借地権とは、建物を所有するために他人の土地を借りる権利です。借地権には大きく「旧法借地権(旧借地法による)」「普通借地権(借地借家法による)」「定期借地権(借地借家法による)」の 3 類型があり、それぞれ適用法・存続期間・更新の有無・用途制限が異なります。平成4年(1992年)8月1日の借地借家法施行以前に設定された旧法借地権は、借地借家法附則第6条等の経過措置により現在も適用されており、実務上は 3 類型が混在しています。この記事では、借地権の種類・存続期間・主な違いを条文とともに解説します。
カテゴリ:不動産・土地 / 種別:比較型・類型比較
関連条文:(本法)借地借家法第3条・第4条・第5条・第6条・第10条・第13条・第19条・第22条・第23条・第24条/(経過措置)借地借家法附則第6条
本記事の主軸: 借地権という制度を 「適用法(旧借地法/借地借家法)・更新の有無・存続期間・用途制限」 の 4 軸で 3 類型 + 定期借地権内の 3 細別を比較整理する。03006 v7(解雇予告と即日解雇の違い)と同じ §12-3-A 類型比較構造。
最短理解: 借地権は「①旧法借地権(旧借地法・1992年7月31日以前設定・更新あり・堅固60年/非堅固30年)②普通借地権(借地借家法第3条・1992年8月1日以降設定・更新あり・30年以上)③定期借地権(借地借家法第22〜24条・更新なし・3 細別)」の 3 類型で構成される。
※補足: 定期借地権は「更新なし」ですが、当事者が改めて契約を締結すること自体は禁止されていません(法定更新がないだけで、新規契約による継続は可能)。「絶対継続不可」ではない点に注意してください。
こんな方へ
- 借地権の種類と違いを整理したい
- 借地権の存続期間・更新のルールを確認したい
- 定期借地権の 3 種類(一般定期・建物譲渡特約付き・事業用)の違いを確認したい
- 旧法借地権が設定されている土地を取得・相続した場合の扱いを確認したい
- 借地権付き建物を購入・相続する場合の注意点を知りたい
この記事でわかること
結論:借地権は「更新あり(旧法・普通)」と「更新なし(定期)」で大きく異なる。設定時期により適用法が変わる
根拠条文:(本法)借地借家法第3条(借地権の存続期間)・第22条〜第24条(定期借地権)
| 種類 | 根拠法 | 最低存続期間 | 更新 | 用途制限 |
|---|---|---|---|---|
| 旧法借地権(堅固建物) | 旧借地法(1992年廃止・経過措置で適用継続) | 30年(契約による)/60年(法定期間) | あり(正当事由なければ更新拒絶不可) | なし |
| 旧法借地権(非堅固建物) | 旧借地法(1992年廃止・経過措置で適用継続) | 20年(契約による)/30年(法定期間) | あり(正当事由なければ更新拒絶不可) | なし |
| 普通借地権 | 借地借家法第3条 | 30年以上(契約で延長可・短縮不可) | あり(正当事由なければ更新拒絶不可) | なし |
| 一般定期借地権 | 借地借家法第22条 | 50年以上 | なし(期間満了で確定終了) | なし(居住用・事業用とも可) |
| 建物譲渡特約付き借地権 | 借地借家法第23条 | 30年以上 | なし(建物譲渡で終了) | なし(居住用・事業用とも可) |
| 事業用定期借地権 | 借地借家法第24条 | 10年以上50年未満 | なし(期間満了で確定終了) | 事業用建物のみ(居住用建物への設定不可) |
重要: 平成4年(1992年)8月1日以前に設定された借地権には旧借地法が適用されます(借地借家法附則第6条等の経過措置)。同日以降に設定されたものには借地借家法が適用されます。実務上は旧法借地権が設定された土地が多く残っており、適用法の確認が不可欠です。旧借地法は廃止法令のため、e-Gov 法令検索には未収録ですが、国立国会図書館「日本法令索引」でメタ情報(公布日・効力・廃止履歴)を確認できます。
今すぐやること
- 借地契約書の作成日を確認する(平成4年8月1日が新法/旧法の境界)
- 建物の構造(堅固/非堅固)を確認する(旧法借地権の場合、存続期間に直結)
- 登記簿で借地権の種類・期間を確認する(一般定期・事業用定期の表記の有無)
- 公正証書の有無を確認する(事業用定期借地権の場合、公正証書必須)
- 借地権付き建物の取得・相続時は司法書士・弁護士への相談を検討する
判断フロー:借地権の類型判定(旧法・普通・定期)
この借地権はどの法律・類型に該当するか?
適用法の判定(設定時期で決定)
- 平成4年(1992年)7月31日以前に設定旧借地法が適用(旧法借地権・経過措置で適用継続)
- 平成4年(1992年)8月1日以降に設定借地借家法が適用
借地借家法上の借地権の類型判定
- 更新なしの特約がない通常の借地契約普通借地権([借地借家法第3条](/law/403AC0000000090/#article-3)・30年以上)
- 50年以上・更新なし・書面による特約で設定一般定期借地権([第22条](/law/403AC0000000090/#article-22))
- 30年以上・建物を地主に譲渡する特約付き建物譲渡特約付き借地権([第23条](/law/403AC0000000090/#article-23))
- 10年以上50年未満・事業用建物のみ・公正証書で設定事業用定期借地権([第24条](/law/403AC0000000090/#article-24))
NOTE: 借地権の種類・適用法の確認は、登記・契約書の内容・設定年月日等から判断されます。判断が難しい場合は司法書士・弁護士への相談を推奨します。
① 旧法借地権(旧借地法)
→ 平成4年(1992年)7月31日以前に設定された借地権には、廃止前の旧借地法が経過措置(借地借家法附則第6条等)により現在も適用されます。旧法借地権は更新されながら存続しています。
旧借地法の位置づけ
旧借地法は、平成3年(1991年)法律第90号により廃止され、平成4年(1992年)8月1日に借地借家法が施行されました。ただし、廃止前に設定された借地権については「なお従前の例による」(借地借家法附則第6条等)の経過措置により、旧借地法の規定が現在も適用されます。旧借地法本文は e-Gov 法令検索には未収録ですが、国立国会図書館「日本法令索引(lawId=0000016602)」で 法令の存在・公布日・効力(一部有効)・改正廃止履歴 が確認可能です。
旧法借地権の特徴(一般的な実務上の整理)
旧借地法は、借地権者(借地人)を強く保護する法律でした。一般的に以下のように整理されています:
存続期間:
- 堅固建物(石造・レンガ造・コンクリート造等):契約で定めた場合は 30 年以上、定めがなければ 60 年
- 非堅固建物(木造等):契約で定めた場合は 20 年以上、定めがなければ 30 年
更新の仕組み: 旧法借地権は、期間満了後も土地所有者が「正当事由」なく更新を拒絶できないとされていました。正当事由として認められるハードルが高く、実質的に半永久的に更新されやすい構造とされていました。
現在の旧法借地権: 旧法借地権は、借地借家法施行後も経過措置により消滅せず、更新時も旧借地法に基づく規律が適用され続けます。実務上、旧法借地権が設定された土地は多数存在しており、権利関係が複雑化している場合が多く、個別確認が特に重要です。地主・借地人ともに旧法の内容を十分に確認することが必要です。
※注: 旧借地法の具体的条文の年数等の詳細は、廃止法令の本文確認を要するため、登記実務・取引時には司法書士・弁護士・登記事項証明書・契約書原本等で個別確認することを推奨します。
② 普通借地権(借地借家法第3条)
→ 平成4年(1992年)8月1日以降に設定された、更新あり・居住用・事業用どちらでも使える標準的な借地権です。
存続期間と更新
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 最初の存続期間 | 30 年以上(契約で延長可。30 年より短い期間を定めた場合も 30 年となる:借地借家法第3条) |
| 第 1 回更新後 | 20 年以上(第4条) |
| 第 2 回以降の更新 | 10 年以上(第4条) |
法定更新の仕組み
借地権者が更新を請求した場合または期間満了後も土地の使用を継続した場合、土地所有者が「正当事由」をもって遅滞なく異議を述べない限り、更新されたものとみなされます(借地借家法第5条・第6条:法定更新)。
正当事由の判断要素
土地所有者が更新を拒絶するには「正当事由」が必要です(借地借家法第6条)。正当事由は一律に決まるものではなく、土地所有者と借地権者双方の必要性・建物の使用状況・財産上の給付(立退料等)の経済的事情を踏まえて総合的に判断されます。
③ 定期借地権の 3 細別
→ 定期借地権は期間満了で確定的に終了する借地権です。更新がなく、土地所有者が土地を確実に取り戻せる点が最大の特徴です(当事者間で改めて契約を締結することは可能)。
一般定期借地権(借地借家法第22条)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 存続期間 | 50 年以上 |
| 用途 | 居住用・事業用どちらも可 |
| 終了 | 期間満了で確定的に終了(更新なし・建物買取請求なし) |
| 設定方法 | 書面による特約が必要(書面による特約がなければ成立しない。公正証書が推奨される) |
特徴: 長期間の利用が確保されるため、主に大型マンション・戸建住宅の分譲等で利用されます。50 年という長期のため、借地権者も安心して建物を建てられます。
建物譲渡特約付き借地権(借地借家法第23条)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 存続期間 | 30 年以上 |
| 用途 | 居住用・事業用どちらも可 |
| 終了 | 設定後 30 年以上経過後に建物を土地所有者に相当の対価で譲渡することで終了 |
| 設定方法 | 書面による特約 |
特徴: 期間満了時に土地所有者が建物を買い取ることで借地関係が終了します。建物買取後、借地権者が建物を引き続き使用したい場合は賃貸借関係に移行するのが一般的です。
事業用定期借地権(借地借家法第24条)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 存続期間 | 10 年以上 50 年未満 |
| 用途 | 事業用建物のみ(居住用建物には設定不可) |
| 終了 | 期間満了で確定的に終了 |
| 設定方法 | 公正証書による設定が必要(第24条第2項) |
重要: 事業用定期借地権は 公正証書でなければ無効 となります(借地借家法第24条第2項)。書面があっても公正証書でなければ効力が生じません。また、居住用建物には設定できません。コンビニエンスストア・飲食店・倉庫等の事業用途で広く使われています。
④ 借地権の譲渡・転貸・相続・対抗要件
→ 借地権は強い保護がある一方で、地代・更新料・承諾料等の特有の負担や制約も伴います。借地権付き建物の取得・相続・売却には、通常の土地所有権とは異なる特有の論点があります。
借地権の譲渡・転貸(借地借家法第19条)
借地権を第三者に譲渡・転貸するには、原則として土地所有者の承諾が必要です。土地所有者が承諾しない場合、裁判所に承諾に代わる許可を申し立てることができます(借地借家法第19条)。
借地権付き建物の相続
借地権は相続の対象となります。相続の場合は土地所有者の承諾なく借地権を引き継ぐことができますが、土地所有者への通知は行うことが望ましいとされています。
建物買取請求権(借地借家法第13条)
普通借地権・旧法借地権では、期間満了時に土地所有者が更新を拒絶した場合、借地権者は土地所有者に建物の買取を請求できます(借地借家法第13条)。一般定期借地権・事業用定期借地権では建物買取請求権は認められません(第22条・第24条で排除)。
借地権の対抗要件(借地借家法第10条)
借地権自体は登記なくとも土地所有者との関係では有効ですが、第三者に対抗するためには登記が必要です。ただし、借地上の建物の登記(建物保存登記)があれば、借地権の登記がなくても第三者に対抗できます(借地借家法第10条第1項)。建物が滅失した場合でも、滅失した日・建物特定情報・再築する旨を土地上の見やすい場所に掲示すれば、滅失日から 2 年間に限り対抗力が維持されます(同条第2項)。
このテーマで使う条文一覧
| 条文 | 法令 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 借地借家法第3条 | 借地借家法 | 中核 | 普通借地権の存続期間(30 年以上) |
| 借地借家法第4条 | 借地借家法 | 中核 | 借地権の更新後の期間(1 回目 20 年・2 回目以降 10 年) |
| 借地借家法第5条 | 借地借家法 | 中核 | 借地契約の更新請求等(法定更新) |
| 借地借家法第6条 | 借地借家法 | 中核 | 借地契約の更新拒絶の要件(正当事由) |
| 借地借家法第10条 | 借地借家法 | 中核 | 借地権の対抗要件(建物登記による対抗) |
| 借地借家法第13条 | 借地借家法 | 周辺 | 建物買取請求権 |
| 借地借家法第19条 | 借地借家法 | 周辺 | 借地権の譲渡・転貸の許可(裁判所による許可制) |
| 借地借家法第22条 | 借地借家法 | 中核 | 一般定期借地権(50 年以上・更新なし) |
| 借地借家法第23条 | 借地借家法 | 中核 | 建物譲渡特約付き借地権(30 年以上) |
| 借地借家法第24条 | 借地借家法 | 中核 | 事業用定期借地権(10 年以上 50 年未満・公正証書必須) |
| 借地借家法附則第6条 | 借地借家法 | 経過措置 | 旧借地法の経過措置(旧法借地権の適用継続) |
※参考: 旧借地法(1992年廃止)は廃止法令のため e-Gov 法令検索には未収録です。法令メタ情報(公布日・効力・廃止履歴)は国立国会図書館「日本法令索引」で確認可能です。
まとめ
- 借地権は 「旧法借地権」「普通借地権」「定期借地権(3 細別)」 の 3 類型に大別される
- 平成4年(1992年)7月31日以前 に設定された借地権には旧借地法が適用される(経過措置で適用継続)
- 普通借地権・旧法借地権は 更新あり(土地所有者に正当事由がなければ更新を拒絶できない)
- 定期借地権は 更新なし(期間満了で確定的に終了)
- 事業用定期借地権は 公正証書による設定が義務(借地借家法第24条第2項)であり、居住用建物には設定できない
- 借地権の譲渡・転貸には原則として 土地所有者の承諾(または裁判所の許可:第19条)が必要
- 借地権付き建物の 相続 の場合は土地所有者の承諾なく引き継げる
- 借地上の建物の登記 があれば、借地権の登記がなくても第三者に対抗できる(借地借家法第10条)
どの借地権が適しているかは、利用目的・期間・将来の出口戦略等を踏まえて判断する必要があります。借地権の種類・適用法・権利関係は個別の事情によって異なるため、司法書士・弁護士への相談をおすすめします。