフェーズと行為の類型から、この行為は適法か?
告示前のフェーズ
- 政党・政治団体の政策訴求(特定の選挙・候補者への投票目的がない)政治活動として許容されます([第201条の6](/law/325AC1000000100/#article-201-6))
- 後援会の設立・入会勧誘(政治活動として行うもの)一定の範囲で許容されます
- 候補予定者のプロフィール・政策のウェブサイト掲載態様によっては許容されます
- 「○○候補に投票してください」と呼びかける事前運動として禁止されています([第129条](/law/325AC1000000100/#article-129))
- 選挙運動用ポスター・ビラを配布・掲示する禁止されています
- SNS で「当選させてください」と投稿する事前運動として禁止されています
- 有料インターネット広告で支持を訴える事前運動 + 有料広告禁止として問題となる可能性があります([第142条の6](/law/325AC1000000100/#article-142-6))
告示後(投票日前日まで)のフェーズ
- 街頭演説・個人演説会所定のルールのもとで可([第164条の2](/law/325AC1000000100/#article-164-2)以降)
- 選挙運動用ポスター・ビラの配布・掲示法定枚数・規格・場所のルールのもとで可
- ウェブサイト・SNS での投票呼びかけ可(有料広告・なりすましは禁止)
- 戸別訪問による投票依頼告示後も禁止されています([第138条](/law/325AC1000000100/#article-138))
- 有料インターネット広告(選挙運動目的)告示後も禁止されています([第142条の6](/law/325AC1000000100/#article-142-6))
- 買収・利害誘導告示前後・投票日当日を問わず禁止されています([第221条](/law/325AC1000000100/#article-221))
※ 告示前の「政治活動」と「事前運動」の区別は、「特定の選挙への投票目的があるかどうか」が中心的な判断要素です。選挙が近い時期ほど事前運動と評価されやすくなる傾向があります。投票日当日は政治活動と選挙運動の境界が特に厳しく判断されます。迷う場合は選挙管理委員会への確認を推奨します。
判断フロー②:告示後の継続禁止規定の判定(公選法第138条・第142条の6・第221条)
告示後(選挙運動期間中)でも禁止される行為に該当するか?
告示後も禁止(個別規制が継続)
- 戸別訪問による投票依頼告示後も禁止([第138条](/law/325AC1000000100/#article-138)・対面・電話呼出を含む)
- 有料インターネット広告による選挙運動候補者・政党等以外は告示後も禁止([第142条の6](/law/325AC1000000100/#article-142-6))
- 法定外の文書・ビラの配布(枚数・規格オーバー)告示後も制限あり([第142条](/law/325AC1000000100/#article-142))
- 買収・饗応・利害誘導告示前後を問わず禁止([第221条](/law/325AC1000000100/#article-221))
- 候補者・政党等以外の者による選挙運動用メールの送信告示後も禁止([第142条の4](/law/325AC1000000100/#article-142-4))
- 18 歳未満の者による選挙運動告示前後・投票日当日を問わず禁止([第137条の2](/law/325AC1000000100/#article-137-2))
告示後に解禁(選挙運動として可能)
- 街頭演説・個人演説会所定のルールのもとで可
- 選挙運動用ポスター・ビラの配布法定枚数・規格・場所のルールのもとで可
- ウェブサイト・SNS での投票呼びかけ可(有料広告・なりすましは禁止)
- 電話・対面での支持依頼戸別訪問に当たらない形であれば可
※ 告示後であっても「何でも解禁」ではありません。禁止規定が解除されるのは選挙運動の 期間規制(第129条)のみで、戸別訪問・有料広告・文書規制等の個別規制は告示後も有効に存続します。
① 告示前に許容される活動(政治活動)
→ 告示前でも、「政治活動」の範囲内であれば一定の活動を行うことができます。ただし、選挙運動との境界は明確ではなく、特定の選挙・候補者への投票獲得を目的とする活動は政治活動の名目であっても事前運動と評価され得ます。
根拠条文:公職選挙法第201条の6(政治活動の自由の確保)・第129条(選挙運動の期間)
告示前に許容されやすい行為
- 政策・理念の訴え: 特定の選挙・候補者への投票依頼を伴わない政策・政治理念の発信
- 後援会活動: 後援会の設立・会員の募集(政治活動として行うもの)
- ウェブサイト・SNS での政治情報発信: 選挙運動に当たらない政治的な情報提供
告示前でも問題となりやすい行為
- 候補予定者の名前・顔写真を大きく打ち出した活動: 選挙が近い時期に行うと事前運動と評価されやすくなります
- 「応援してください」「当選させたい」という呼びかけ: 投票目的があると評価される場合があります
- 選挙ポスター・選挙ビラと紛らわしい文書の配布: 態様によっては文書図画の制限違反と評価される場合があります
重要: 告示前の政治活動であっても、特定の選挙・候補者への投票獲得を目的とすると評価される場合には、事前運動として問題となる可能性があります。「政治活動の名目であれば告示前は自由」という理解は誤りです。
② 告示日当日の注意点
→ 告示日は選挙運動の「開始日」ですが、候補者の届出が完了して初めて選挙運動を開始できます。届出完了前の選挙運動は事前運動として禁止対象となります。
根拠条文:公職選挙法第129条・第86条(候補者の届出)
告示日当日のルール
- 候補者届出完了前: 告示日であっても、候補者として届出が完了する前に選挙運動を開始することには問題が生じる場合があります
- 候補者届出完了後: 届出が完了した時点から選挙運動を開始できます
- 他の候補者のために: 特定の候補者が届出を完了していれば、その候補者を支持する者が選挙運動を行うことができます
③ 告示後(選挙運動期間中)に新たに可能になる主な行為
→ 告示後に解禁される選挙運動は多岐にわたりますが、個別の規制(戸別訪問・有料広告・買収)は告示後も継続します。
根拠条文:公職選挙法第164条の2〜第164条の8(演説・街頭演説)・第142条(文書図画)
告示後に解禁される主な選挙運動
| 行為 | 告示後のルール |
|---|---|
| 選挙運動用ポスター | 候補者の氏名・写真等を記載して掲示可(掲示板への掲示等) |
| 選挙運動用ビラ | 法定枚数・規格の範囲内で配布可 |
| 個人演説会 | 選挙管理委員会への届出のもとで開催可 |
| 街頭演説 | 所定のルールのもとで可 |
| ウェブサイト・SNS での投票呼びかけ | 候補者・有権者ともに可(有料広告・なりすましは禁止) |
| 電話・対面での支持依頼 | 戸別訪問に当たらない形であれば可 |
④ 告示後も継続して禁止される主な行為
→ 告示後でも、個別の規制によって禁止が継続している行為があります。これらは選挙運動期間中であっても刑事罰の対象となり得ます。
| 禁止行為 | 根拠条文 | 備考 |
|---|---|---|
| 戸別訪問(投票依頼のための個別訪問) | 第138条 | 告示前後を問わず禁止 |
| 有料インターネット広告(選挙運動目的) | 第142条の6 | 告示前後を問わず(候補者・政党等以外) |
| 買収・利害誘導 | 第221条 | 告示前後・投票日当日を問わず禁止 |
| 法定外文書・ビラの配布 | 第142条 | 枚数・規格を超えるものは禁止 |
| 候補者以外による選挙運動用メールの送信 | 第142条の4 | 候補者・政党等のみ可 |
| 18 歳未満の者による選挙運動 | 第137条の2 | 告示前後・投票日当日を問わず禁止 |
| 投票日当日の選挙運動 | 第129条 | 選挙運動は投票前日まで |
罰則について: 違反の内容に応じて刑事罰の対象となります。買収・利害誘導は 3 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金等(第221条)、選挙運動の制限違反は 1 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金(第239条)等の規定があります。令和 7 年(2025 年)6 月 1 日施行の刑法等の一部改正により、従前の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されています。
⑤ 告示前後での文書図画の扱い
→ ポスター・ビラ等の文書図画の規制は、告示前後で内容が大きく変わります。さらに選挙運動期間中は政治活動用の文書にも一定の制限が課される場合があります。
根拠条文:公職選挙法第142条〜第146条
| 文書の種類 | ①告示前 | ②告示後(投票日前日まで) |
|---|---|---|
| 選挙運動用ポスター(候補者氏名・顔写真入り) | 禁止 | 所定の掲示場所・枚数の範囲内で可 |
| 選挙運動用ビラ(投票依頼の文言あり) | 禁止 | 法定枚数・規格の範囲内で可 |
| 政治活動用ポスター(選挙運動に当たらないもの) | 一定の要件で可 | 制限あり(選挙運動期間中の政治活動用文書の規制) |
| 後援会の入会案内・政策パンフレット | 一定の要件で可 | 一定の要件で可 |
重要: 選挙運動期間中は、政治活動用の文書についても一定の制限が課される場合があります。告示後だからといって政治活動用文書が完全に自由になるわけではありません。
このテーマで使う条文一覧
| 条文 | 法令 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 公職選挙法第86条 | 公職選挙法 | 周辺 | 候補者の届出 |
| 公職選挙法第129条 | 公職選挙法 | 中核 | 選挙運動の期間(告示日〜投票前日)・事前運動の禁止・投票日当日の選挙運動禁止 |
| 公職選挙法第137条の2 | 公職選挙法 | 周辺 | 18 歳未満の者の選挙運動禁止 |
| 公職選挙法第138条 | 公職選挙法 | 中核 | 戸別訪問の禁止(告示前後問わず) |
| 公職選挙法第142条 | 公職選挙法 | 中核 | 文書図画の制限(ポスター・ビラの規格・枚数) |
| 公職選挙法第142条の4 | 公職選挙法 | 周辺 | 選挙運動用メールの送信主体制限 |
| 公職選挙法第142条の6 | 公職選挙法 | 中核 | 有料インターネット広告の禁止 |
| 公職選挙法第201条の6 | 公職選挙法 | 周辺 | 政治活動の自由の確保 |
| 公職選挙法第221条 | 公職選挙法 | 中核 | 買収及び利害誘導罪(告示前後問わず) |
| 公職選挙法第239条 | 公職選挙法 | 周辺 | 選挙運動の制限違反の罰則 |
まとめ
- 告示日(公示日)が 選挙運動の解禁日 です。告示前の選挙運動は「事前運動」として禁止されています(公職選挙法第129条)
- 告示前でも 政治活動(特定の選挙・候補者への投票目的のない活動)は一定の範囲で許容されますが、選挙との近接性・態様によっては事前運動と評価され得ます
- 告示後に解禁されるのは主に 投票依頼・選挙運動用ポスター・ビラ・ウェブサイト等での呼びかけ です
- 戸別訪問(第138条)・有料インターネット広告(第142条の6)・買収(第221条)等の個別禁止規定は告示後も有効に存続します
- 告示後であっても 「何でも解禁」ではありません。解除されるのは選挙運動の期間規制のみです
- 告示日当日は 候補者届出の完了後 から選挙運動を開始できます
- 投票日当日 は選挙運動が全面禁止されます(第129条)。既存 SNS 投稿のリポスト・シェアも選挙運動と評価される可能性があります
- 18 歳未満の者は告示前後・投票日当日を問わず選挙運動禁止です(第137条の2)
- 同じ行為でも告示前後・選挙との近接性・表現の内容によって適法性が変わります
告示前後の具体的な行為の適法性は個別の事実関係によって異なるため、選挙管理委員会または弁護士への確認をおすすめします。
関連ガイド
- 選挙運動とは何か ← 選挙運動の定義・期間・3 要素はこちら
- SNS と選挙運動の規制
- 選挙違反になるケース
- 有料広告の規制