05-06 · 生活トラブル · 横断型④適用判断

ストーカー規制法の保護範囲|規制対象行為・警告・禁止命令・罰則

ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、「つきまとい等」の行為を反復して行う「ストーカー行為」を規制し、被害者を保護する法律です。2021年・2022年の改正により、GPS機器を用いた位置情報の取得やSNSを通じた連続送信等も規制対象に追加されました。この記事では、規制対象行為の範囲・警告・禁止命令・罰則の仕組みを条文とともに解説します。

こんな方へ

  • 受けている行為がストーカー規制法の対象か確認したい
  • 警告・禁止命令の申請方法を確認したい
  • SNSでの連続メッセージ・GPS追跡が規制対象か確認したい
  • ストーカー被害を受けた場合の対処の流れを知りたい
  • 自分の行為がストーカー規制法に違反しないか確認したい

この記事でわかること

  • ストーカー規制法の「つきまとい等」の8類型
  • 「ストーカー行為」の成立要件(反復継続性)
  • 警告・禁止命令の手続きと効果
  • 令和3年(2021年)改正・令和4年(2022年)改正で追加された規制(GPS・SNS等)
  • 被害を受けた場合の対処の流れ

結論:ストーカー規制法は「つきまとい等」を反復することで「ストーカー行為」が成立。警告・禁止命令・刑事罰の3段階で対応する

最短理解:ストーカー規制法は「つきまとい等8類型 + 反復 + 目的要件(恋愛感情等)」で「ストーカー行為」が成立し、警告・禁止命令・刑事罰の3段階で対応する

根拠条文:第2条(定義)・第18条第19条(罰則)

段階内容根拠条文
つきまとい等8類型の行為を行うこと(1回でも問題となり得る)第2条第1項
ストーカー行為つきまとい等を反復して行うこと第2条第3項
警告警察本部長等による警告(行政的対応)第4条
禁止命令等公安委員会による禁止命令(行政処分)第5条
罰則(ストーカー行為)1年以下の懲役または100万円以下の罰金第18条
罰則(禁止命令違反)2年以下の懲役または200万円以下の罰金第19条

重要: 「つきまとい等」は1回の行為でも行政指導や相談対応の対象となり得ますが、刑事罰の対象となる「ストーカー行為」には反復継続性が必要とされています。

本記事の主軸:ストーカー規制法第2条の「つきまとい等」8類型該当性と「ストーカー行為」(反復継続性)の判断。本記事は適用判断を中心とし、警告・禁止命令・刑事罰の段階的対応の概要、関連法令(迷惑防止条例・刑法・不法行為)との接続を扱います。身の危険を感じる場合は迷わず110番通報を、その他の場合も警察の相談窓口(ストーカー相談)への早期相談を推奨します

今すぐやること

  1. 証拠を保存する(メッセージ・着信履歴・GPS取得の痕跡・監視告知の記録等)
  2. 行為が「つきまとい等」8類型に該当するか確認する(判断フロー参照)
  3. 目的要件(恋愛感情等の充足・怨恨の感情)を満たすか確認する(職場ハラスメント等は対象外の場合あり)
  4. 身の危険を感じる場合は迷わず110番通報する
  5. 警察の相談窓口(ストーカー相談)に早期相談する(警告・禁止命令の申請が可能)

判断フロー:ストーカー規制法の適用判断(第2条)

この行為はストーカー規制法の規制対象(つきまとい等)に当たるか?

NOTE: 8類型の詳細は「① 『つきまとい等』の8類型」、令和3年改正(SNS連続送信)・令和4年改正(GPS位置情報無承諾取得等)の追加類型は「③ 令和3年(2021年)改正・令和4年(2022年)改正のポイント」、目的要件の注意点は「⑥ 『目的要件』の注意点」、警告・禁止命令の段階的対応は「④ 警告・禁止命令の仕組み」、罰則は「⑤ 罰則」を参照してください。各要件は形式的に判断されるものではなく、行為全体の状況(態様・目的・関係性・頻度・文脈等)を踏まえて総合的に評価されます。

対処フロー:ストーカー被害を受けた場合の対応

ストーカー被害を受けた場合、どう対応するか?

まず行うこと

  • 証拠を保存する(メッセージ・着信履歴・監視の記録等)相談・申請の際に必要となります
  • 警察の相談窓口(ストーカー相談)に相談する警告・禁止命令の申請が可能です

警告の申請(第4条)

  • 被害者が警察本部長等に警告を求めることができます警察による警告が発出される場合があります

※ 身の危険を感じる場合は、迷わず110番通報してください。

① 「つきまとい等」の8類型

ストーカー規制法第2条第1項は、規制対象となる「つきまとい等」の行為を8類型に分けて定めています。

根拠条文:第2条第1項

類型の詳細

第1号:つきまとい・待ち伏せ等 被害者またはその関係者の住所・職場・学校等において、つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住所等の付近をうろつく行為

第2号:監視の告知 被害者の行動を監視していると思わせるような事項を告知する行為

第3号:面会・交際等の要求 面会・交際・交際回復等の要求を行う行為

第4号:乱暴な言動 著しく粗野・乱暴な言動を行う行為

第5号:連続連絡(令和3年(2021年)改正で拡充) 無言電話・連続電話・FAX・電子メール・SNS等での連続送信。令和3年(2021年)改正でSNS・ブログ等への連続メッセージや文書送信等が追加されました。

第6号:汚物等の送付 汚物・動物の死体等の不快感・嫌悪感を生じさせる物を送付する行為

第7号:名誉を害することの告知 名誉を害する事項を告知する行為

第8号:性的羞恥心を害する送付等 性的羞恥心を害する文書・図画等を送付する行為

② 「ストーカー行為」の成立要件(反復継続性)

刑事罰の対象となる「ストーカー行為」は、つきまとい等を「反復して」行うことが必要とされています。

根拠条文:第2条第3項

反復継続性の意味

原則として1回のつきまとい等はストーカー行為には該当しないとされています。ただし、行為の内容によっては脅迫罪・住居侵入罪等の他の犯罪が成立する可能性があります。また、1回の行為でも警察への相談・警告の申請は可能です。

「反復」の判断: 何回で「反復」に当たるかについて、条文上の明確な基準はありません。行為の態様・頻度・期間等を総合して判断されるとされています。

「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような」要件

ストーカー行為の成立には、被害者が「不安を覚えさせるような」行為であることも要件とされています。被害者の主観だけでなく、客観的に見て不安を生じさせる程度かどうかが判断されます。

③ 令和3年(2021年)改正・令和4年(2022年)改正のポイント

2021年・2022年の改正により、デジタル技術を利用した新たな形態のストーカー行為が規制対象に追加されました。

令和3年(2021年)改正の主な内容

  • SNS・ブログ等への連続書き込みの追加: 電子メールに加え、SNSのメッセージ機能・ブログのコメント等での連続送信が第2条第1項第5号の規制対象に追加されました

令和4年(2022年)改正の主な内容

  • 位置情報無承諾取得等の追加(第2条第2項): GPS機器・機能を用いて承諾なく位置情報を取得・記録する行為等が、新たに「位置情報無承諾取得等」として規制対象に追加されました

注意: 令和4年(2022年)改正で追加された「位置情報無承諾取得等」は、「つきまとい等」とは別の規制類型として設けられており、独立に違法となる場合があります。恋愛感情等の目的要件との関係も含め、詳細は警察の相談窓口への確認を推奨します。

④ 警告・禁止命令の仕組み

ストーカー規制法は、警告・禁止命令という行政的手段で被害者を保護する制度を設けています。

根拠条文:第4条(警告)・第5条(禁止命令等)

事案の緊急性や内容により、警告・禁止命令・刑事対応はこの順序に限られず、並行または前後して行われる場合があります。

警告(第4条)

被害者の申出を受けて、警察本部長等が行為者に警告を発することができます。

  • 申出先:被害者の居住地・行為が行われた地を管轄する警察
  • 効果:警告自体に法的強制力はありませんが、行為者に自覚を促す効果が期待されます
  • 警告違反への刑事罰:警告単独では刑事罰の対象にはなりませんが、ストーカー行為が継続する場合は刑事告訴が可能です

禁止命令等(第5条)

公安委員会が行為者に対してつきまとい等を禁止する命令を発することができます。

  • 申出先:被害者が都道府県公安委員会に申出
  • 緊急の場合:警察本部長等が仮の禁止命令を行う場合があります
  • 禁止命令違反には刑事罰: 禁止命令に違反した場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金の対象となる可能性があります(第19条)

⑤ 罰則

ストーカー行為・禁止命令違反には刑事罰が定められています。

根拠条文:第18条第19条

違反の種類罰則
ストーカー行為(第18条)1年以下の懲役または100万円以下の罰金
禁止命令等に違反した場合(第19条)2年以下の懲役または200万円以下の罰金
禁止命令等に違反した場合(被害者が告訴した場合の加重)2年以下の懲役または200万円以下の罰金(告訴不要)

ストーカー行為罪は非親告罪: 2013年の改正により、ストーカー行為罪は非親告罪とされました。被害者の告訴がなくても検察官が起訴できます。

⑥ 「目的要件」の注意点

つきまとい等の行為が規制対象となるには、「恋愛感情等の充足またはその不満を晴らす目的」という目的要件が必要とされています。

根拠条文:第2条第1項

目的要件の意味

「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が必要とされています。恋愛感情等の有無は、関係性ややり取りの経緯等から客観的に判断されます。

注意: 職場のハラスメント・近隣トラブル等、恋愛感情等を背景としない行為は、ストーカー規制法の規制対象外となる場合があります。ただし、対象外となる場合でも、迷惑防止条例・脅迫罪・強要罪・不法行為等、他の法令により違法と評価される可能性があります。

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
第2条ストーカー規制法中核定義(つきまとい等・ストーカー行為・位置情報無承諾取得等)
第4条ストーカー規制法中核警告(被害者の申出→警察本部長等による警告)
第5条ストーカー規制法中核禁止命令等(公安委員会による禁止命令)
第18条ストーカー規制法中核ストーカー行為の罰則(1年以下の懲役等)
第19条ストーカー規制法中核禁止命令違反の罰則(2年以下の懲役等)

まとめ

  • ストーカー規制法の「つきまとい等」は8類型の行為を規制します(第2条第1項)
  • 反復継続することで刑事罰の対象となる「ストーカー行為」が成立します(1回では刑事罰の対象とはならないとされています)
  • 令和3年(2021年)改正でSNS連続送信、令和4年(2022年)改正でGPS位置情報取得が規制対象に追加されました
  • 規制対象となるには「恋愛感情等の充足または不満を晴らす目的」という目的要件が必要とされています。職場ハラスメント等は対象外となる場合がありますが、他の法令により違法と評価される可能性があります
  • 被害を受けた場合は警告(第4条)→禁止命令(第5条)→刑事告訴という段階的な対応が可能です
  • 禁止命令違反には2年以下の懲役と重い罰則が科される可能性があります(第19条)
  • 身の危険を感じる場合は迷わず110番し、そうでない場合も警察の相談窓口に早期に相談することを推奨します

ストーカー規制法の適用は、行為類型・目的・反復性を踏まえた総合評価により判断されます。具体的な行為がストーカー規制法の対象となるかどうかは個別の事情によって異なるため、警察の相談窓口または弁護士への相談をおすすめします。

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