こんな方へ
- 自己破産の要件と手続きの流れを確認したい
- 免責許可が得られない場合(免責不許可事由)を確認したい
- 破産しても免除されない債権(非免責債権)の範囲を確認したい
- 自己破産以外の債務整理の選択肢を知りたい
- 自己破産のデメリット(職業制限・信用情報等)を確認したい
この記事でわかること
- 自己破産の申立て要件(支払不能の状態)
- 免責許可決定の仕組みと免責不許可事由
- 非免責債権(破産しても免除されない債権)の範囲
- 自己破産のデメリット(職業制限・信用情報・財産処分)
- 任意整理・個人再生との比較
結論:自己破産は「免責許可決定」が本体。破産手続開始だけでは借金はなくならない。非免責債権・免責不許可事由に注意が必要
最短理解:自己破産は「破産手続開始(支払不能要件)+ 免責許可(免責不許可事由なし)」の二段階判定で借金が免除される。非免責債権は対象外
根拠条文:第30条(破産手続開始の要件)・第252条(免責許可の決定)・第253条(非免責債権)
| 段階 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 破産手続開始決定 | 支払不能・支払停止を要件として裁判所が開始を決定 | 第30条 |
| 財産の換価・配当 | 破産管財人が財産を換価して債権者に配当(同時廃止の場合は省略される場合あり) | 第78条等 |
| 免責許可決定 | 裁判所が免責を許可→免責が許可された範囲で返済義務が免除されます(これが本体) | 第252条 |
| 非免責債権 | 免責が許可されても返済義務が残る債権 | 第253条 |
| 免責不許可事由 | これに該当すると免責が許可されない場合がある | 第252条第1項各号 |
重要: 「破産手続開始決定=借金がなくなる」という理解は誤りです。免責許可決定が出て初めて残債務の返済義務が免除されます。また、免責許可決定が出ても非免責債権については返済義務が残ります。
本記事の主軸:破産法第30条の破産手続開始要件(支払不能)と第252条の免責許可(免責不許可事由なし)の二段階判定。本記事は「成立 → 例外 → 免責」型の制度ルール整理を中心とし、非免責債権(第253条)の概要、自己破産以外の選択肢(個人再生・任意整理)の概要を扱います。個別事案での自己破産の選択・免責不許可事由の評価は弁護士・司法書士への相談を推奨します。
今すぐやること
- 支払不能の状態か確認する(収入・資産で弁済期にある債務を継続的に弁済できないか)
- 借金の総額・債権者一覧を整理する(取引履歴・利息計算で正確な残高を把握)
- 免責不許可事由(浪費・ギャンブル・財産隠匿・偏頗弁済等)の有無を確認する
- 非免責債権(税金・養育費・故意の不法行為損害賠償等)の有無を確認する
- 弁護士・司法書士・法テラス(無料相談)へ早期相談する(個人再生・任意整理との比較も含む)
判断フロー①:破産手続開始要件(破産法第30条)
自己破産の申立てができる状態か?
申立ての要件
- 支払不能の状態にある自己破産の申立てが可能です(破産法第15条・第30条)
- 債務超過の状態にある(法人の場合)申立てが可能です
支払不能の判断
- 現在の収入・財産では借金を返せない状態支払不能と評価される可能性があります
- 将来の収入見込みを考慮しても返済が困難な状態同上
※ 支払不能かどうかの判断は個別の収入・財産・借入状況によります。自己破産が最適かどうかも含め、弁護士・司法書士への相談を推奨します。
判断フロー②:免責許可と免責不許可事由(破産法第252条)
免責許可決定が得られるか(免責不許可事由はあるか)?
免責不許可事由に該当する可能性がある行為(第252条第1項)
- ギャンブル・射幸行為による著しい財産の減少免責不許可事由に当たる可能性があります
- 著しい浪費・不合理な出費同上
- 特定の債権者への偏頗弁済(一部の人だけへの返済)同上
- 財産の隠匿・虚偽申告同上(悪意的なものは免責不許可の重大事由)
- 詐術による信用取引(返済できないのに借入れ等)同上
裁量免責
- 免責不許可事由がある場合でも裁判所の裁量で免責を認める場合があります(裁量免責・第252条第2項)
※ 免責不許可事由に該当する行為があっても、裁量免責が認められる場合があります。免責の可否は個別の事情によって判断されます。弁護士への相談を推奨します。
① 破産手続開始の要件
→ 破産手続開始決定を受けるには、「支払不能」または「支払停止」の状態にあることが必要とされています。
根拠条文:第15条(支払不能)・第30条(破産手続開始の要件)
支払不能とは
「支払不能」とは、債務者が、支払能力の欠如のために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます(破産法第2条第11項)。
判断の目安(あくまで目安):
- 収入を超える借金の返済がある
- 生活費を削っても返済が追いつかない
- 借金を借金で返している状態
支払不能かどうかは、収入・財産・債務状況を踏まえて総合的に判断されます。上記の目安に当てはまる場合でも、個別の事情によって判断が変わることがあります。
同時廃止と管財事件
| 手続きの種類 | 条件 | 概要 |
|---|---|---|
| 同時廃止 | 財産がほとんどない場合(裁判所が財産状況等をもとに判断します) | 破産手続開始と同時に廃止。管財人が選任されず比較的短期間で手続きが終わります |
| 管財事件 | 一定以上の財産がある・免責不許可事由の疑いがある場合等 | 破産管財人が選任され、財産の調査・換価・配当が行われます |
② 免責許可の仕組みと免責不許可事由
→ 免責許可決定が出ることで、残債務の返済義務が免除されます。ただし、免責不許可事由に該当する場合は許可されない場合があります。
根拠条文:第252条(免責許可の決定)
免責の範囲や可否は、手続経過や申告内容等も踏まえて判断されます。
免責不許可事由(第252条第1項)
以下の行為・事情がある場合、免責が許可されない場合があります:
| 免責不許可事由 | 具体例 |
|---|---|
| 財産の隠匿・損壊 | 差押えを免れるために財産を隠す・処分する行為 |
| 偏頗弁済 | 特定の債権者(知人・家族等)にだけ返済する行為 |
| 浪費・射幸行為 | ギャンブル・株式投機等による著しい財産の減少 |
| 詐術による信用取引 | 返済能力がないのに虚偽の情報で借入れ等をする行為 |
| 虚偽申告 | 裁判所への申告で財産・収入を偽る行為 |
| 過去7年以内の免責 | 前回の免責から7年以内に再度申立てをする場合 |
裁量免責(第252条第2項)
免責不許可事由がある場合でも、裁判所は事情を考慮して免責を許可することができます(裁量免責)。実務上は裁量免責が認められるケースも少なくありませんが、個別事情・反省の態度等により判断されます。
③ 非免責債権(免責されても返済義務が残る債権)
→ 免責許可決定が出ても、一定の債権については返済義務が残ります。
根拠条文:第253条(非免責債権)
主な非免責債権
| 債権の種類 | 内容 |
|---|---|
| 税金・社会保険料等の租税債権 | 国税・地方税・年金保険料・健康保険料等 |
| 故意・重過失による不法行為債権 | 故意または重大な過失により他人に損害を与えた場合 |
| 養育費・婚姻費用等の扶養関係の債権 | 養育費・婚姻費用の未払い分 |
| 故意による人身損害の賠償 | 故意の犯罪行為による損害賠償(DV等) |
| 財産の開示に関する過料等 | 財産開示手続きへの違反 |
重要: これらの非免責債権は、破産手続の有無にかかわらず支払義務が残ります。特に養育費は非免責債権とされており、自己破産をしても支払い義務はなくなりません。
④ 自己破産のデメリット
→ 自己破産には、財産の処分・職業制限・信用情報への影響等のデメリットがあります。
根拠条文:第37条(職業制限)・信用情報機関の規約等
主なデメリット
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| 財産の処分 | 一定以上の財産(自由財産以外)は換価されます。住宅ローン中の自宅は通常失います |
| 職業・資格の制限 | 破産手続中(免責前)は一定の職業・資格(弁護士・税理士・警備員等)に就けない場合があります |
| 信用情報への影響 | 信用情報機関に登録され、一定期間(目安として5〜10年程度とされていますが、機関によって異なります)は新たな借入れ・クレジットカードの利用が難しくなります |
| 官報への掲載 | 破産手続開始・免責許可決定が官報に掲載されます |
| 郵便物の転送 | 管財事件では、一定期間郵便物が破産管財人に転送されます |
「自由財産」について: 一定の財産(現金99万円以下等)は手元に残すことが認められています(自由財産)。生活に必要な最低限の財産は保護されます。
⑤ 自己破産以外の選択肢
→ 債務整理には自己破産以外の選択肢もあります。自己破産が最適かどうかは個別の事情によって異なります。
| 手続きの種類 | 概要 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 債権者と交渉して利息・返済計画を調整 | 収入があり返済可能だが、利息が重い場合 |
| 個人再生 | 裁判所を通じて借金を大幅に圧縮して返済計画を立てる | 収入はあるが返済が困難な場合。住宅ローン特則で自宅を守れる場合も |
| 自己破産 | 財産を換価して残債務を免除 | 収入がほとんどなく返済の見込みがない場合 |
このテーマで使う条文一覧
| 条文 | 法令 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 第2条第11項 | 破産法 | 中核 | 支払不能の定義 |
| 第15条 | 破産法 | 中核 | 破産手続開始の申立て要件 |
| 第30条 | 破産法 | 中核 | 破産手続開始の決定 |
| 第252条 | 破産法 | 中核 | 免責許可の決定・免責不許可事由 |
| 第253条 | 破産法 | 中核 | 非免責債権(返済義務が残る債権) |
まとめ
- 自己破産の本体は「免責許可決定」であり、破産手続開始だけでは借金はなくなりません(破産法第252条)
- 免責が許可されない免責不許可事由(ギャンブル・浪費・偏頗弁済・隠匿等)があります(第252条第1項)。ただし裁量免責が認められる場合があります
- 免責許可決定が出ても非免責債権(税金・養育費・故意の不法行為等)は返済義務が残ります(第253条)
- 養育費は非免責債権です。自己破産をしても養育費の支払い義務はなくなりません
- 自己破産には職業制限・信用情報への影響・財産の処分等のデメリットがあります
- 任意整理・個人再生等の選択肢もあります。自己破産が最適かどうかは個別の事情によります
- 「破産すれば全部解決」という理解は誤りです。個別の事情を踏まえた専門家への相談が不可欠です
自己破産が最適な選択かどうかは、債務の状況・収入・財産等を踏まえて個別に判断されます。借金問題・自己破産の要件は個別の事情によって大きく異なるため、弁護士・司法書士への早期相談をおすすめします。