06-04 · 不動産・土地 · 比較型・類型比較

抵当権と根抵当権の違い|担保の仕組み・付従性・元本確定の比較

抵当権とは、債務者が弁済できない場合に、担保として提供した不動産を競売等により換価して優先弁済を受ける権利です(民法第369条)。根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の範囲内で担保する継続的取引向けの担保権です(民法第398条の2)。抵当権は「特定の債権」を担保し、根抵当権は「一定範囲の不特定の債権」を担保する点で根本的に異なり、付従性・随伴性・実行手続に大きな差があります。この記事では、抵当権と根抵当権の主な違い・元本確定・実行手続を条文とともに解説します。

抵当権とは、債務者が弁済できない場合に、担保として提供した不動産を競売等により換価して優先弁済を受ける権利です(民法第369条)。根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の範囲内で担保する継続的取引向けの担保権です(民法第398条の2)。抵当権は「特定の債権」を担保し、根抵当権は「一定範囲の不特定の債権」を担保する点で根本的に異なり、付従性・随伴性・実行手続に大きな差があります。この記事では、抵当権と根抵当権の主な違い・元本確定・実行手続を条文とともに解説します。

カテゴリ:不動産・土地 / 種別:比較型・類型比較
関連条文:(本法)民法第369条・第373条・第375条・第379条・第388条・第398条の2・第398条の3・第398条の5・第398条の20・第398条の21・第398条の22/(手続)民事執行法第180条

本記事の主軸: 担保物権としての 「被担保債権の性質(特定/不特定)・付従性/随伴性の有無・極度額の有無・実行手続の流れ」 の 4 軸で、抵当権と根抵当権の 2 類型を比較整理する。06001 v6(借地権の種類)・03006 v7(解雇予告と即日解雇の違い)と同じ §12-3-A 類型比較構造。

最短理解: 抵当権と根抵当権は「①抵当権民法第369条・特定の債権を担保・付従性あり・随伴性あり・極度額なし)②根抵当権民法第398条の2・一定範囲の不特定の債権を担保・元本確定前は付従性/随伴性なし・極度額あり)」の 2 類型で根本的に異なる。

※補足: 根抵当権の 付従性・随伴性なし元本確定前 の特徴であり、元本確定後は抵当権に近い性質に転換します(民法第398条の20)。「全額弁済しても消えない」という性質は元本確定前の話であり、確定後は違います。

※補足: 根抵当権の 「極度額」は実際の借入額(借入枠)ではなく、優先弁済を受けられる担保上限額 です(民法第398条の5)。元本・利息・遅延損害金等の合計がこの上限を超えても、超えた部分には優先弁済が及びません。「極度額=借入限度額」と誤解しやすい点に注意してください。

※補足: 根抵当権は 現在発生している債務だけでなく、将来発生する継続取引上の債務も担保 します(民法第398条の2第1項)。これが「不特定の債権」を担保するという意味であり、設定時に被担保債権が確定する抵当権との根本的な違いです。「今ある借金だけが対象」と誤解しやすい点に注意してください。

こんな方へ

  • 住宅ローンの抵当権と銀行融資の根抵当権の違いを整理したい
  • 完済後も担保権が残る理由(根抵当権の場合)を確認したい
  • 「極度額」という登記簿の記載の意味を確認したい
  • 抵当権抹消登記の手続きを確認したい
  • 元本確定の意味と効果を整理したい

この記事でわかること

  • 抵当権と根抵当権の根本的な違い(特定債権担保 vs 不特定債権担保)
  • 付従性・随伴性・極度額の意味と効果
  • 元本確定の事由と効果(民法第398条の20
  • 抵当権の実行と担保不動産競売(民事執行法第180条以降)
  • 住宅ローン完済後の抵当権抹消登記の必要性
  • 根抵当権の消滅請求(民法第398条の22

結論:抵当権は「特定の債権」を担保。根抵当権は「一定範囲の継続的取引」を担保。目的と機能が根本的に異なる

根拠条文:(本法)民法第369条第1項(抵当権の内容)・民法第398条の2第1項(根抵当権の意義)

比較項目抵当権根抵当権
根拠条文民法第369条民法第398条の2
担保する債権特定の債権(住宅ローン1本等)一定の範囲の不特定の債権(継続的取引)
被担保債権の確定設定時に確定元本確定時(解約・競売申立等)に確定
付従性あり(債権消滅で抵当権も消滅)元本確定前はなし(確定後は付従性が生じる)
随伴性あり(債権譲渡で抵当権も移転)元本確定前はなし(確定後は抵当権に近い性質に転換)
極度額なし(被担保債権額が上限)あり(極度額が担保上限:第398条の5
主な用途住宅ローン・個人の借入れ銀行の継続的与信・企業融資
実行方法担保不動産競売(民事執行法第180条担保不動産競売(同左)

重要: 根抵当権は「付従性がない」(元本確定前)という点が最大の特徴です。一時的に全額弁済しても根抵当権は消滅せず、次の借入れの担保として継続使用できます。これが継続的取引に便利な理由です。一方、抵当権は完済すれば付従性により消滅しますが、登記は自動的に抹消されないため、別途抹消登記が必要です。

今すぐやること

  1. 登記簿(登記事項証明書)で担保権の種類を確認する(「抵当権」か「根抵当権」か・極度額の記載の有無)
  2. 被担保債権の特定状況を確認する(特定の借入れか・継続的取引枠か)
  3. 完済済みの場合は抵当権抹消登記を確認する(金融機関から「抵当権解除証書」等の受領)
  4. 根抵当権の場合は元本確定の有無を確認する(解約・取引終了の意思を金融機関と確認)
  5. 担保権の設定・変更・抹消は司法書士への相談を検討する

判断フロー:抵当権・根抵当権の性質判定(民法369条・398条の2)

この担保権は抵当権か根抵当権か?

登記簿の記載で確認

  • 登記の名称が「抵当権」と記載抵当権([民法第369条](/law/129AC0000000089/#article-369))
  • 登記の名称が「根抵当権」と記載 + 「極度額」の記載根抵当権([民法第398条の2](/law/129AC0000000089/#article-398-2))

被担保債権の性質で確認

  • 住宅ローン等の特定の借入れを担保抵当権の典型
  • 銀行との継続的な融資取引(手形貸付・当座貸越等)を担保根抵当権の典型

NOTE: 抵当権・根抵当権の登記内容や元本確定の有無は、登記事項証明書・金融機関との契約内容により判断されます。具体的な担保権の種類や効力については司法書士への相談を推奨します。

① 抵当権の仕組み(民法第369条

抵当権は、特定の債権(住宅ローン等)を担保するために不動産に設定される担保物権です。債務が消滅すれば抵当権も消滅します(付従性)。

根拠条文:(本法)民法第369条第398条

抵当権の主な特徴

特徴内容
占有移転不要抵当権設定後も債務者・所有者は不動産を使用・収益できる(非占有担保物権)
付従性被担保債権が消滅すれば抵当権も消滅する
随伴性被担保債権が譲渡されると、抵当権も一緒に移転する
優先弁済権競売等で得た代金から、後順位抵当権者・一般債権者に優先して弁済を受けられる
順位同一不動産上に複数の抵当権を設定可能(民法第373条:登記順位による)

優先弁済の範囲

抵当権者が優先弁済を受けられる範囲は、元本のほか、満期となった最後の 2 年分の利息・遅延損害金等に限定されます(民法第375条)。それ以前の利息・遅延損害金は一般債権として扱われます。

法定地上権(民法第388条

土地と建物が同一所有者に属し、土地または建物に抵当権が設定された場合、抵当権実行による競売で土地と建物の所有者が異なることとなったときは、建物のために 法定地上権 が成立します(民法第388条)。成立要件の判断は個別事情により争われることが多い論点です。

抵当権の実行

債務者が弁済できない場合、抵当権者は裁判所に 担保不動産競売の申立て を行い(民事執行法第180条)、不動産を換価して優先弁済を受けます。

② 根抵当権の仕組み(民法第398条の2

根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の範囲内で担保します。銀行等の継続的融資取引で使われます。

根拠条文:(本法)民法第398条の2第398条の22

根抵当権の主な特徴

特徴内容
付従性なし(元本確定前)一時的に全額弁済しても根抵当権は消滅しない
随伴性なし(元本確定前)個別債権を譲渡しても根抵当権は移転しない
被担保債権の範囲一定の取引から生じる債権・特定の継続的取引から生じる債権など(第398条の2第2項第3項
極度額極度額の範囲内で優先弁済(民法第398条の5
元本確定解約・競売申立・法人合併等の事由により元本が確定(第398条の20

極度額(民法第398条の5

根抵当権の極度額は、元本・利息・遅延損害金等を合計した上限額 です。極度額を超える部分は優先弁済を受けられません。極度額の変更には利害関係人の承諾が必要です。

元本確定の事由(民法第398条の20

主な確定事由:

事由内容
期間満了・解約元本確定期日の到来・確定請求(設定後3年以上経過後)
競売・滞納処分根抵当権者が競売を申し立てたとき
債務者・設定者の破産破産手続開始決定があったとき
取引終了一定の継続的取引が終了したとき

元本確定により、根抵当権は 担保対象が固定 され、抵当権に近い性質へと転換します。確定後は付従性が生じ、確定した被担保債権のみを担保します。

根抵当権の消滅請求(民法第398条の22

元本確定後に被担保債権の額が極度額を下回った場合、第三取得者・物上保証人は 極度額に相当する金額を支払って根抵当権の消滅を請求 できます(民法第398条の22)。

③ 抵当権の実行と担保不動産競売

抵当権・根抵当権が実行された場合、担保不動産は担保不動産競売手続により換価されます。

根拠条文:(手続)民事執行法第180条第195条

抵当権の実行手続の流れ

抵当権の実行には期限の利益喪失等の前提を経て行われます。抵当権者が担保不動産競売を申し立てると、裁判所が不動産を評価・売却します。競落代金から抵当権者が優先弁済を受けます(民事執行法第181条以降)。

担保不動産収益執行(民事執行法第180条第2号

担保不動産競売とは別に、担保不動産から生じる 収益(賃料等) から優先弁済を受ける手続として、担保不動産収益執行 があります(民事執行法第180条第2号)。賃料収入のあるアパート・マンション等で利用されます。

占有者がいる場合の引渡し

抵当権設定後に占有している者がいる場合でも、一定の手続きにより引渡しが認められます(民事執行法第83条等の準用)。

④ 住宅ローン完済後の抵当権抹消登記

住宅ローンを利用する場合、金融機関から抵当権設定を求められます。返済完了後は付従性により抵当権は消滅しますが、登記は自動的に抹消されないため、別途抹消登記が必要です。

完済後の流れ

  1. 住宅ローン完済 → 抵当権は付従性により当然消滅(被担保債権が消滅したため)
  2. 金融機関から「抵当権解除証書(弁済証書)」「登記識別情報」「委任状」等を受領
  3. 司法書士または自分で 抵当権抹消登記 を法務局に申請
  4. 登記完了

抹消登記を怠るリスク

抹消登記をしない場合、以下のリスクが生じる場合があります:

  • 不動産売却時に買主・金融機関から抹消を要求される
  • 相続発生時の手続が複雑化する
  • 金融機関から受領した書類が紛失すると、再発行が困難となる場合がある

根抵当権の場合の追加手続

根抵当権の場合、完済しても付従性により当然消滅とはなりません。元本確定 + 被担保債権の弁済 + 抹消登記 の手続が必要です。元本確定の合意または確定請求が前提となるため、抵当権より複雑な手続となります。

このテーマで使う条文一覧

条文法令区分内容
民法第369条民法中核抵当権の内容(特定の債権の担保)
民法第373条民法中核抵当権の順位
民法第375条民法周辺抵当権の効力(最後の 2 年分の利息)
民法第379条民法周辺抵当権消滅請求(第三取得者)
民法第388条民法周辺法定地上権
民法第398条の2民法中核根抵当権の意義(一定範囲の不特定債権の担保)
民法第398条の3民法中核根抵当権の被担保債権の範囲
民法第398条の5民法中核根抵当権の極度額
民法第398条の20民法中核根抵当権の元本確定事由
民法第398条の21民法周辺元本確定後の極度額減額請求
民法第398条の22民法中核元本確定後の根抵当権消滅請求
民事執行法第180条民事執行法周辺担保不動産競売・担保不動産収益執行

まとめ

  • 抵当権は 特定の債権 を担保し、付従性(債権消滅で当然消滅)・随伴性 がある(民法第369条
  • 根抵当権は 一定範囲の不特定の債権極度額 の範囲内で担保する(民法第398条の2第398条の5
  • 根抵当権は 元本確定前は付従性がない ため、全額弁済しても消滅しない(継続的取引に便利)
  • 根抵当権の 元本確定 により担保対象が固定され、抵当権に近い性質に転換する(民法第398条の20
  • 元本確定後は 極度額減額請求第398条の21)・消滅請求第398条の22)が可能となる
  • 抵当権・根抵当権の実行は 担保不動産競売 または 担保不動産収益執行 による(民事執行法第180条
  • 住宅ローン完済後は 抵当権抹消登記 が必要(自動的には抹消されない)

抵当権と根抵当権のいずれを用いるかは、取引の性質(単発か継続か)や資金調達の方法に応じて判断されます。具体的な担保権の設定・抹消・元本確定については司法書士への相談をおすすめします。

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