10-06 · 建設業許可 · 手続系

建設業許可の法人成り時の手続|許可は引き継がれず新規申請が必要

個人事業主として建設業許可を取得している状態で法人を設立した場合、個人の許可は法人に自動的に引き継がれません。法人として建設業を継続するためには、法人名義で新たに建設業許可を申請する必要があります。この記事では、法人成り時に必要な手続き・注意点・個人許可の廃業届について解説します。

こんな方へ

  • 個人事業主として建設業許可を持っており、法人化を検討している
  • 法人成りをした場合、許可がどうなるか確認したい
  • 法人設立後に許可を取得するまでの空白期間の対処法を知りたい
  • 個人の許可の廃業届の手続きを確認したい
  • 経営業務管理責任者の経験が法人成り後も使えるか確認したい

この記事でわかること

  • 法人成り時に建設業許可が引き継がれない理由
  • 法人として新規申請が必要な手続きの流れ
  • 許可の空白期間(個人許可失効〜法人許可取得)の対処
  • 個人事業主としての経験が法人の経管・専技として使えるかどうか
  • 個人許可の廃業届の方法

結論:法人成りをしても建設業許可は引き継がれない。法人名義で新規申請が必要

根拠条文:建設業法 第3条第1項(許可の必要性)

項目内容
許可の引継ぎ引き継がれません。法人として新規申請が必要です
個人許可の扱い個人としては有効期間内であれば有効ですが、あくまで個人名義の営業に限られ、法人の事業には使用できません
法人として申請する要件新規申請と同じ5要件をすべて満たす必要があります
個人許可の廃業届法人設立後、遅滞なく提出することが必要とされます

最重要: 法人設立から法人の許可取得までの間は、法人として軽微な工事(500万円未満等)を超える建設工事を請け負うことはできません。この「空白期間」をどう対処するかが実務上の核心です。

今すぐやること

  1. 法人設立のタイミングと許可申請のスケジュールを把握する(申請から許可まで30〜90日程度かかる場合があります)
  2. 個人事業主としての経験が法人の経管・専技として使えるか確認する(使える場合が多いが証明書類が必要)
  3. 法人設立後すぐに許可申請の準備を開始する(空白期間を最小化するため)
  4. 申請先窓口に事前相談する(必要書類の詳細は都道府県によって異なります)
  5. 個人許可の廃業届を忘れずに提出する(法人設立後、遅滞なく)

判断フロー:法人成り時の許可の扱い

法人成りをした場合、建設業許可はどうなるか?

法人として工事を継続したい場合

  • 法人設立後すぐに建設業を継続したい
  • 法人として許可を取得するまでの期間

個人許可の扱い

  • 個人許可はどうなるか
  • 個人許可を廃業するタイミング

許可の引継ぎができないため、法人設立後に許可取得までの「空白期間」が生じます。この期間をどう管理するかが最重要の実務的課題となります。

① なぜ許可が引き継がれないか

建設業許可は「個人」または「法人」という許可の名義人に対して与えられるものです。法人は個人とは別の法人格を持つため、許可は自動的には引き継がれません。

根拠条文:建設業法 第3条第1項

建設業法では、建設業を営もうとする者が「個人か法人か」に応じて許可を受けることが定められています。法人成りによって事業を行う主体が「個人」から「法人(別の法人格)」に変わるため、法人は新たに許可を取得する必要があります。

他の許認可との比較: 飲食店の食品営業許可等と同様に、許可を受けた名義人(個人)が消滅・変更されると許可は引き継がれないとされています。これは建設業に特有の問題ではなく、許認可一般の原則に基づいています。

② 空白期間のリスクと対処

法人設立から法人の許可取得までの間は「空白期間」が生じます。この期間に法人として軽微な工事を超える建設工事を請け負うと、無許可営業として問題になる可能性があります。

根拠条文:建設業法 第3条第1項同法 第47条(無許可営業の罰則)

空白期間中の対処方法

対処方法内容
法人設立と同時に許可申請を開始する法人設立直後に申請準備・申請を行い、空白期間を最小化する
空白期間中は軽微な工事のみ行う500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満・延べ面積150㎡未満の木造住宅)の工事に限定する
個人として一定期間継続する(二重営業)個人許可を維持しつつ個人として工事を継続し、法人許可取得後に個人事業を廃止する(個人と法人の営業を並行して行う場合は、契約主体・請求名義・口座等を明確に分け、営業実態の混同が生じないよう管理する必要があります)

実務上のポイント: 法人設立と許可申請のタイミングを調整することが重要です。法人設立前に許可申請の準備を整えておき、法人設立直後に申請できる状態にしておくことで空白期間を最小化できます。

罰則について: 無許可営業に対する罰則は 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(建設業法第47条)。なお、刑法等の一部を改正する法律の施行(令和7年6月1日)により、従来の「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」に統一されました。

③ 法人として新規申請する際の要件

法人として許可を申請する場合も、新規申請と同じ5要件をすべて満たす必要があります。

根拠条文:建設業法 第7条(一般建設業の許可基準)

個人事業主の経験が法人の要件に使えるか

経営業務管理責任者(経管): 個人事業主として建設業を営んでいた経験は、法人の経管要件の経験として評価される場合があります。この場合、個人事業の実績を証明する書類(確定申告書・工事請負契約書等)が必要とされます。

専任技術者(専技): 個人事業主として蓄積した実務経験は、法人の専技の実務経験として評価される場合があります。証明書類(工事請負契約書・注文書・請求書等)が必要とされます。

注意: いずれも「証明できれば評価される場合がある」ものであり、証明が不十分な場合は要件を満たさないと判断される可能性があります。証明方法は都道府県によって異なるため、事前に申請先窓口に確認することを推奨します。

④ 必要書類(法人成り新規申請の特有書類)

法人成りによる新規申請では、法人設立に関する書類が追加で必要とされます。

法人設立に関する主な追加書類

書類内容
法人の登記事項証明書法務局発行。法人設立後に取得
定款の写し事業目的に建設業が含まれているか確認が必要
役員全員の住民票・身分証明書欠格要件確認のため

定款の確認: 定款の事業目的に「建設業」または「建設工事の請負」等の記載がない場合、定款変更が必要になる場合があります。法人設立前に確認することを推奨します。

個人事業の実績証明書類

経管・専技の要件を個人時代の経験で充足する場合は、以下のような書類が必要とされる場合があります(都道府県によって異なります):

書類内容
確定申告書(個人事業時代のもの)建設業を営んでいた期間の証明
工事請負契約書・注文書等実務経験の証明
個人事業の許可証の写し個人時代の建設業許可の証明

⑤ 個人許可の廃業届

法人成り後は、個人の建設業許可の廃業届を提出することが必要とされます。

根拠条文:建設業法 第11条第4項(廃業の届出)

廃業届の提出時期

廃業届は、廃業後30日以内に提出することが必要とされます。

法人許可取得前に廃業届を出す場合の注意: 個人許可の廃業届を出してしまうと、法人の許可が下りるまでの間は完全に無許可状態になります。実務上は法人許可取得後に廃業届を提出するケースが多いとされており、空白期間のリスクを軽減できます。

廃業届の提出先

個人として許可を受けた都道府県(または地方整備局等)の窓口です。

⑥ 法人成りのスケジュール例

事前準備(法人設立前)
  ├ 定款の事業目的に建設業を記載
  ├ 許可申請に必要な書類の準備(個人の実績証明等)
  └ 申請先窓口への事前相談

法人設立
  └ 登記完了後すぐに許可申請の書類を整える

法人名義の許可申請
  └ 法人設立後、できるだけ早く申請する

審査期間(30〜90日程度)
  └ この間は法人として軽微な工事のみ実施可能

法人の許可証交付
  └ 法人として全ての建設業の工事が可能になる

個人許可の廃業届の提出(30日以内)
  └ 法人許可取得後に個人の廃業届を提出する

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
第3条第1項建設業法(本法)中核許可の必要性(個人・法人それぞれの許可)
第6条建設業法(本法)中核許可申請書・添付書類
第11条第4項建設業法(本法)中核廃業の届出(廃業後30日以内)
第7条建設業法(本法)周辺許可基準(5要件)
第47条建設業法(本法)周辺無許可営業の罰則(3年以下の拘禁刑等)

まとめ

法人成りによる建設業許可の再取得は、個人と法人が別の法人格であることに基づく許可名義人の同一性原則から生じる手続です。建設業許可は人的許可として、名義人単位で与えられるため、名義人が変われば許可関係も新たに形成する必要があります。法人として新規申請を行い、参入適格性が再度事前審査されます。空白期間の管理・個人事業実績の活用・廃業届の各要素は、いずれもこの主体変更に伴う移行手続を構成します。

  • 法人成りをしても建設業許可は自動的に引き継がれません。法人名義での新規申請が必要です
  • 法人設立から許可取得までの「空白期間」が生じます。この間は軽微な工事(500万円未満等)のみ請け負えます
  • 空白期間を最小化するために、法人設立前から申請の準備を始めることが重要です
  • 個人事業主としての経営経験・実務経験は、適切に証明できれば法人の経管・専技の要件として評価される場合があります
  • 個人許可の廃業届は廃業後30日以内に提出することが必要とされます
  • 廃業届は法人の許可取得後に提出することで、空白期間のリスクを軽減できる場合があります
  • 定款の事業目的に建設業を記載することを法人設立前に確認することを推奨します
  • 必要書類・証明方法は都道府県によって異なります。申請先窓口への事前相談が必須です
  • 空白期間中の無許可営業は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となる可能性があります(令和7年6月1日施行の刑法等改正により「懲役」から「拘禁刑」に統一)

法人成り時の手続きは個別の事情(個人許可の有無・経験の証明方法等)によって大きく異なるため、申請先窓口への事前相談および行政書士等の専門家への確認をおすすめします。

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