公職選挙法の違反は「買収・利害誘導等の悪質な違反」と「選挙運動の方法・時期・主体・媒体の規制違反」に大別されます。違反の態様によって罰則の重さが異なるだけでなく、候補者本人が関与していなくても、関係者の違反によって 当選が無効 となる連座制が適用される場合があります。さらに、多くの選挙違反は 故意 で成立し、「知らなかった」という弁明は違反の成否に直接影響しない傾向にあります。この記事では、選挙違反の主要類型・罰則・連座制の仕組みを条文とともに解説します。
カテゴリ:公職選挙法 / 種別:制度型・ルール整理型・制度機能型派生(規制機能 vs 違反類型)
関連条文:(本法)公職選挙法第129条・第138条・第142条・第221条・第222条・第225条・第235条・第239条・第251条の2
本記事の主軸: 選挙違反を 「違反類型(買収/時期違反/方法違反/文書図画違反/媒体違反/なりすまし・虚偽)・罰則の重さ・連座制の適用可能性・対処ルート(刑事/行政)」 の 4 軸で整理する。05005 v6(名誉毀損の要件+違法性阻却型)と異なり、多数の禁止規定の機能的整理 が中核となる。
全体俯瞰(3 階層整理)
ここでは記事全体の要点を 3 階層で整理します。この節だけ読めば選挙違反規制の核心が把握できる構造 にしてあり、詳細は以下の各セクションで段階的に展開します。
【レベル 1:核】選挙違反規制が守るもの(制度保護目的のマッピング)
選挙違反規制の核心は「選挙の公正と民主主義の健全な機能を守ること」です。違反類型ごとに、保護されている 制度価値 が異なります:
| 違反類型 | 守っている制度価値 | 制度破壊力 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 買収・利害誘導 | 投票の自由(金銭による意思の歪曲防止) | 極大(投票結果そのものを歪める) | 第221条 |
| 虚偽事項の公表・なりすまし | 有権者の判断材料の正確性保護 | 高(誤った情報で判断が歪む) | 第235条・第142条の5 |
| 有料インターネット広告違反 | 資金力格差の選挙結果への影響防止 | 中〜高(経済力差が拡声器の差になる) | 第142条の6 |
| 事前運動 | 選挙運動期間の公平(資金力・知名度差の影響を限定) | 中(期間設計の前提が崩れる) | 第129条 |
| 戸別訪問 | 個別圧力からの自由(プライバシー領域での説得阻止) | 中(個別圧力のリスク) | 第138条 |
| 文書図画違反 | 候補者間の情報量公平(無制限な物量勝負の防止) | 中(物量による不公平の発生) | 第142条・第143条 |
| 18 歳未満の選挙運動 | 未成年者の政治的判断形成への保護 | 中(判断形成過程への影響) | 第137条の2 |
→ つまり選挙違反規制は 「禁止規定の集合」ではなく、6 つの制度価値を多面的に守る防衛網 として理解されます。「なぜその違反が禁止されているか」の答えはこの表に集約されています。制度破壊力の差が、罰則の重さの差 として反映されています(買収が突出して重い理由は「投票結果そのものを歪める」極大の破壊力にあります)。
【レベル 2:構造】判定の 3 軸
判定は 「違反類型・制裁強度・連座制適用」 の 3 軸の組合せで確定します:
| 軸 | 内容 |
|---|---|
| 違反類型 | 6 類型(買収/事前運動/戸別訪問/文書図画/インターネット規制違反/なりすまし・虚偽) |
| 制裁強度 | 拘禁刑(年数)+ 罰金(金額)の組合せで序列化(買収が最重) |
| 連座制適用 | 候補者本人の関与を問わず当選が無効となる範囲(出納責任者・親族・組織的選挙運動管理者等) |
3 軸の組合せによって 同じ行為でも処罰の重さが変わります。特に 連座制の適用 は刑事罰よりも候補者へのインパクトが重い場合があります(当選無効・5 年間の立候補制限)。
【レベル 3:例外】誤解されやすい 3 点
直感に反して結論が変わる 3 つの典型的誤解を最初に潰しておきます:
- 「自分は何もしていない」≠ 免責 — 候補者本人が違反していなくても、関係者(出納責任者・親族・組織的選挙運動管理者等)の買収等によって、連座制により候補者の当選が無効 になる場合があります(第251条の2)。
- 「知らなかった」≠ 故意なし — 多くの選挙違反は 行為の客観的態様 で判断される傾向にあり、「知らなかった」「悪気はなかった」「少額だから問題ない」という弁明は違反の成否に直接影響しない場合があります。
- 「もらった側だから処罰されない」≠ 真 — 買収を受けた側(被買収)も処罰対象になり得ます(第221条第1項第4号)。早期届出で軽減の場合がある とされていますが、自動的に免責されるわけではありません。
違反の重複構造(1 行為 = 複数違反)
→ 選挙違反は「1 つの行為が複数の違反類型に同時に該当する」ことが頻繁にあります。 結果として 罰則・連座制の適用が累積 する可能性があるため、独立セクションとして可視化します。
| 1 つの行為 | 重複する違反類型 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|
| 告示前の SNS 有料広告 | 事前運動 + 有料インターネット広告 | 第129条 + 第142条の6 |
| 虚偽内容のビラ配布 | 文書図画違反 + 虚偽事項の公表 | 第142条 + 第235条 |
| 買収の申込みのための戸別訪問 | 買収・利害誘導 + 戸別訪問 | 第221条 + 第138条 |
| 告示前の戸別訪問による投票依頼 | 事前運動 + 戸別訪問 | 第129条 + 第138条 |
| 18 歳未満の有料インターネット広告 | 18 歳未満の選挙運動 + 有料インターネット広告 | 第137条の2 + 第142条の6 |
| 候補者なりすましアカウントでの虚偽投稿 | なりすまし + 虚偽事項の公表 | 第142条の5 + 第235条 |
| 投票日当日の SNS 投稿のブースト | 投票日当日の選挙運動 + 有料インターネット広告 | 第129条 + 第142条の6 |
重要(重複違反の効果): 1 つの行為が複数の違反類型に該当する場合、それぞれの罰則が独立に適用される可能性 があります。さらに、連座制対象違反(買収等)が含まれる場合は、その重複違反全体が連座制適用ルートに乗る 可能性があります。「軽い違反だから 1 つくらい大丈夫」という判断が、実は 複数違反の同時成立 によって重大な結果を招くことがある点に注意が必要です。
実務上の含意: 違反該当性を確認する際は 6 類型のいずれか一つ ではなく、6 類型すべてに該当しないか を順番に確認する必要があります(→ 後述「判断フロー①」を参照)。
制度の具体ルール(6 違反類型の詳細)
→ 全体俯瞰の【レベル 2:構造】で示した「違反類型・制裁強度・連座制適用」の 3 軸について、ここから 6 つの違反類型ごとの具体的内容・誤解防止のための補足を展開します。
最短理解: 選挙違反は「①買収・利害誘導(最重・連座制対象・第221条)」「②事前運動(時期違反・第129条)」「③戸別訪問(方法違反・第138条)」「④文書図画違反(媒体違反・第142条)」「⑤インターネット規制違反(第142条の3〜6)」「⑥なりすまし・虚偽事項(第142条の5・第235条)」の 6 類型に大別される。
重要(連座制の核心): 候補者本人が違反を犯さなくても、出納責任者・親族・組織的選挙運動管理者等の関係者が買収等で禁錮以上の刑(拘禁刑一本化後は拘禁刑)を受けると、候補者の当選が無効となり、同一選挙区で 5 年間の立候補制限がかかる場合があります(第251条の2)。「自分は何もしていない」では責任を免れない構造で、選挙運動関係者への管理・監督責任 が候補者に課されています。
重要(故意の核心): 多くの選挙違反は故意で成立 し、「知らなかった」「悪気はなかった」「少額だから問題ない」という弁明は違反の成否に直接影響しない場合があります。違反該当性は 行為の客観的態様 で判断される傾向にあり、金額の多寡や名目(「お礼として」「実費弁償として」等)は対価性が認められれば違反の成立を妨げません。
※補足①: 金品を受け取った側(被買収)も処罰対象 になり得ます(第221条第1項第4号)。ただし、自首または早期届出 によって処罰が軽減される場合があるとされており、受け取ってしまった場合は早期に警察・弁護士に相談することが重要です。「もらった側は処罰されない」という理解は誤りです。
※補足②: 戸別訪問の禁止は形式にかかわらず広く解釈 されます(第138条)。住居だけでなく 職場・店舗・事業所等を個別に回って投票を依頼する行為 も戸別訪問に該当する場合があります。「電話・SNS の DM なら戸別訪問ではない」という単純化も誤解で、態様によっては別の規制(電話による依頼の制限等)に抵触する場合があります(インターネット関連の詳細は SNS と選挙運動の規制 を参照)。
※補足③: 「事実を述べただけ」でも虚偽事項の公表罪・名誉毀損が成立する場合 があります(第235条・刑法第230条)。候補者の経歴・身分・所属政党等について 当選を得させない目的(落選運動目的) で虚偽の情報を公表する行為は禁止されており、SNS 上のリポスト・引用も含めて広く対象になり得ます。事実摘示の場合の判断構造は 名誉毀損とネット誹謗中傷 を参照してください。
こんな方へ
- どのような行為が選挙違反になるか確認したい
- 買収・饗応・戸別訪問等の違反の境界線を知りたい
- 連座制とは何か・どういう場合に候補者の当選が無効になるか確認したい
- 選挙違反を受けた場合・目撃した場合の対処法を知りたい
- SNS での発言・拡散が違反になるケースを知りたい
- 「うっかり違反」にならないよう注意点を整理したい
この記事でわかること
- 選挙違反の主な 6 類型(買収・事前運動・戸別訪問・文書図画・インターネット規制・なりすまし/虚偽)
- 各違反の罰則の重さ(拘禁刑一本化反映済み)
- 連座制の仕組みと当選無効の効果
- 選挙違反を目撃・受けた場合の対処ルート(刑事/行政)
- 故意・対価性等の判断要素
- 拘禁刑一本化(令和 7 年(2025 年)6 月 1 日施行)の反映
結論:選挙違反は「悪質違反(買収等)」と「規制違反(時期・方法・主体・媒体)」に大別。買収は連座制で候補者当選無効につながる
根拠条文:公職選挙法第221条(買収及び利害誘導罪)・公職選挙法第251条の2(連座制)
| 違反類型 | 主な例 | 罰則の目安 | 連座制 |
|---|---|---|---|
| ①買収・利害誘導 | 金品・饗応・利益供与 | 3 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金(第221条) | 適用 |
| ②事前運動 | 告示前の投票依頼 | 1 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金(第239条) | 原則非適用 |
| ③戸別訪問 | 投票依頼のための個別訪問 | 1 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金(第239条) | 原則非適用 |
| ④文書図画違反 | 法定外ビラ・ポスター | 2 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金(第243条) | 原則非適用 |
| ⑤インターネット規制違反 | 一般有権者の有料広告・なりすまし | 2 年以下の拘禁刑または 30〜50 万円以下の罰金 | 原則非適用 |
| ⑥なりすまし・虚偽事項 | 候補者を装った投稿・経歴詐称 | 2 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金(第235条・第235条の5) | 場合により適用 |
重要: 違反の重さは ①>④≒⑤≒⑥>②≒③ の順で、買収・利害誘導が突出して重く、連座制の対象 になっています。違反の成否は個別の事実関係(態様・金額・対価性・故意の有無等)の総合判断によります。判断に迷う行為は事前に選挙管理委員会または弁護士への確認が必要です。時期判定の詳細は 告示前・告示後の違い を、選挙運動の定義は 選挙運動とは何か を、インターネット関連は SNS と選挙運動の規制 を参照してください。
今すぐやること
- 行おうとしている行為が 6 類型のいずれかに該当しないか確認する(買収/時期/方法/文書図画/媒体/なりすまし)
- 金品授受を伴う行為を避ける(金額の多寡・名目にかかわらず対価性が認められれば違反の可能性)
- 告示日(公示日)を確認する(事前運動と選挙運動の境界)
- 選挙運動の関係者の範囲を整理する(連座制対象者:出納責任者・親族・組織的選挙運動管理者等)
- 判断に迷う行為は事前に選挙管理委員会または弁護士へ確認する
判断フロー①:選挙違反該当性の類型判定(買収・期間・方法・主体・媒体/公職選挙法第129条・第138条・第142条・第221条関連)
この行為は公職選挙法違反に該当する可能性があるか?
①買収・利害誘導の判定(最重要・最重)
- 投票・選挙運動の対価として金品・食事・便宜を供与する買収罪に該当する可能性があります([第221条](/law/325AC1000000100/#article-221))
- 「当選したら仕事を回す」等の利益約束をする利害誘導に該当する可能性があります
- 金品を受け取った(買収された側)受取側も処罰対象になり得ます(早期届出で軽減の場合あり)
②事前運動の判定(時期違反)
- 告示日(公示日)前に「○○候補に投票してください」と呼びかける事前運動に該当する可能性があります([第129条](/law/325AC1000000100/#article-129)・[第239条](/law/325AC1000000100/#article-239))
- 告示前に候補者名・顔写真入りビラを配って支持を求める同上
※ 「①〜⑥」は独立に判定する必要があります。1 つの行為が複数類型に該当する場合(例:告示前の有料広告 = 事前運動 + インターネット規制違反)もあり得ます。判断に迷う行為は事前に選挙管理委員会への確認を推奨します。
判断フロー②:連座制の適用判定および違反受理時の対処ルート(公職選挙法第251条の2関連)
連座制が適用される条件は何か。違反を受けた・目撃した場合どう対処すべきか?
連座制の適用条件
- 出納責任者・候補者の親族(配偶者・父母・子)・組織的選挙運動管理者等が買収等の違反を行った連座制の対象になり得ます([第251条の2](/law/325AC1000000100/#article-251-2))
- これらの関係者が禁錮以上の刑(拘禁刑)の判決を受けた候補者の当選が無効になり、同一選挙区で 5 年間の立候補制限がかかる場合があります
- 候補者本人が違反に関与していなくても適用される関係者への管理・監督責任が候補者に課されます
違反を受けた・目撃した場合の対処ルート
- 買収の申し出を受けた・金品を受け取った警察に届け出ることができます(早期届出で処罰軽減の場合あり)
- 選挙違反を目撃した警察に通報することができます(証拠の保全:写真・録音・メモ等)
- 選挙の効力に関する不服選挙管理委員会への異議申出・選挙争訟(裁判所)の各ルートがあります
※ 連座制の適用範囲は個別の判決内容・関係者の地位によって異なります。当選無効になった場合の影響は重大で、候補者は同一選挙区で 5 年間立候補できなくなる場合があります。違反の申告・対処は弁護士への相談が実務上重要です。
① 買収・利害誘導(最も重大な違反類型)
→ 投票・選挙運動の対価として金品・食事・利益を供与する行為は、選挙違反の中で最も重く扱われます。
根拠条文:公職選挙法第221条(買収及び利害誘導罪)・公職選挙法第222条(多数人買収罪等)
買収の主な形態
| 行為 | 内容 |
|---|---|
| 投票買収 | 特定候補への投票の対価として金品・食事等を供与する |
| 運動員買収 | 選挙運動をしてもらう対価として金品等を供与する(実費弁償の範囲を超えた場合) |
| 利害誘導 | 公私の利益の供与・供与の申込み・承諾によって投票を誘導する |
| 饗応接待 | 投票や選挙運動の対価として食事・飲食を供与する |
罰則(拘禁刑一本化反映)
- 供与した側(買収した側): 3 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金(第221条)
- 受け取った側(被買収): 3 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金
注意: 金額の多寡や名目にかかわらず、投票や選挙運動の対価性が認められる場合には買収に該当する可能性があります。「少額だから」「お礼として渡した」「実費弁償として渡した」という弁明は違反の成否に直接影響しない場合があります。金品を受け取っただけでも処罰対象 となり得ますが、自首または早期届出で処罰が軽減される場合があるとされています。
連座制との関係
買収・利害誘導が 選挙運動の組織的関与者(出納責任者・親族・組織的選挙運動管理者等)によって行われた場合、候補者本人が関与していなくても 当選が無効 となる連座制が適用される場合があります(後述⑤)。
② 事前運動(時期違反)
→ 告示(公示)前に選挙運動に当たる行為を行うことは禁止されています。
根拠条文:公職選挙法第129条(選挙運動の期間)
事前運動に該当し得る行為
- 告示前に「○○候補に投票してください」と呼びかける
- 告示前に候補者名・顔写真入りのビラを配布して支持を求める
- 告示前に SNS に「当選させてください」と投稿する
罰則
1 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金(第239条)
告示前の「政治活動」との区別: 告示前であっても、政策の訴えや後援会の活動として行われる場合は、事前運動に該当しないとされる場合があります。ただし、選挙との近接性・内容によってグレーゾーンが生じます。詳細は 告示前・告示後の違い を参照してください。
③ 戸別訪問の禁止(方法違反)
→ 投票を依頼するために個別に家庭・職場等を訪問することは禁止されています。
根拠条文:公職選挙法第138条(戸別訪問の禁止)
戸別訪問とは
投票依頼・選挙運動を目的として、個別に有権者の家庭・事業所・団体等を訪問する行為をいいます。戸別訪問は 形式にかかわらず広く解釈 される傾向があり、訪問の態様によっては違反と評価される場合があります。
禁止される行為の例:
- 「○○候補への投票をお願いします」と個別の住居を訪問する
- 職場を回って支持を依頼する
- 個別の飲食店・商店を訪問して投票を依頼する
禁止されないとされる行為の例:
- 政策を聞きに来た有権者に対応する(受動的な対話)
- 通常の街頭演説(不特定多数への呼びかけ)
- 電話による投票の依頼(戸別訪問には該当しないとされていますが、態様によっては別の規制対象になり得ます)
罰則
1 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金(第239条)
④ 文書図画の制限(媒体違反)
→ 選挙運動に使用できる文書・印刷物(ビラ・ポスター等)の種類・規格・枚数は法律で制限されています。
根拠条文:公職選挙法第142条〜第147条
主な制限内容
| 文書の種類 | 制限の内容 |
|---|---|
| 選挙運動用ビラ | 種類・枚数・規格が法律で定められています(選挙の種類によって異なる) |
| 選挙運動用ポスター | 掲示できる場所・枚数等が制限されています |
| 政治活動用ビラ | 選挙運動期間中の頒布制限があります |
違反の例
- 法定枚数を超えるビラを配布する
- 法定規格外のポスターを掲示する
- 候補者名・顔写真を使って法定外の方法で投票を依頼する
罰則
2 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金(第243条)
ポスター規制の詳細は 選挙ポスターの規制 を参照してください。
⑤ 連座制(候補者本人が知らなくても当選無効)
→ 候補者の関係者が買収等の重大な違反を犯した場合、候補者本人が無関係であっても当選が無効となる場合があります。
根拠条文:公職選挙法第251条の2〜第251条の5(連座制)
連座制が適用される条件
関与者の範囲(連座対象者):
- 出納責任者
- 候補者の配偶者・父母・子
- 組織的選挙運動管理者等(いわゆる「選対の中心人物」)
違反の種類:
連座制の効果
連座対象者が上記の違反で 有罪判決(禁錮以上、拘禁刑一本化後は拘禁刑) を受けた場合、候補者は 当選無効・立候補制限(同一選挙区での 5 年間の立候補禁止)となる場合があります。
重要: 候補者本人が違反に関与していなくても連座制が適用される点が制度の核心です。選挙運動を行う関係者への管理・監督 が候補者に求められます。
⑥ インターネット・なりすまし・虚偽事項関連の違反
→ 2013 年の公職選挙法改正でインターネットを使った選挙運動が解禁されましたが、一部の規制は残っています。さらに、なりすまし・虚偽事項の公表は依然として強く禁止されています。
根拠条文:公職選挙法第142条の3〜第142条の6・第235条・第235条の5
現在も禁止されている主な行為
| 違反行為 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 一般有権者の有料インターネット広告 | 候補者・政党等以外の者による有料広告での選挙運動の禁止 | 第142条の6 |
| 一般有権者の電子メール選挙運動 | 候補者・政党等以外の者が選挙運動用メールを送信することの禁止 | 第142条の4 |
| なりすまし | 候補者を装った投稿・偽サイト等 | 第142条の5 |
| 18 歳未満の選挙運動 | SNS 投稿を含めて選挙運動全般を禁止 | 第137条の2 |
| 虚偽事項の公表 | 候補者の経歴・身分等の虚偽情報の公表(当選/落選目的) | 第235条 |
SNS の投稿・リポスト(拡散): SNS の投稿やリポストは「ウェブサイト等を利用する方法」として解禁されていますが、有権者による拡散であっても内容・文脈によっては別の規制(買収・虚偽事項の公表等)に違反する可能性 があります。詳細は SNS と選挙運動の規制 を参照してください。
罰則
⑦ 拘禁刑一本化(令和 7 年(2025 年)6 月 1 日施行)
→ 令和 4 年(2022 年)の刑法改正により、令和 7 年(2025 年)6 月 1 日から従前の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に統一されました。
※拘禁刑一本化について: 令和 4 年(2022 年)法律第 67 号(刑法等の一部を改正する法律)により、令和 7 年(2025 年)6 月 1 日から従前の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に統一されました。本記事の罰則記述はすべて施行後の表記によります。連座制における「禁錮以上の刑」の判定も、施行後は「拘禁刑以上」と読み替えて運用されます。
このテーマで使う条文一覧
| 条文 | 法令 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 公職選挙法第129条 | 公職選挙法 | 中核 | 選挙運動期間の制限(事前運動の禁止) |
| 公職選挙法第138条 | 公職選挙法 | 中核 | 戸別訪問の禁止 |
| 公職選挙法第142条 | 公職選挙法 | 中核 | 文書図画の制限 |
| 公職選挙法第142条の4 | 公職選挙法 | 中核 | 電子メールによる選挙運動の規制 |
| 公職選挙法第142条の5 | 公職選挙法 | 中核 | なりすまし等の禁止 |
| 公職選挙法第142条の6 | 公職選挙法 | 中核 | 有料インターネット広告の禁止 |
| 公職選挙法第221条 | 公職選挙法 | 中核 | 買収及び利害誘導罪 |
| 公職選挙法第235条 | 公職選挙法 | 中核 | 虚偽事項の公表罪 |
| 公職選挙法第239条 | 公職選挙法 | 中核 | 選挙運動に関する罰則(事前運動・戸別訪問等) |
| 公職選挙法第243条 | 公職選挙法 | 周辺 | 文書図画違反の罰則 |
| 公職選挙法第251条の2 | 公職選挙法 | 中核 | 連座制(当選無効・立候補制限) |
まとめ
- 選挙違反は 6 類型(買収・事前運動・戸別訪問・文書図画違反・インターネット規制違反・なりすまし/虚偽事項)に大別されます
- 買収・利害誘導は最も重い違反で 3 年以下の拘禁刑等の対象になり得ます(第221条)。受け取った側も処罰対象 ですが、早期届出で軽減の場合があるとされています
- 連座制により、候補者の関係者(出納責任者・親族・組織的選挙運動管理者等)が買収等を犯した場合、候補者の 当選が無効 になる場合があります(第251条の2)。「自分は何もしていない」では責任を免れない構造
- 事前運動(告示前の選挙運動)・戸別訪問は 1 年以下の拘禁刑等の対象になり得ます
- 文書図画違反・有料インターネット広告(一般有権者)・なりすまし・虚偽事項の公表は 2 年以下の拘禁刑等の対象になり得ます
- 多くの選挙違反は故意で成立 し、「知らなかった」「悪気はなかった」という弁明は違反の成否に直接影響しない場合があります
- 違反を目撃した場合は 警察への通報・証拠の保全 が重要です
- 拘禁刑一本化(令和 7 年(2025 年)6 月 1 日施行)により従前の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に統一されています
選挙違反の成否・対処方法は個別の事実関係によって異なるため、具体的な判断については弁護士または選挙管理委員会への相談をおすすめします。
関連ガイド
- 選挙運動とは何か ← 選挙運動の定義・3 要素・主体規制はこちら
- SNS と選挙運動の規制 ← インターネット関連違反の詳細はこちら
- 有料広告の規制 ← 有料広告違反の詳細はこちら
- 告示前・告示後の違い ← 時期違反の境界判断はこちら
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